人を動かす[超]書き方トレーニング

今日は、苫米地英人 著の「人を動かす[超]書き方トレーニング 劇的な成果が手に入る驚異の作文術」という本をご紹介したいと思います。著者の苫米地さんという人は、脳機能学者で、オウム真理教事件の際には信者の脱洗脳にも関わったらしいです。

著者はネットや書評などで様々な言われ方をしているようですが、僕が読んだこの本に関しては大変まともな文章術の指南書でした。詳細な文法などの話は出てきませんが、人に読んでもらうための文章をどうやって書けばいいのか、その力を鍛えるためにはどうすればいいのか、が明快に書かれているお奨めの一冊です。ただし、対象としている文章が一般的な文章で、小説などの文芸作品ではないので、その点は注意が必要です。

当たり前のことですが、何かを書き、人に読んでもらうからには、何らかの形で「役に立つ」必要があります。著者は、「書き手は読み手よりも知識量が圧倒的に多いことが前提」としています。これは一般的な文章が情報の伝達を目的としているので、書くべき内容がないのに文章力を挙げても意味がない、ということなのでしょう。基本的なことですが、何かを伝えるには少なくともある程度の勉強は必要、ということは肝に命じておきたいですね。

この基本を押さえた上で、僕が参考になったポイントをいくつかご紹介します。

全体像ができあがってから書きはじめる

これも当たり前のことなのかも知れませんが、僕は文章を書こうと思い立ち、構成を考えずにすぐに書き始めてしまうことがよくあります。こうして書き始めた文章は、運が良ければ当初の目的通りの文章になりますが、場合によっては途中でどんどん脱線し、書き終わってみたら別モノになっていた、なんてこともあります。

本書では、「ゲシュタルト」という概念でこれを説明しています。ゲシュタルトとは、部分の総和以上の全体が出来上がること、と定義されています。例えば音楽は音符の集まりですが、全体として見たときに音符の集まり以上の「楽曲」というゲシュタルトになります。文章もこれと同じで、単なる単文の集まりではなく、全体としてゲシュタルトとして完成されている必要があるのです。

構成を考えてから文章を書く、というのはここで言うゲシュタルトを先に作ってから書き始めるということです。それができていないと、意図したゲシュタルトとは別のものができてしまったり、意味のわからないゲシュタルトができてしまったりします。

スコトーマのジレンマを解消する

耳慣れない言葉ですが、人に文章をきちんと読んでもらうためには、「スコトーマ」を解消しなければならない、と著者は言います。スコトーマとは、既成概念にとらわれすぎることで、新しい情報が見えなくなる状態を指します。人の脳は新しい情報を取り込む時、既に持っている情報との関連付けで認識するのですが、この「既に持っている情報」というのが曲者なんですね。新しい情報を目にしても、「既に知っている」と勘違いした情報は頭に入ってこないということになってしまうからです。

つまり、人間の脳はしっていることしか認識できないけれど、知っていると思った瞬間にスコトーマの原理がはたらいて認識できなくなる、というジレンマがあるらしいのです。著者はこれのスコトーマを外すことが重要だと説きます。これは別の言い方をすれば、先入観をなくす、ということです。

スコトーマを外すというのは、それまで重要だと思っていなかったこと、スコトーマに隠れて認識されていなかったことが実は重要なことなのだと読者に気付かせてあげるということです。

具体的なテクニックとして、「文章を貫くコンセプトは一つに絞る」「キーワードはきちんと定義してい使う」などが紹介されています。どれも文章の基本だと思いますが、そうしなければならない理由をきちんと理解することができました。

論理的な文章を書く

論理的な文章とはどういうものでしょう?著者は、よく言われている三段論法は不確実な要素を表現できないため机上の空論だと言っています。それに変わる論法として「トゥールミンロジック」を使うべき、としています。これもまた聞き慣れない言葉ですが、要約すると以下のようになります。

  • 文章には、「データ」「ワラント」「クレーム」の3つの要素が必要。
  • データとは、主張する内容を裏付ける事実のこと。
  • ワラントとは、提示したデータがなぜ主張する内容を裏付けることになるのかという根拠のこと。
  • クレームとは、主張したい内容そのもの。
  • ワラントが抜け落ちることが多い。

他にも、「バッキング」「クオリファイヤー」「リザベーション」という要素があります。これらは三段論法に欠けている不確実性を補うためのものです。例外や、主張の強度(確立など)がこれに当たります。

書くための感性を磨け

最後の章に書いてあることがなかなかおもしろかったので紹介します。著者は人を動かす文章を書くには、文章力と感性が必要と言っているのですが、この「感性」は論理を超えたところにある、というのです。感性と論理は通常相対する概念として捉えられることがありますよね。しかし、論理を完全に極めたその先にあるのが感性だ、そしてその感性を発揮するにはやはり圧倒的な知識量が必要だ、というのはなるほどと思わされました。

この本では具体的なトレーニングの方法や、実際に文章を組み立てていく実例なども示されているので、読むだけでなく実際に手を動かしてトレーニングしていけば文章力が鍛えられると思います。詳細な文章テクニックを学ぶ前に押さえておいた方がいいポイントが沢山書かれているので、文章が苦手な方は是非読んでみては如何でしょうか?

人生の科学 「無意識」があなたの一生を決める

今日は、デイヴィッド・ブルックス 著の『人生の科学 「無意識」があなたの一生を決める』という本をご紹介したいと思います。著者であるデイヴィッド・ブルックスはニューヨーク・タイムズのコラムニスト。タイトルに「科学」とついてはいるものの、科学者が書いた本ではありません。

「謝辞」にも書いてありますが、著者は政治や政策、社会学や文化などの執筆を専門としている人です。本書では心理学や神経科学についての記述が多く出てくるのですが、それはもともとは「趣味」なんだとか。ジャーナリストがこのような本を書く「危険性」は承知しているが、近年の心理学、神経科学の成果は素晴らしく、それをどうにか一般の人に分かりやすく伝えたかった、ということのようです。

ここについては僕も同意見で、「人間」を考える上で最近の心理学や神経科学の研究は本当にためになるものだと思います。惜しむべきは、それらが本当の意味で実生活に生かされていない、ということだと思っています。ジャーナリスト、つまり世の中の人に伝える役割の人間として、「どうにかして伝えたい!」という思いがあったのだと思います。

本書は架空のストーリーという形で描かれています。別々の二人の人物が生まれ、出会い、共に人生を生きていくストーリーです。彼らの人生に起こる出来事について、心理学、神経科学はもちろん、経済学や哲学など、様々な観点からの考察が書かれています。著者は、「このような手法を採ることにしたのは、わかりやすいし、実感が伴う」からだと語っています。

