自分の秘密 才能を自分で見つける方法

今日は、北端康良 著の「自分の秘密 才能を自分で見つける方法」という本をご紹介したいと思います。著者の肩書きは、才能心理学協会 理事長。そんな学問分野や団体があるのを始めて知りましたが、タイトルに惹かれて購入してみました。

世の中には偉人と呼ばれるすごい人が沢山います。彼らは皆、何かしらの才能に恵まれた人たちのように見えます。本書は、何故彼らはそのような才能を手に入れることができたのか、という問いかけで始まります。

才能が継続によって培われるものだとか、その継続を支えているのは切望感や感情である、というのはよく言われますね。著者は、その切望感や感情を生み出している秘密を明らかにすべく、様々な偉人の人生を検証していきます。このパートが「プロローグ」になっているのですが、分量的には全体の半分近くを占めており、検証にとても力を入れていることが読み取れます。数人の偉人の人生が著者の解釈で語られており、お話として読むにも面白いですよ。

長いプロローグが終わると、いよいよ「才能の秘密」を解き明かす段階に入っていきます。そこには、5つの秘密があると言います。ここでは、特に面白いと思った最初の3つをご紹介したいと思います。

  1. 才能の源泉
  2. 能力の源泉
  3. 才能のベクトル
  4. 時代の声
  5. 才能の闇

まず一つ目の秘密、才能の源泉。ここで語られるのは、「才能の源泉は、人生のルーツにある」ということです。この人生のルーツという言葉、なかなか答えるのが難しい質問ですよね。それに対して著者は、なかなか面白い切り口を提供してくれています。

世の中の人間には、二種類の人間しかいない。
二種類の人間とは、「ある人」と「ない人」です。

人生に「あったもの」もしくは「なかったもの」がその人に大きな影響を与え、才能の源泉になっているということのようです。何が「あった」のか、または「なかった」のかは人によって違いますが、それらの個人的な体験を通して感じた感情が、人を突き動かす原動力になる。またそれは、身近な体験であればあるほど、強烈であればあるほど、大きな原動力になります。

例えばとても身体が弱かったことが強烈な体験として焼きついている人は、将来自分と同じような境遇の人を助けたい、という志を持つかも知れませんよね。この例では、健康な身体が「なかった」と考えることができます。一方、小さい頃から父親に憧れて育った子供が、父のようになりたいと思ったとします。これは、尊敬すべき父親が「いた(あった)」と考えられます。

「ある」体験や「ない」体験、皆どちらの体験もしているはずですが、その人にとって最もインパクトを与えた体験がどちらかによって才能の源泉は異なる、というのが大きなポイントだと思います。才能の源泉が違えば、以下のような違いが出ると言うのも面白いですね。

「ある人」は維持し、広げる人で、「ない人」は変革し、創り出す人。

続いて二つ目の秘密、「能力の源泉」についてです。第一の秘密で扱った切望感を満たすためにはそれなりの「能力」が必要ですよね。著者は「能力」を「能力の源泉 × 技術」、「能力の源泉」を「無意識的に繰り返している感情・思考・行動のパターン」とそれぞれ定義しています。

これはつまり、能力とは単純な技術のことではなく、感情・思考・行動のパターン(能力の源泉)と技術が結びついたもの、ということを言っているのだと思います。さて、この定義で考えれば、少なくとも「能力の源泉」がない人など存在しません。感情・思考・行動に一切関わらずに生きてきた人などいませんからね。

では、感情・思考・行動のパターンとは何でしょうか?それは、普段から何気なく行っている感情→思考→行動という一連の流れの中にある一貫性のことです。ある出来事に対して何かしらの感情を持ち、それを自分の中でどのように考え、その結果どのような行動を起こしてきたでしょうか。そのようなパターンが度々繰り返されてこなかったでしょうか。そういったパターンは繰り返されることでどんどん強化され、自分だけの強みになっていきます。

著者はこのパターンと具体的な技術が結びついたもの、それがその人特有の能力だと言っているのだと思います。能力の定義の中に感情や思考の要素が入ってくる、というのはなかなか面白いですね。コンピテンシー(優れた業績を達成している人の基本的な特徴)理論でも、単純な技術は比較的習得が容易とされていますが、要は技術だけで優位性を保つのは難しい、ということなのでしょう。

三つ目は才能のベクトル。これは言い換えればビジョンのことです。そのヒントは、

「誰を幸せにしたいのか?」
「その人のために、どんな理想の未来を描き、目指すのか?」

という問いに答えが隠されていると語られています。そして、「才能のベクトル」の章の最後には以下のように書かれています。

あなたは、誰を幸せにしたいでしょうか?
かつての自分のような人でしょうか。両親や兄弟姉妹でしょうか。友人でしょうか。
その人を、どんな世界に連れて行きたいでしょうか?
「これが満たされれば、みんな幸せになれた」と、あなたが思っていた世界。
その場所は、かつてあなたが「愛する人を必ず連れて行く」と胸に誓った約束の地。
ビジョンとは、「約束の地」のことなのです。

僕はこのフレーズがとても気に入っています。ビジョンとは単なる未来予想図ではなく、想像しただけで心躍るような、感情に訴えかけるような、そんな絵である必要があると、僕も思うからです。

