パターン・ランゲージの勉強会を開催しました

ここ最近、めっきりパターン・ランゲージにはまっております。先日のDevelopers Summit 2014にて「プレゼンテーション・パターン」のワークショップに参加し、とてもよい刺激を頂いたので、早速プチ勉強会&ワークショップを開催してみました。

勉強会は、パターン・ランゲージの説明(資料はこちら)を簡単に行った後、その効果を実際に体感してみよう、ということで井庭研究室で作られた「コラボレーション・パターン」を題材に対話のワークショップをやってみる、という流れで行いました。限られた時間だったので書かれていたすべてのパターンを網羅することはできませんでしたが、とても盛り上がったのでその様子や感想などを書きたいと思います。

先日僕がDevelopers Summitで体験してきた対話のワークショップは、以下のようなものでした。

  • プレゼンテーション・パターンの中から、自分が経験したことがあるものをチェック。具体的な体験談を思い浮かべる。
  • 次に、自分が経験したことがないパターンの中から、取り入れてみたい!と思うものを選ぶ。
  • ワークショップが始まったらひたすら知らない人に話しかけて、自分がこれから取り入れたいパターンを既に体験している人から体験談を聞く。
  • 逆に、相手が取り入れたいと思っているパターンを自分が体験していたら、その話を相手にしてあげる。
  • これを繰り返す。

今回は人数や状況が異なるので、以下のようにアレンジしてみました。

  • いきなり体験談の語りに入るのではなく、一つ一つのパターンを皆で読み合わせし、そのパターンが言おうとしていることを少し話し合った上で、体験談を語るようにしました。こうすることで、パターンの理解や想起がしやすくなり、体験談が掘り起こされやすくなったかなと思います。
  • 今回は4人という少人数で行ったということもあり、全てのパターンについて体験談が出てこない可能性が高いと考えました。そのため、体験談だけでなく、失敗談や類似の体験、感想など、思ったことは何でも発言するようにしてみました。結果色々な方向に話が発展し、とても盛り上がりました!
  • 井庭先生のワークショップでは、知人とは話す機会を作りやすいのでなるべく知らない人と話しましょう、ということでしたが、今回は必然的に知人のみでした。実は知人とやるメリットというのもあり、自分が気づいていない体験を他の人から指摘してもらえる、ということが起こりました。

少人数でのバリエーションでも十分盛り上がることができたので、興味のある方は是非やってみてください!ただ、ディスカッションの時間がそれなりに必要になるので、34個のパターンを全て話し終わるには最低2~3時間は必要かな、と思います。いくつかフィードバックもあったので、それも書いておきますね。

  • 面白かった!
  • 他にもパターン・ランゲージの使い道はありそうなので、色々と考えてみたい
  • 仕事のナレッジを共有したり、業務標準化をする際の「まとめ方」として使えそう
  • パターンの一つひとつはそんなに目新しくはないけれど、体系的にまとまっていることに価値がある
  • さらに具体的な解決策が知りたくなる

色々と出てきましたが、少なくともパターン・ランゲージが持っている「認識のメガネ」「コミュニケーションの語彙」という働きに関しては、十分体感していただけたかな、と思います。次のステップでは、パターン・ランゲージを実際に作ってみるという勉強会をやってみたいと思います。

今回の勉強会用に作成したパターン・ランゲージの説明資料は、こちらからダウンロードできます。資料作成といっても、井庭先生のiTunesUでの授業をはじめ、関連する著作等を自分なりにまとめ直しただけですが…。まだまだ情報が少ない中、貴重な情報を積極的に発信して下さっている識者の皆様に、本当にありがとうございます!