読み終えた率直な感想は、人間というものが如何に複雑な生き物か、ということです。そして、僕たちが生きていく上で「無意識」がどれだけ重要な役割を果たしているのか、という著者の主張が、ストーリーを通して読むことで実感に近い形で理解できました。その点では、著者の試みは成功なのだと思います。

ちなみに、このストーリーの登場人物が送ったような人生が「幸福な人生」のモデル、というわけではありません。ある種の「成功観」のようなものを押しつける本でもありません。僕がこのストーリーの主人公のような人生を送りたいかと言われればちょっと疑問ですし、自分ならばこうする、という場面も沢山ありました。読者が注目すべきはストーリーの流れではなく、その裏側で何が起きていたのか、という考察だと思います。

そういう観点でこの本を読むと、「人生」というものについてこれほど包括的に語っている本はなかなかないのではないか、と思います。各論は専門書でよく出てくる話が多いので目新しさ自体はあまりないですが、それらが人生のどんな時に起こり、その後の人生にどんな影響を与えていくのか、という「流れ」や「つながり」がストーリーで語られることによってよく分かりました。

本書には様々な知見が登場します。その中で全体を貫くテーマは、何と言っても「無意識」の持つ力についてでしょう。

例えば人は何かを決断する時、「意識的に」決断していると思っています。しかし、実は無意識の内に既に決断は下されていて、後から意識に伝わる、ということがわかってきたようです。つまり、いくつかの選択肢があった時、無意識は感情という形でそれぞれの選択肢の価値を決めます。理性は、その価値の高いものを選ぶことになります。そういう意味では、意思決定の主役は理性ではなく感情で、その裏には大きな無意識のシステムが広がっている、と捉えることもできるでしょう。

これは無意識に関する論点のほんの一部でしかありませんが、このような無意識のシステムが、どういう過程を経て作られるのか、主人公たちの成長を追いながら解き明かしていく様は、なかなか面白いです。

そしてもう一つのテーマは、人間は社会的な生き物である、という主張だと思います。この点について、以下のように書かれています。

人間はもちろん生物である。生物である以上、その誕生についてあくまで生物学的に説明することはできる。受胎、妊娠、誕生というプロセスを経て産まれてきたわけだ。ハロルド(※ 主人公の名前)もそうだ。しかし、人間はそういう生物学的なプロセスだけではできあがらない。人間、特に人間の本質と呼べる部分ができるまでには、他の人間との関わりが必要になるのだ。

人間の人間らしさは、他の人間の影響なしには作られないということですね。

最後に、僕がなるほどと思った「合理主義の限界」という論点をご紹介しましょう。科学の限界と言ってもよいでしょう。科学的なアプローチで用いられる方法では、物事を小さな要素に分けて考え、それらの総和として全体を説明します。しかし、このアプローチで説明できないシステムがあります。それが「創発システム」と呼ばれるものです。個々の要素が複雑に関係しあい、全体が部分の総和以上になるシステムのことなのですが、人間もまた「創発システム」なのでしょうね。科学的に検証されていることはとてもわかりやすいというメリットがありますが、同時に限界もあるということを知っておいた方がいいのかも知れません。

さて、前述した通り、本書はとても包括的な本です。書かれている内容をまとめることはおろか、論点を書き出すだけでもものすごい量になってしまうと思います。そういう理由で一部の紹介に留めました。詳しい内容は、皆さん自身で確かめてみることをおすすめします。気になった方は、是非読んでみてくださいね!

シンクロニシティ 未来をつくるリーダーシップ

今日は、ジョセフ・ジャウォースキー 著の「シンクロニシティ 未来をつくるリーダーシップ」という本をご紹介したいと思います。この本は、いわゆる“積ん読”状態になっていた本でしたが、ふと目に止まったので読んでみました。

皆さんは、シンクロニシティという単語をご存じでしょうか?日本語では共時性と言います。「二つ以上の出来事が重要な意味を持って同時に起こる事。そこには単なるチャンスの到来以外の何かが関わっている」と定義されており、心理学で非常に有名なC・G・ユングが提唱しました。このシンクロニシティについては、監修者解説の中で以下のように説明されています。

ある事象と別の事象が、さらにまた別の事象が、時間的に近接して、つぎつぎとつながりを持って生まれるような現象に出会い、それらの事象間に必ずしも因果で説明できる部分がなければ、それはシンクロニシティと言っていいだろう。

ちょっと不思議な感覚なのですが、皆さんもそんな経験はないでしょうか?何故だかはよくわからないけど、何となく意味やつながりを持つと思われるようなことが身の回りで次々と起きて、不思議な感覚を味わった経験。具体的な内容はあまり思い出せませんが、僕はその感覚を度々味わっているような気がします。

この本の内容は実話です。著者の身に実際に起こった「シンクロニシティ」が物語として語られていて、とても面白いです。物語なのでとても読みやすかったですし、とても感動しました。あまりにも面白かったので明け方までかかって一気に読んでしまいました。

さて、物語の中で語られるシンクロニシティを「不思議な偶然」として片づけてしまっては意味がありません。僕は、物語を読む中で、シンクロニシティに関して主に二つの教訓を得ました。

一つ目は、やはり人は自分が心の底からやりたいこと、やる必要があると思えることをやるべきだということです。欲求を突き詰めていくと、自分の利益と他人の利益が合致するポイントが必ずあります。それに対してコミットした時、まさに何かに導かれるように様々な偶然が起こって手助けしてくれる、それがこの本で本当に言いたかったシンクロニシティなのだと思います。本の中では、方向は決めるが目的地は決めない、何故なら流れに身を任せていれば導いてくれる、というようなことが書いてありましたが、この言葉の意味するところがやっとわかったような気がします。

もう一つは、著者に強い意思だけでなく、積極的で行動力があったこと。強い意思があれば、強く信じていれば、それだけでどんどんいいことが起こるわけではありません。自ら積極的に行動を起こし、他人を巻き込み、その連鎖が続くことで偶然としか思えないような結果が生まれました。「強く願えば思いは叶う」という言葉がありますが、それは暗に「強く願えばこそ、それにまつわるあらゆる行動をいとわない」という意味をも含んでいるのだと思います。

