「先延ばし」にしない技術

今日は、イ・ミンギュ 著の「『先延ばし』にしない技術」という本をご紹介したいと思います。心理学者である著者が実行力を身につける方法について書いた本です。先日ご紹介した「やりきる技術―最高のパフォーマンスを生み出す仕事のきほん」という本に通じるものがありますが、こちらはもう少し硬派な印象を受けます。

さて、内容です。著者は、偉大な人達が足跡を残せたのはアイデアを実行に移したからだと言います。そしてその実行力というのは、生まれつきの資質ではなく、技術だそうです。つまり、誰でも訓練すれば実行力を身につけることができる、というわけですね。これには少し勇気づけられますね。

さてその実行力。分解すると、決心、実行、維持という三段階に分かれます。本書では、それぞれについて章が設けられており、詳細なアドバイスが書かれています。ここでは、面白いと思った話題をピックアップしてご紹介したいと思います。

まずは目標について。何かを実行する上で、一番最初に必要なのは目標を定め、「やる」と決意することです。それがないと何も始まりません。その際に、「ゴールをイメージすれば夢がかなう」といったことが多く語られてきました。著者は、これは実際には効果がなく、かえって邪魔になることすらあると言っています。

その理由は、あまりにバラ色の未来を思い描いていると、何かうまく行かなかった時に簡単に挫折してしまい、イメージの中に逃げ込んでしまう可能性が高いからだそうです。ではどうすればいいのか。それは、ゴールをイメージして何かをやる決意が生まれたら、そこからは「どうやってそこにたどりつくか=プロセス」をしっかり考えること。

プロセスをあれこれ考える時には、当然想定される障害やリスク、代替案なども考えますよね。つまり、ゴールした姿という楽観的なイメージと、失敗した時にどうするかという悲観的なイメージを両方持つことが重要なのだそうです。もっと言えば、楽観的なイメージと悲観的なイメージをどのようにバランスさせて、前に進む力に変えていくかが重要なんだと思います。具体的な方法を考えずにゴールを考えていても前には進みませんし、心配ばかりして恐れていたらなかなか行動に移すことができませんよね。

次に変わりたいと思っても変われない理由について。その理由について、「今の状況が、耐えられないほど苦痛ではないからだ。切実に望むものがないからだ。」と書かれています。う~ん、とてもストイックですが、これは僕も実感としてあります。必要性を心の底から理解している時は、実行するのはそれほど苦ではないと思います。苦であっても、必要なのでやらざるを得ない、という感じでしょうか。

さて、次は実行に関して二つほど。一つは、何かを「やろうかな、でも後にしようかな・・・」と迷ったときは、その実行のベストタイミングは「今」だということ。「後で」は永遠にやってきません。これはとても耳が痛い言葉ですが、まさにその通りだと思います。最初の一歩さえ踏み出せば物事はどんどん進んでいくもの、最初の一歩は小さくてもいいので、「今」始めてみるといいかも知れませんね。これに付随して、こんな記述がありました。

本当に残念なのは、ただ時間を浪費するだけでなく、待っている間に頭の中にあった目標が消えてしまうことだ。将来、何かになりたければ、必ずいま何かをしなければならない。

本書には、「行動に移さないアイデアはゴミだ」という強烈なタイトルのコラムがあります。しかし、せっかくのアイデアも実行に移せなければ、結果としてゴミになってしまうという意味では正しいのかも知れませんね。

実行に関するもう一つのトピックは、「できない理由」に関してです。できない理由を述べる前に、やってみたのか?著者はこれを実験精神と呼んでいるのですが、何事も実験だと思えば、実行に移すハードルはかなり下がります。僕は、厳密に言えば実際にやってみないと「できない理由」などわからないのではないかと思います。この辺りは精神論と言えなくもないですが、頭の片隅に置いておくと、いざという時に後押ししてくれるかも知れませんよ。

最後に、「目標達成率を高める観察の力」というトピックです。これは、人は誰かに見られていることを意識すると行動が変わりやすいということだそうです。そして、「誰か」というのは自分自身も当てはまります。一時期流行ったレコーディングダイエットなどは、この力を応用したものなんだと思います。僕も昨年末から今年にかけて家計簿、体重記録などをつけ始めました。これが本当に効果が実感でき、意識の力はこれほどなのか、と思っています。これについてはまた改めて書きたいと思います。

いくつかトピックをご紹介してきましたが、本書の中にはもっともっと沢山のアイデアが詰まっています。非常にストイックな印象を受けますが、どれも正論だと思います。以前にも書きましたが、この手の本は読んだ後、取捨選択やアレンジをして自分のやり方として昇華させる必要があるものです。少なくともそのための重要なヒントは散りばめられているので、実行力について真面目に考えてみたい方は是非読んでみてください!

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