Developers Summit 2014に行ってきました

先週の木曜日(2/13)、目黒雅叙園で行われた「Developers Summit 2014」に参加してきました。Developers Summitというのは、ソフトウェア開発者を中心に、相互に知識やスキルを伝達し合うコミュニティーイベント、とのことです。2003年に始まって以来、もう10年以上経ってるのですね、素晴らしい。

Developers Summit

僕も一応Developerのはしくれではあるんですが、今回は技術系のセッションではなく、井庭崇先生の「プレゼンテーション・パターン・ワークショップ」というセッションに参加するのが目的でした。このワークショップは、井庭さんが作成された「プレゼンテーション・パターン」というものを使って参加者同士で対話を行い、お互いの経験を共有する、というものです。僕はこういったワークショップの存在は知っていたのですが、是非自分でも体験してみたいと思い、今回参加することにしました。

プレゼンテーション・パターンというのは、創造的なプレゼンテーションをするためのコツやポイントを「パターン・ランゲージ」という形でまとめたものです。ここでパターン・ランゲージそのものの説明をしだすと長くなりそうなので別の機会に譲りますが、簡単に言えばどうすればただ伝えるだけではなく、聴いた人が創造的になれるようなプレゼンテーションをすることができるのか、というコツ(パターン)が34個書かれたものです。書籍も出てます!

このワークショップは、次のような流れで行われます。

  • プレゼンテーション・パターンの中から、自分が経験したことがあるものをチェック。具体的な体験談を思い浮かべる。
  • 次に、自分が経験したことがないパターンの中から、取り入れてみたい!と思うものを選ぶ。
  • ワークショップが始まったらひたすら知らない人に話しかけて、自分がこれから取り入れたいパターンを既に体験している人から体験談を聞く。
  • 逆に、相手が取り入れたいと思っているパターンを自分が体験していたら、その話を相手にしてあげる。
  • これを繰り返す。

非常にシンプルなんですが、とてもよくできた仕組みだと思いました。何の媒体もなしにただ「お互いの体験を話し合ってください!」だとなかなか漠然として話しづらいですし、どうしても自分の体験なんて大したことないと思いがちです。そこに「パターン」という媒体があることで、見知らぬ人とでも共通の話題があるし、何より相手が自分の体験を聞きたがってくれるので、とても話しやすい雰囲気になります。

パターンを介して自分の経験を掘り起こし、語り合うことができるのは、パターン・ランゲージが「認知のメガネ」「コミュニケーションの語彙」として働くからなのですが、実際にやってみて難しかったのは「認知のメガネ」の方、つまり自分の経験を掘り起こす作業です。

人はモノを認識する際に概念というフィルタを通して見ているため、特に形のないモノ、例えば経験などを何の力も借りずに認識するのはなかなか難しいですね。でも、そこにパターンという形で概念と言葉を与えてあげることで、認識しやすくする、というのが「認知のメガネ」ということなのですが、認知のメガネをかけたらすぐに体験が掘り起こせるようになるか、というとなかなかそういうわけにもいかなそうです。そのメガネを通してモノを見る訓練をある程度する必要がありそうですね。普段このワークショップをやる際は、参加者が事前にパターンを読んできて、その上で語り合うという形をとることが多いそうなのですが、なるほど納得でした。

一方で、言葉を与える、つまりコミュニケーションの語彙としての機能は、即効性がありました。漠然としたものをお互いに話し合うとなかなか地に足のついた議論にならないことが多いのですが、コツのようなものが言葉として定義してあることで、格段に話しやすくなることを実感することができました。

今回のワークショップはそれほど時間もなかったので、数人の方とお話させていただいているうちにすぐ終わってしまったのですが、かなり楽しかったです!井庭先生いわく、大人数でやっても、少人数でじっくりやっても盛り上がるということなので、早速自社でも取り入れてみようと思いました。

講演に使われた井庭先生のスライドがslideshareで公開されていたので、リンクしておきます。興味のある方は、見てみてくださいね!

ダイアログ・イン・ザ・ダークに行ってきました

今日は、読書ネタではなく、「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」というワークショップに行ってきた感想を書きたいと思います。DIALOG IN THE DARK、暗闇の中での対話という意味ですが、皆さんは聞いた事があるでしょうか?