ところで、このシンクロニシティと副題の「リーダーシップ」とはどう関係があるのでしょう?僕も本を読み始めたときに疑問に思いました。読んでみるとわかりますが、この二つは直接的に関係はありません。著者はあるきっかけから、世の中を変える次世代のリーダーを育てなければ、という思いに駆られます。それを実現すべく著者自身もリーダーシップを発揮していくのですが、そうして行動をしていくうちにシンクロニシティと言うべき出来事が次々と起こっていきます。

シンクロニシティについては上記で少し触れましたが、著者が言う「リーダーシップ」もまた、とても示唆に富んだ内容になっています。著者が言うリーダーシップとは、「サーバント・リーダーシップ」というものです。これについてとあるエッセイを引用し、このように述べています。

グリーンリーフはこう述べている。リーダーシップの真髄は、互いに奉仕しあいたいという願望、自分たちを超えたものに、より高い目標に奉仕したいと言う願望である、と。伝統的な私たちの考え方では、「サーバント・リーダーシップ」というのは矛盾した表現であるように思われる。しかし、さまざまなつながり合いから成り立っている世界においては、関連性こそがこの世界を秩序だてる原理であり、その表現はきわめて理にかなっている。

サーバントとは奉仕者という意味です。まさに、僕たちが普段思っているリーダーとは逆のイメージですね。リーダーに仕えるのがサーバントなのでは?と思ってしまいます。しかし、そうではなく、チームのメンバーに「奉仕」し、世の中に「奉仕」することがリーダーシップである、ということのようです。

リーダーに関してはこうも言っています。リーダーシップとは、「すべきこと」ではなく「あり方」なのだと。リーダーとは何かを考える時、「リーダーとはこういう行いをすべき」という行動面からから考えるのではなく、「われわれは共同で、何を創り出すことができるか」という姿勢を持つ、高い目標に奉仕できるマインドセットこそ、リーダーシップなのでしょう。こう捉えれば、リーダーシップは特定の人しか持っていない資質ではなく、考え方を変えることによって誰もが持ち得る考え方だということが理解できます。

本書は、物語の形式をとってはいますが、単なる事実ではなくそれが意味するところも十分に語られており、とにかく理解がしやすいです。ただ、理屈ではなく感覚で理解する必要がある部分もあるので、それはこれからまた読み返し、考え、そして行動を通して身につけていきたいと思っています。

本書の内容は、以前ご紹介した「U理論」とも深い関連があります。本書の内容をさらに深め、実践的なセオリーにしたのがU理論とのことですが、U理論を理解するためのヒントとしてもとても役に立ちました。

リーダーシップ、シンクロニシティ、そして物語。一冊で三度おいしい本です。この本を読み終わった後、自分もいよいよ夢の実現に向けて動き出さなければ、という決意に近い思いに至りました。夢がある方、世の中を変えたいと思っている方にはお奨めですよ!監修者解説にも、このような人に読んでほしい、と書かれていました。

  • 夢を探している人
  • 夢を再チェックすべき中年の人
  • 「リーダーシップの旅」が自分の夢とかかわると思っている人
  • 人々とのつながりを大切にしている(もっとそうしたいと思っている)人
  • 「自己実現」や「個性化」は、理解するのも実践するのも難しいと思っている人

これに少しでも該当すると思った方は、是非読んでみてくださいね!

選択の科学

今日は、シーナ・アイエンガー 著の「選択の科学」という本をご紹介します。著者であるシーナ・アイエンガーはコロンビア大学ビジネススクールの教授で、盲目の人気女性教授として有名な人です。本書を読んだ時にはとても感銘を受けたのですが、残念ながら当時は何も記録をしていなかったので、改めて記憶を呼び起こしながら纏めてみたいと思います。

まず最初に「オリエンテーション」として、何故著者が「選択」を研究対象として選んだのかが語られます。著者は自分の人生を振り返り、運命論や偶然の産物、という観点から語ります。つまり、自分の人生の物語は生まれた時から既に決まっていたのだ、という立場(運命論)や、人生は地図のない場所を進んでいくようなもので、自分で決められることがどれほどあるのか?という立場(偶然の産物)です。

しかし、第三の物語を語ることもできる、と著者は言います。それこそが、自分の物語を「自分で選んだ」という立場で語ることです。それについて、このように書かれています。

わたしは自分の人生を、すでに定められたもの、両親の意向に沿ったものとして考える事もできた。また自分の失明と父の死に折り合いをつける一つの方法として、それを自分の意思を超えた、思いがけないできごとの重なりと見なすこともできた。しかし、自分の人生を「選択」という次元で、つまり自分に可能なこと、実現できることという次元でとらえた方が、はるかに明るい展望が開けるように思われたのだ。

このようなきっかけから、著者は「選択」をテーマに研究を進めるようになったと言います。この本では「選択」を様々な観点から考え、「選択」が僕たちの人生に与える影響に関する様々な疑問に取り組んでいます。

自分の現在の状況、つまり今までの人生の物語は自分の選択の結果である、という考え方はとてもパワフルで、主体的なものだと思います。それを自分以外の誰かに委ねたり、他人のせいにすることは可能ですが、自分の人生のコントロールが自分にないのだとしたら、前に進む活力など湧いてくるでしょうか。

「選択ができる」とは自由であるということです。そして自由には責任が付きまといます。今までの人生が自分の選択の結果だとしたら、その責任は自分にあります。しかし、これから先どうやって生きていくかという「選択の自由」もまた僕たちにあるのです。この自由と責任を受け入れて生きていくことが、自分の人生に責任を持つ、ということではないでしょうか。このように考えると、「選択」が人生に及ぼす影響は測り知れませんよね。

さて、では本書でどのような論点が語られているのか、いくつかご紹介したいと思います。

まず、選択には力があるというお話です。僕たち人間は、身体だけでなく精神をも活用して様々な選択肢から最良のものを選ぼうとします。そうした行動が現在の人類の繁栄の一因になったとも考えられますが、さらに重要なのは、人間は「選択したい」という欲求を生まれながらにして持っているということだそうです。

この「選択したい」という欲求は非常に強いため、単なる目的達成のための手段ではなく、選択すること自体が目的になってしまうこともあるそうです。例として、高ストレス環境に置かれているはずの社長が高寿命である、という話が出てきます。つまり、状況を自分でコントロールしたいという欲求があり、それが満たされていると健康にも良い影響を及ぼすということです。選択できると感じることは、それだけで大きな力を持っているようですね。

次は選択とアイデンティティの関係についてのお話です。僕たちは、アイデンティティと選択の間を行き来しているのだと言います。「自分はこういう人間だからこれを選択するべき」、「これを選択した自分とは、こういう人間である」というように。これはつまり、「選択」も「アイデンティティ」も静的なものではなく、動的なプロセスであるということです。今まで自分がしてきた選択の積み重ねが自分を作ってきたように、これから行う選択もまた未来のアイデンティティを作っていくのだとすれば、自分にとって望ましい選択をしていくことがとても重要だと思います。

「選択は創られる」という章では、僕たちが無意識に受け取っている情報に、どれだけ影響されているかということが語られています。その最たる例が広告です。そう聞くと、僕たちは自分の決定権が脅かされているような気になります。そしてそれは悪いことだと。それに対し著者は、自分の価値観を脅かすような影響と、基本的に無害な影響を分けて考えた方がいいと言っています。本当に重要な選択にのみ注意を払い、つまらない選択に悩む必要はないのでは、ということですね。

最後の章では、選択と不確実性に関する記述があります。選択に力があるのは、それがほぼ無限の可能性を秘めているからだと言います。もし仮に未来が既に決まっていたとしたら、選択には価値はありませんよね。つまり、選択の力を最大限に活用しようとすれば、この世界の不確実性を認めなくてはならないのです。そんな不確実な世界を切り開いていく武器として、また自分を形作る材料として、納得できる選択をしたいものです。

この本には、他にも「選択をしないという選択肢もある」「選択肢が多いことは必ずしも利益にならない」など選択に関する興味深い論点が沢山紹介されています。「選択」にフォーカスした本はなかなかないと思うので、興味がある方は是非読んでみることをお勧めします。内容もそれほど難しくなく、身近な例なども沢山出てくるので読みやすいですよ。

その幸運は偶然ではないんです!

今日は、J・D・クランボルツ & A・S・レヴィン 著の「その幸運は偶然ではないんです! 夢の仕事をつかむ心の練習問題」という本をご紹介します。この本の著者の一人であるJ・D・クランボルツという人は、スタンフォード大学の教育学・心理学教授で、キャリアカウンセリング理論の先駆者だそうです。

この本のタイトルを見たときに、真っ先に「セレンディピティ」という言葉が思い浮かびました。皆さんは「セレンディピティ」という言葉はご存知でしょうか?「セレンディップと三人の王子」という童話に因んで作られた言葉ですが、「偶然に幸運をつかむ能力」という意味だとされています。「能力」というからには、それを身につけることで幸運を掴める、あるいは掴みやすくすることができるのでしょうか?そこにとても興味があり、本書を手に取りました。

さて、本書の主張はまさにタイトルの通り、「幸運は偶然ではない」です。「はじめに」には以下のように記されています。

幸運やチャンス、予期せぬ出来事に関する本はたくさんありますが、この本はほかの本とは少し違います。私たちは「幸運は偶然ではない(Luck is No Accident.)」と考えているのです。
キャリアや人生を前に進めるような予想外の出来事が起きて、それが本物のチャンスに変わるときには、その人自身が重要な役割を果たしています。この本はキャリアについて書かれていますが、その内容は、人生のほかの場面、たとえば恋愛にも応用できるものだと私たちは考えています。

著者はキャリアカウンセラーですので、キャリア選択についての話題がほとんどですが、ここに書かれているようにこの本の内容はとても汎用的なもので、ありとあらゆることに応用が可能だと思います。

では、幸運は偶然ではない、とは一体どういうことなのでしょうか。必ず幸運を掴めるような決まったやり方があるのでしょうか?残念ながらそういうわけではありません。著者は、「人生には予測不可能な偶然の出来事が必ず起こるので、結果をコントロールすることはできない」とした上で、「行動次第では、その結果を望ましいものにする確立が高められる」ということが言いたいのです。

では、その行動とは、どのような行動なのでしょうか?この本の中には様々なアドバイスが含まれていますが、僕が重要だと思ったポイントを纏めてみました。

  1. 「想定外の出来事は必ず起こる」ということを理解しておく
    人生では、自分の想定していない出来事が沢山起こります。未来がどうなるかは誰にもわからないし、完全にコントロールすることはできません。全てが思い通り、という風にはなかなかいかないものだ、ということを理解しておきましょう。
    ただ、自分の行動や、物事に対する反応は自分でコントロールすることができますよね。実際には、これらが人生の方向性を決める重要な要因なのです。
  2. 想定外の出来事が起こった時の対処が重要
    想定外の出来事には、良いことも悪いこともあります。悪いことが起こった時、悲嘆にくれてふさぎ込む人もいますが、それをきっかけに建設的な行動を起こしてチャンスをつかむ人もいます。つまり、想定外の出来事が起こった時、どのように反応するかが重要なのです。逆に良いことが起こった時は、逃さずに掴み取りましょう!そのためには常にアンテナを張っておくことも重要だと思います。
  3. 積極的な行動で良い出来事を起こす
    想定外に良いことが起こった場合、それが単なる幸運や偶然とは言い切れません。大抵の場合、そうした出来事は連鎖して起こるためわかりにくいですが、本人の積極的な行動がそのような出来事を「起こして」いるケースも多々あると思います。想定外の出来事に対する反応、という受け身の姿勢だけでなく、自分から「起こす」という積極的な姿勢が重要ですね。
  4. 選択肢に対して常にオープンでいる
    著者は、「今後一切、自分のキャリアに関して意思決定をするな」と説きます。これは、複雑に変化する昨今の状況において、一つの選択にこだわり続けることは視野を狭くしてしまうということを言っています。つまり、固執することで他のより良い選択肢が見えなくなってしまうということですね。自分が見えていないだけで、実はもっともっと沢山の選択肢があるかも知れませんよ。
  5. 情熱は行動の前だけにあるのではなく、行動の結果として生まれることもある
    僕は今まで「情熱ありき」だと思っていました。が、自分の情熱がどこにあるのかわからない、と思っている人が悶々と考えていても何も始まらない、情熱は行動によって作られることもある、というこの意見はとても現実的で正しい意見だと思います。人には人それぞれの情熱があります。それを明確に認識できている人はいいですが、そうでない人はある程度方向性をつけたら先に行動を起こした方がいい、ということだと思います。
  6. 何もしなければ、何も起こらない
    未来はどうなるかは誰にもわからない、と書きましたが、例外があります。それは、何もしなければ確実に何も起こらない、ということです。つまり、何かを起こしたければ、リスクを取って行動すべきだということですね。例え失敗しても、次に何が起こるかはわかりませんし、そこから学べることもあるでしょう。失敗を恐れず、新しいことに挑戦しましょう。本当に恐ろしいのは、失敗することではなく、失敗を怖れて何もしないことなのですから。

この本には、普通の人たちがどんな行動によって幸運を掴むことができたか、というエピソードが沢山紹介されています。説明と合わせて実例を読むことで、さらに理解が深まると思います。各章の最後にはワークもついており、キャリアに悩んでいる方はもちろん、幸運を掴みたい方には是非おすすめの一冊です。是非読んでみてくださいね!