パンフレットによると、このワークショップは1989年にドイツで生まれ、世界全体で600万人以上の人が体験したそうです。日本では1999年以降、約85,000人の人が参加しています。どういう内容のものかについては、やはりパンフレットの概要説明がわかりやすいかと思いますので引用します。

参加者は完全に光を遮断した空間の中へ、何人かとグループを組んで入り、暗闇のエキスパートであるアテンド(視覚障がい者)のサポートのもと、中を探検し、様々なシーンを体験していきます。
その過程で視覚以外の感覚の可能性と心地よさを思い出し、そしてコミュニケーションの大切さ、あたたかさを再確認することになります。

僕が参加したのは、通常のワークショップではなく、ビジネスワークショップというものです。通常のワークショップは「楽しむ」ことを第一の目的として設計されていますが、ビジネス版では、体験を通して何を得たのか、という振り返りのワークがとても重要とされています。

さて、これから行かれる方のために詳細な内容については書きませんが、感想やこの体験を通して自分が得た学びについて書いてみたいと思います。

まず特筆すべきは、「完全な暗闇」という体験が、目の見える自分にとっては圧倒的だったことです。思い返してみれば、全く光のない場所であれだけの時間を過ごした経験はありません。目を開いていてもつぶっていても全く同じ、何も見えないのです。視覚を失った方が見ている世界とはこういうものか、と実感できましたし、その中を自由自在に動き回っていたアテンドの方が、とても頼もしく思えました。

さて、この暗闇がもたらしたもの。まず最初に気づいたのは、視覚以外の感覚が非常に研ぎ澄まされたように思えたこと。臭いや味覚はとても敏感に感じましたし、触覚・聴覚に至っては命綱です。杖から伝わってくる感覚、手の感覚や仲間同士で掛け合う声、明るいところでは当たり前と思っていることが当たり前ではなくなるため、安心や感謝といった気持がわき起こってきます。

次は心の壁についてです。声を掛け合わざるを得ない状況であるというのも勿論ありますが、不思議と暗闇の中では素直に発言したり、手をつないだりできました。僕は割とシャイな方だと思うのですが、どんどん発言している自分に気付いてびっくりしました。普段視覚から得ている情報、例えば相手の容姿、社会的地位、態度や醸し出す雰囲気などが如何に自分の言動に影響を与えているかがよくわかりました。

それからコミュニケーションの重要性についても学びました。コミュニケーションは信頼の上に成り立つと思いますが、暗闇の中ではそれが特に際立ちます。仲間を信頼しないと一歩たりとも前に進めないからです。そして信頼があっても、お互いに見えない中でのコミュニケーションはとても難しいです。「それ」「あれ」「こういう」などといった曖昧な表現は伝わりません。どうすれば相手に伝わるかという思いやり、これがコミュニケーションの基本だという当たり前のことに気付かされました。

同時に、聞く方の姿勢も重要です。相手が伝えようとしていることを如何に真剣に聞き、理解する努力をするか。これも思いやりです。この双方向の思いやりがあってこそ、真のコミュニケーションが成り立つのだと思います。

これはワーク中にとある男性とお話した内容なのですが、程度の差こそあれ、日常生活でも暗闇の中と同じことが起こっていると気付きました。それは、各人が持っている情報の質や量には差があるということです。例えば、上司が仕事を部下に与える時、断片を伝えただけでうまくいくでしょうか?情報の不足は、不安をもたらします。その気持ちがよくわかったので、このワークを通して何か一つキーワードを挙げるとしたら、という問いに対して僕は「共有」と答えました。

暗闇から出た後も、参加者の方の感想を色々聞きましたが、感じ方は本当に人それぞれでした。でも、皆さん確実に何か大きな気付きを得ていたように思います。暗闇がもたらす非日常感。とても得るものは大きかったですし、何よりもとても楽しめました。興味がある方は是非参加してみては如何でしょうか。