完結版マイ・ゴール

今日は、リチャード・H・モリタ 著の「完結版マイ・ゴール 成功の秘訣は“選択”そのものにあった!」という本をご紹介したいと思います。「完結版」と付けられていますが、他にも新装版、ダイジェスト版など、Amazonで探しただけでも4つのバージョンが存在します。バージョン間の違いはよくわかりませんが、完結しているのならそれを読もう、ということで完結版を読んでみました。

この本はいわゆる成功哲学、自己啓発本にジャンル分けされると思いますが、主張はとてもわかりやすく、シンプルです。「はじめに」の冒頭には以下のように記されています。

結論から。
人生は選択の連続であり、今の人生は過去の選択の結果です。
そして未来は、これからあなたがどんな選択をするのか、その選択によってすべてが決まります。
もちろん目標を達成していくプロセスにおいては、たゆみない、人一倍の努力は当然のことですが、成功と自己実現の真相には、そうした「積極的に懸命な努力をしたから」というだけでは到底説明することのできない重要な事実が横たわっています。その事実こそ“選択”の問題だったのです。

成功哲学というと、いかに成功するかという方法論だと考えがちです。つまり、どのように考え、行動すれば成功できるのか、というプロセスに着目する考え方です。しかし本書では、プロセスも勿論重要だけれども、それよりも大事なのは「どんな目標を選択するのか」なのではないか、と説いています。

著者がこのような考え方に至った経緯が本書の中でも説明されていますが、当初はやはり「どうすれば成功できるか」という論点がスタート地点だったようです。それを調べるべく、成功者にインタビューを重ね、共通項目を抽出して「究極の成功ノウハウ」を作ろう、という研究を始めました。

しかし研究を進めていくうちに、ほとんどの成功者は自分がどうやって成功をつかんだのか、その本当の理由を上手く説明できていない、ということに気が付きました。人一倍努力をした、成功した姿を鮮明にイメージした、ポジティブだった、などと答えは返ってくるのですが、よく考えてみると的確な答えになっていない。そこからさらに突き詰めていった結果、実は目標の選択そのものが成功者たちに意欲を与え、努力を引き出したという結論に達したそうです。

僕はこの考え方はとても共感できます。そもそも僕は「成功哲学」というものにあまり興味がないのですが、その理由の一つに「成功という言葉の曖昧さ」があります。何を以って成功と呼ぶのか。それはあまりにも相対的で、人によって違うのだとすれば、それに達するプロセスも違うはずではないのか。そんなわけで、成功哲学を読むときは「あくまでこの人は自分の成功の理由をそう分析しているんだな」、と参考程度に捉えてきました。

さらに僕は、目標を達成するための方法を、人は直感的に知っているのではないかとも思っています。心の底から達成したい目標があるとき、具体的な方法を調べたり、試行錯誤を繰り返しながら目標に少しずつ近づいて行こうとします。そこに多少の効率の善し悪しはあるかも知れませんが、その努力を支えるだけのモチベーションがあるかどうか、そちらの方が重要なのだと思います。

先ほどから「目標」という言葉が出てきていますが、本書ではさらにもう一歩進んだ「マイ・ゴール」というものを扱います。定義は、「個人が、これだけは絶対に達成(手に入れたい)したいと思えるもので、またその目標が自分の才能や能力に合っているもの」とされています。ただの夢ではなく、「やりたいこと」「できること」「むいていること」を一致させた、実現可能な目標とも言えます。

ただの夢ではなく、ここで言う「マイ・ゴール」を見つけるためにはどうすれがいいのか。それは、自己認識を深めることです。つまり、自分が「やりたいこと」「できること」「むいていること」をきちんと認識できているかがカギになります。本書では自己認識を深める方法として、生活史の作成を勧めています。生活史とは、今まで自分が生きてきた過去を振り返った物語のようなものです。

過去を振り返るのに消極的なイメージを持つ方もいるかも知れません。しかし、それについては以下のように書かれています。

よく「過去を振り返るな!」と耳にする。確かに過去を振り返り、過去に生きることは愚かなことだ。しかし、過去の記憶から「ありのままの自分、本当の自分」を認識し、そこから教訓や情熱を見出し、眠っていた夢を復活させていくプロセスの中でマイ・ゴールをつかみ、“これから”を生きることはとても積極的な行為なのだ。

今の自分を作っているのは過去の選択です。そしてその過去の膨大な記憶が、今の僕たちに大きく影響していることは間違いありません。しかし過去の記憶はとても曖昧なもので、時とともに事実とはズレてくることがよくあります。そんな誤った自己像から、本当に素晴らしいと思える目標を設定できるでしょうか?そう、過去にとらわれる為ではなく、自分が本当に望む未来のために、今一度過去を棚卸して自己認識を再構築する必要があるのです。

本書の中には、生活史を作るために役立つ質問集なども含まれています。また、後半は物語になっており、理論だけだとわかりにくい、という方はストーリーを通して「マイ・ゴール」とはどういうものかが理解できるようになっています。ここに紹介しきれなかった様々な論点があり、度々「なるほど!」と思わされました。「成功哲学」には興味はあるけどなんか胡散臭い、と思っている方には本当にオススメの一冊です。是非読んでみてください!

U理論

今日は、C・オットー・シャーマー 著の『U理論 過去や偏見にとらわれず、本当に必要な「変化」を生み出す技術』という本をご紹介したいと思います。最近の僕は「人が変わる仕組み」について知りたいと思っていて、この本の副題には興味をそそられたので読んでみました。

実際に読み始めるまで、どんな内容の本なのか全く把握していませんでしたが、これはなかなか強敵でした。内容が600ページ近いというのもさることながら、言葉では説明しにくい部分を文章で説明しようとしていて、かなり難解でした。一度読んだだけでは100%腑に落ちた感覚になるのは難しいですが、何らかの問題意識を抱えていて、世の中を変えたいと思っている人にとってはとても重要なことが書かれている気がします。

また読み返したいと思っていますが、とりあえず一度読み終わった段階でこのU理論というものが何なのかを僕なりにまとめてみたいと思います。

この本は、現代に生きる僕たちが抱えている諸問題(個人的なものも、社会的なものも含めて)はどんどん複雑性を増しており、今までのやり方で解決することは難しい、という問題提起から始まっています。今までのやり方とは、「過去から学ぶ」というやり方。つまり、過去から学んでいるだけでは、今僕たちが抱えている諸問題を解決することができないということです。そうではなく、僕たちは「未来から学ぶ」必要があるのだと著者は言います。その手法を体系化したのが本書で扱っているU理論ということになります。

さて、この「未来から学ぶ」という言葉。いきなり難解ですね。それが何かを結論づける前に、U理論のプロセスを簡単に辿って行きましょう。

僕たちは何かを解決しようとするとき、「過去に似たようなことがなかったか」という観点で考えることが多いですよね。その過去のケースが上手くいったのならば、今回もそれと同じ方法で解決できるのではないか、こう思います。或いは、そんな思考すら通さず、習慣的に対応することさえあります。しかし、今僕たちのまわりで起こっていることは、あまりに複雑で状況も刻々と変わっているため、このような「過去から学ぶ」やり方では通用しません。

この「過去から学ぶ」という行為を、この本では「ダウンローディング」と呼んでいます。既に確立されている解決策を、そのままダウンロードして適用する、というイメージなのでしょう。このダウンローディングを止めるというのが、U理論のスタート地点です。

ダウンローディングを止めるということは、起きている現象をステレオタイプとして捉えるのではなく、「観察する」ということです。「ゼロベース」という言葉にも似ていますが、要は先入観を捨てることが重要です。先入観を捨てることで、今まで見えていなかったものが次々と見えてくるようになります。

しかし、あるものを「観ている」という状態は、自分がその内部にいないことを意味しています。つまり、自分が「観ている」ものは、自分とは区別された何かであり、自分の外で起こっていること。当事者意識を感じられていないんですね。しかし、問題を解決するためには、自分がその問題を引き起こしている状況の一部であることを「感じ取る」必要があります。つまり、視野が自分という個人から全体へと移る、これが次のステップです。

さて、ここまで来てやっと、「未来から学ぶ」ための準備が整ったことになります。「感じ取る」の次のステップを「プレゼンシング」と言いますが、この言葉の意味は「出現しようとしている未来の可能性を認識すること」です。この解釈は特に捉えどころが難しいので、かなり自分の解釈が入っていますが、つまり以下のようなことだと思います。

今までのプロセスで、ステレオタイプ的なものの見方を止め、自分を当事者として認めました。しかし、既にダウンローディングは止めてしまっているので、過去の解決策をそのまま持ち込むことはできません。つまり、問題をどう解決するかを「自分の頭」で考えなくてはならないのです。これは言いかえれば、「どのような未来を描き」、「その未来に対して自分がやるべきことは何なのか」を明らかにすることでもあります。

「どのような未来を描き」、「その未来に対して自分がやるべきことは何なのか」。この問いに答える為には、自分は何者なのか、をきちんと認識している必要があります。自分のことをよくわからなければ、どんな未来になって欲しいか、それに対して自分に何ができるか、はわかりませんからね。つまりここで、「思い描く未来像」と「自己の本質」が深い部分で繋がることになります。だいぶデフォルメしていますが、これが「未来から学ぶ」ということだと僕は解釈しました。

この「プレゼンシング」以降は、実際に行動に移していくプロセスです。出現する未来の可能性を元に具体的な未来像を構築し(「結晶化」)、試行錯誤を繰り返し(「プロトタイピング」)、最終的に実行に移していく(「実践する」)。それぞれに論点はありますが、もっとも分かりにくく、かつ重要なのはやはり「プレゼンシング」の部分でしょう。

なかなかすんなり入ってきにくいですが、U理論の概要はこんな感じです。この本では、難しい言葉も沢山出てきますが、このU理論が様々な観点から繰り返し説明されているので、なんとか読み進めていくことができます。実例なども数多く紹介されているので理解の助けになってくれると思います。

付け加えるなら、全部で21章まであるうちの20章までは理論的な説明がほとんどなので、「じゃあ一体どうすればいいの?」というストレスを抱えながら読むことになります。しかし、最後の章を読んで印象は一変しました。この章は「プレゼンシングの原則と実践」というタイトルなのですが、マニュアルのような形式でU理論を実践するためのステップが説明されています。これはとてもわかりやすく、実践の手引きとしても、理論の具体的理解にもとても役立ちます。

最初にも書きましたが、世の中を変えたい、組織を変えたい、自分を変えたい、という問題意識を持っている方にとっては、今までにない考え方が紹介されている良書だと思います。そして、直感的にこれは、これから先の時代を生きていくにあたってとても重要な考え方だと感じています。確かに読むのは大変ですが、特に組織や社会を変えたいと思っている方は是非読んで頂きたい一冊です。

読書の効率を上げるには

このブログでは心理学、脳神経科学、自己啓発やビジネス関連の書籍など、僕が役に立ったと思う本をご紹介しています。ブログを書き始めて二ヶ月ちょっと経過しましたが、おかげさまで何とか続いています。読書からは本当に色々な知識を得ることができるので、今後も書籍紹介は着々と続けていきたいと思っています。今日はその「読書」について僕の思うところを書いてみたいと思います。

本を読む方は沢山いらっしゃると思いますが、その目的は様々です。僕はその目的を大別すると、下記の二つになるのではないかと思っています。

  1. エンターテインメントとしての読書
  2. 知識を得るための読書

読書をエンターテインメントとして楽しんでいる方は、やはり小説等を多く読まれる方が多いと感じます。僕は小説はあまり読まないのですが、そういう人に言わせると、本を読むのがリラックスする手段の一つなんだそうです。僕は逆に読書する時はかなり構えて読んでしまうので、リラックスの手段として読書を活用できるというのはうらやましい限りです。

もう一つの目的は、知識を得るための読書。知識を得る、という目的があればどんな本であれこちらに入ると思いますが、特に学術書や解説書、技術書などは典型だと思います。僕の中では一昔前まで読書と言えば技術書オンリーでしたが、必要に迫られてのことだったので、楽しむという感じではありませんでした。

目的が違うのだとすれば、読み方にも違いが出てくるはずですよね。エンターテインメントとしての読書では、楽しむことが重要なので僕のように構えて読むのではなく、リラックスして、文章表現やストーリーを味わい尽くす、という感じになるのでしょう。物語のクライマックスで、次のページをめくるワクワク感は何とも言えないものがありますよね。そもそもエンターテインメントに「効率」という言葉はそぐわないので、好きなように楽しく読む!これに尽きると思います。

一方、知識を得るための読書は成果が重要になってきます。何か新しい知識を仕入れるために読んでいるのに、何も得るものがなければ当初の目的が達成できていないことになります。僕はこちらの読み方で読書をすることが多いのですが、色々な本を読んでいるうちに何となく効率よく読むためのコツのようなものが見えてきた気がします。これ以降、そのコツについて書いてみたいと思います。

僕が最も重要だと思うのは、知りたいポイントを明確にしてから読むということです。読書の目的は「知識を得るため」「ヒントが欲しい」「技術を習得する」等だと思いますが、それをどれだけ具体化できるか、が大切です。言葉を換えれば、読む前にはっきりとした形で質問を用意しておくのです。これには二つの意味があります。

一つは、そもそもその質問によって読むべき本が変わってくるということ。本選びを間違ってしまったら、目的を達成することは難しいです。そしてもう一つは、質問を明確にしておくと、必要な情報が頭に入ってきやすいということです。ペラペラと流し読みしていても、質問に意識していれば知りたいことについて書かれた箇所が頭に飛び込んで来る感覚です。

これ以外にも、以下のようなポイントがあると考えています。

  • 目次の大切さ
    目次は本の構成を表現した、いわば設計図です。目次を眺めることで、本の内容や話の進み方を大まかに把握することができます。ここに自分の必要としている情報がない場合はその本は目的に合っていないのかも知れません。また、どの部分をより力を入れて読むべきかがわかります。
  • 本を買う場所
    皆さんは本をどこで買っているでしょうか。実店舗には「立ち読み」と「買ってすぐ読める」というメリットがありますよね。一方、Amazonは「品揃えの多さ」「他の読者のレビュー」、そして「関連商品の提示」という大きなメリットがあります。僕は、ジャンルにこだわらずふらっと本を見つける時は大型書店に、一つの分野を掘り下げる時はAmazon、という使い分けをすることが多いです。いい本に巡り合う、というのも読書から成果を出す大事な観点ですよね。
  • 得た知識を定着させる
    せっかく読んでも、その内容が定着しなければ意味がありません。悲しいかな、本を読んだ時はなるほど、と思ってもその後急速に忘れてしまうものです。そうならないために、読んだらできるだけ早くアウトプットしてみると定着しやすいと思います。技術書であれば本の内容に従って実際に手を動かしてみる、知識であれば自分なりにまとめてみる、等です。実はこのブログにもそういう意図があります。アウトプットを意識すると読む時の理解の度合いも変わってくると思いますよ。

他にも挙げていけば「買うかどうか迷った時はとりあえず買っておく」など色々ありますが、もはやコツというよりポリシーになってしまいそうなのでやめておきます。

さて、最初に取り上げた読書の目的についてですが、少し補足したいと思います。それは、「知識を得るための読書」をしていても、楽しいと感じる瞬間はあるということです。もちろん、しょうがなく読んでいる時はなかなか楽しいとは思えませんけどね。僕は自発的にどんどん本を読むようになって、自分の知的好奇心が満たされていく楽しさ、自分の見識が広がっていく楽しさがやっとわかってきました。

同じ様に、「エンターテインメントとしての読書」をしている時でも、その中から知識を得たり、何かアイデアがひらめいたりということは起こりうるはずです。つまり、本を読む上で何らかの目的はあるのでしょうが、目的と違った思わぬ効果が出ることもあるということですね。最近は、もしかしたらそういう本が「いい本」なのかも知れない、と思うようになりました。そんな「いい本」に数多く出会いたいものですね!

BUMP OF CHICKENのライブに行ってきました!

久々に音楽の話題を。昨日、代々木第一体育館で行われたBUMP OF CHICKENのライブ、「GOLD GLIDER TOUR」に行ってきました!ライブに行くこと自体久しぶりだったのでとても楽しみにしていたのですが、最高に楽しかったです。

さて、BUMP OF CHICKENというバンド。あんまり知らない人のために軽く説明を。藤原基央(ボーカル・ギター・作詞・作曲)、増川弘明(ギター)、直井由文(ベース)、升秀夫(ドラム)の4人で結成されたロックバンドです。ボーカルの藤原くんの声と、彼の書く歌詞は本当に凄いと思います。

Wikipediaでは、オルタナティヴ・ロックという扱いになっていますね。1994年結成、1999年に「FLAME VEIN」というアルバムでデビュー。メンバー全員が1979年生まれということで、僕と同世代です。

最近だと、映画「ALWAYS 三丁目の夕日’64」の主題歌(グッドラック)や、「ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団」の主題歌(友達の唄)、東日本大震災のチャリティー曲「Smile」なんかが有名でしょうか。知名度で言うと、やっぱり「天体観測」が一番かも知れませんね。

昨日は、会場である代々木体育館に開演1時間ほど前に到着したのですが、既に大量の人が。グッズの販売ブースは大行列ができていました。僕もテンションを上げるためにTシャツ/ピンバッジセット、リストバンド、チャリティーグッズなんかを購入してみました。会場にはBUMP OF CHICKENのツアートラックが展示されていましたよ。ファイナルファンタジー零の主題歌を提供したからでしょうか、どう見てもFFコラボと思われるドット絵のトラックもありました!

色々なサイトを見ると、日程によって少しずつセットリストが違うみたいですね。僕が観に行った7/7のセットリストは以下です。個人的には、「ゼロ」と「友達の唄」が最高でした。あと、アンコールに古い曲をやってくれたのも嬉しかったですね。

  1. 三ツ星カルテット
  2. 宇宙飛行士への手紙
  3. HAPPY
  4. ゼロ
  5. プラネタリウム
  6. 友達の唄
  7. Smile
  8. グッドラック
  9. ハルジオン
  10. 車輪の唄
  11. sailing day
  12. 星の鳥
  13. メーデー
  14. イノセント
  15. supernova
  16. beautiful glider
  17. カルマ
  18. 天体観測
  19. くだらない唄(※ アンコール)
  20. ダンデライオン(※ アンコール)
  21. ガラスのブルース(※ アンコール)

今回はアリーナ後方からの鑑賞だったのですが、途中、「はずかし島」と名付けられたアリーナ中央のサブステージでの演奏があり、めちゃめちゃ近くで見れました。やっぱりライブはいいですね、身体中に音が響いてくる感じ、臨場感、会場の一体感。MCを聴いていても、メンバーの仲の良さ、人柄が感じられてCDで曲を聴くのとは全く別物の体験でした。

とある心理学の本で、同じお金の消費でも、幸福感に繋がりやすい消費とそうでない消費がある、というようなことが書いてありました。それによると、コンサートや旅行などの体験的消費のほうが、テレビや服などの物質的消費より幸福感に与える影響が強いのだそうです。形のあるものは手に入れると急速に熱が冷めていきますが、体験は思い出という形でいつまでも残る、といったところでしょうか。

次ライブに行けるのはいつになるかわかりませんが、また機会があったら是非行きたいと思います。皆さんも、同じお金を使うなら体験に使ってみると、幸せな気分になれるかも知れませんよ!

ハーバード流 自分の潜在能力を発揮させる技術

今日は、マリオ・アロンソ・ブッチ 著の「ハーバード流 自分の潜在能力を発揮させる技術」という本をご紹介したいと思います。この著者は、ハーバード大学メディカルスクールの特別研究員で、医師としてのキャリアがある人です。元々はストレスが消化器系に与える悪影響についての研究をしていたらしいのですが、最近は研究対象を脳の機能へと広げているそうです。

この本、タイトルからは自己啓発的な内容の本かと思ってしまいますが、特に序盤には脳の話が沢山出てきます。ちょうど最近脳関連の書籍を読み漁っていたので、知っていることも多かったのですが、本書の真骨頂は、脳に関する知識を踏まえて、その先どうする?という部分です。脳の専門書と自己啓発書の中間、つなぎ役的な立ち位置の本だと思います。僕も脳に関する知見をどうにか生活に取り入れられないものかと考えていたので、とても参考になりました。

この本での中心的な論点は、「左脳が作り上げた自己イメージ」だと思います。以前の記事にも書きましたが、僕たちの左脳は言語や発話、高度な知的行動に特化した大変優れた器官です。そして、「自分に対するイメージ」を作りだしているのもこの左脳でした。

さて、この自己イメージ。統合された自己という概念は、必要なものではあるのですが、自己イメージに逸脱するようなことに対する抵抗感、つまり自分の限界を設定しているのも左脳なのです。人は、何か新しい環境に適応するとき、右脳が活発になります。そして右脳によって新しい環境に適応するパターンが発見されると、それが左脳に格納されます。要するに、左脳は定型化が得意なのです。

これを考えると、新しいことをやろうと思った時になかなか踏み出せない、居心地のいい状況に甘んじてしまう、という僕たちの性質がどのような仕組みで起こっているのかよくわかる気がしますね。

この自己イメージ、本書の中では「アイデンティティ」という言葉で説明されています。アイデンティティはとても重要な概念なので、関連書籍を別途ご紹介したいと思いますが、ここでは自己イメージという意味だと思って下さい。この自己イメージ=アイデンティティについてもう少し深堀りしてみましょう。

まず、理解しなければならないのは、アイデンティティとは固定されたものではなく、日々変わっていく動的なものだということです。アイデンティティは、自分が置かれている環境や関わった人たちから情報を得ながら、徐々に構築されていきます。注意しなければならないのは、このアイデンティティが本当の自分ではないということです。だって、本当の自分が環境や周りにいる人で決まるというのは、おかしいですもんね。

殻を破る、という言葉があります。僕はブレイクスルーと呼んでいますが、ある人がちょっとしたきっかけから刺激を受けて、今までの自分を軽々と越えていく場面を僕は沢山見てきました。つい先日も、一緒に働いている仲間が、ブレイクスルーを感じた、と言っていました。

彼は、ずっと自分の仕事に対して、このままでいいんだろうか?という悩みを抱えていました。さらに最近の彼は、複数のプロジェクトを同時に抱えていて、精神的にも肉体的にもとても追いつめられていました。そこで、ある種の「開き直り」のようなものが発生したのでしょう。彼はとても思慮深い男なので、今までは良かれと思う事も空気を読んで敢えて言わない、という所があったのですが、ふと「自分はこうした方がいいと思う」ということをぶちまけてみたそうです。それがスタッフの緊張感を高め、結果的に仕事の質が上がり、お客さんの評価も上がった。そして彼の自信につながり、ついには「自分はこれでいいんだ」と思えるようになったということです。

本書にも似たようなことが書いてあります。

人は「もうここまでだ」「これで終わりだ」「こんなことはこれ以上続けられない」という境地に達しないと、勇気を出して未知の世界へ飛び移ろうなどとはなかなか考えないものだ。それでも、ちょっとしたことや人との出会いから刺激を受けて、破れないと思い込んでいた殻を破り、新しい自分になって羽ばたくケースがある。

では、意識的にブレイクスルーを起こすことはできるのでしょうか?そのヒントは、「無自覚の行動を自覚した行動に変えていかないと本当に自由になることはできない」という本書の記述の中にあります。人間の行動のほとんどが無意識に行われていることはご存知でしょうか?そのような自動操縦モードで使われるのは、自己イメージだとすれば、意識して行動を変えていかなければ変われるはずがありません。

本書には、無意識の行動を意識的な行動に変えていく戦略についても示されています。キーワードになるのは、「注意」「言葉」そして「身体」です。それぞれ簡単に紹介しておきますね。

注意に関しては、僕たちは事実を見ているわけではなく、「見たいものを」見ていることを理解する必要があります。従って、注意を向ける先を変えない限り、ものの見方が変わることはあり得ません。

次に言葉。言葉には力があります。スピリチュアルな意味ではなく、実際に言葉と情動は脳の中で結び付けられています。そして人は、アイデンティティを語る時にも言葉を使いますよね。その言葉の使い方次第によって、自分像は大きく変わってしまいます。

最後に身体。脳関連の書籍を読むと、身体と脳のつながりはとても深いことがわかります。例えば運動が身体にいいのはなんとなく理解していても、理由は気分転換くらいしか思いつきませんよね。しかし、運動をすることによって脳の色々な部分が変わっていくことがわかってきています。例えば、身体を動かすことで感情が安定し、多少のことでは動じなくなる、なんてことも起こっているそうです。食生活や呼吸も考え方や認識に変化を及ぼすそうですよ。

「注意」「言葉」「身体」について変えていくことで、自己イメージの一歩外に出ることができれば、今までとは違う世界が広がっているかも知れませんね。是非到達してみたいものです。

さて、如何だったでしょうか?脳に関する知見を人生に活用する、という観点でよく書かれている本だと思います。ここで挙げたポイント以外にも、様々な論点や逸話などが紹介されており、面白いです。分量もそれほど多くないので、すぐ読めてしまいます。もっと詳しく知りたい方は、是非読んでみてください!