5つの秘密のうち3つをご紹介しましたが、如何だったでしょうか?既にご紹介した3つの秘密についてもっと詳しく知りたい!という方や、残りの2つも気になる、という方は是非本書を手に取ってみてくださいね。才能というテーマについてとても深く考えられている良書だと思います。

※ 本書の最後には、「最後の秘密」として、実はもう一つ秘密があることが書かれています。が、内容は明かされておらず、読者に問いかける形になっています。僕も自分なりに答えを考えて、思いついたら後日改めて書きたいと思います。

「ありのまま」という才能―性格に隠された成功のヒント

今日は、ロブ・ヤン 著の「『ありのまま』という才能―性格に隠された成功のヒント」という本をご紹介します。著者略歴によると、著者は心理学の博士で、成功の心理学の権威として広く知られている人とのことです。原題は「Personality: How to Unleash Your Hidden Strengths」です。う~ん、大人の事情なのかも知れないですが、副題はそのままの方がよかったような。

この本では、人の性格を7つの特性に分けて考えます。以下がその7つなのですが、こうして眺めているだけでも自分はどちら寄りかな、というのがある程度判断できると思います。この本では、それぞれに対してチェックリストがついていて、質問に答えることで自分がどちら寄りなのかを判断することができます。

  1. 好奇心
    結果を出す「現実派」 vs 先を追い求める「ロマンチスト」
  2. ストレス抵抗力
    プレッシャーに弱い「心配性」 vs ものごとに動じない「楽天家」
  3. 社交性
    ひとりが好きな「孤高の人」 vs 大勢が好きな「社交の人」
  4. 自律性
    行動の前に考える「慎重派」 vs 衝動のままに生きる「奔放派」
  5. 共感力
    ズバリ本音の「率直派」 vs 相手に合わせる「気配り派」
  6. 学習意欲
    学ぶことが命「知識派」 vs 行動で学ぶ「実践派」
  7. 上昇志向
    現状に満足の「のんびり屋」 vs 意欲に満ちた「野心家」

以前ご紹介したビッグ・ファイブによく似ていますね。これらは特性なので、どちらかのタイプに必ず当てはまるわけではなく、どちらの傾向がより強いか、ということになります。場合によっては、どちらの要素も持ち合わせている、ということもあります。また、どちらかが良くてどちらが悪い、というものではなく、それぞれ長所と短所があります。

それぞれの診断結果の後には、タイプ毎にアドバイスが書いてあるのですが、これがとても参考になります。個性は個性として受け止め、どういうことに気をつければいいか、という観点でヒントが書いてあるので、受け止めやすいと思います。また、自分とは逆のタイプの説明を読むのも発見があって面白いですよ。

この本には「はじめに」の部分にとても大事なことが書いてあります。

わたしたちは、性格的な嗜好をある程度もって生まれてきます。科学者によると、性格の半分までは両親から受け継いだもの、つまり遺伝子レベルのもののようです。(中略)

けれども、遺伝子はストーリーの一部分にすぎません。遺伝子はあなたの「ルール」の原型、あるいはあなたという「台本」の最初の原稿をつくりますが、そのあとに受ける教育がその原稿に手を加えるのです。(中略)

大人になったわたしたちにとって、性格のもととなる台本がすべて役立つとはかぎりません。ときには、自分の望みを妨げるような行動を、性格が指示するからです。
ならば、台本は書きなおすことができるのでしょうか?
はい、書きなおすことができます。しかも、あなたはすでにそれを日々行っているのですよ。

この「人は変われる」というメッセージは、とても勇気づけられますね。

それと、この本のいいところは、診断では終わらないところです。最終章には「アクションプラン」という章があり、これから何をするか、を考えるステップが用意されています。行動しなければ何も変わらない、ということなのでしょうね。

さて、最後に。これは僕の個人的な意見ですが、この手の性格診断は活用方法がとても重要だと思います。結果を自分なりに消化して、今後の自分の生活・行動に活かしていく分にはいいと思うのですが、場合によっては、真実かどうかもわからない欠点や短所を「認知」し、「強化」してしまう可能性があると思っています。

性格診断は傾向を出すには良いと思いますが、それだけで人間の性格を表せるほど僕たちは単純ではありません。状況や精神状態等で大きく変わるのですから。診断結果は参考程度にし、それを踏まえて自分はどんな人間なのか、と自分なりに考えてみる必要があるのだと思います。

「変わりたい」と思っている方や、自分を知るためのきっかけが欲しい方にオススメの一冊です。機会があったら是非読んでみてくださいね!

MI:個性を生かす多重知能の理論

今日ご紹介する本は、ハワード・ガードナー 著の「MI:個性を生かす多重知能の理論」です。過去のエントリでも「自分らしさ」、つまり個性のお話が出てきましたが、今日は個性を心理学・教育という観点から考えてみたいと思います。

この本はMI理論(Multiple Intelligences:多重知能)という理論を解説した本で、なかなか読みごたえのある本でした。というか、僕はかなり気合を入れないと読めませんでした。が、とてもおもしろいことが書いてあるので、ざっくりと僕なりに纏めてみます。

IQという言葉は有名ですよね。これは知能指数のことで、知能を測定する尺度です。IQが高い人は、知能が高いとされてきました。他にも、EQ(心の知能指数)、SQ(社会性の知能指数)等が一時期とても話題になりました。

本書の著者は、知能は一つではないと言います。

多くの心理学者が持っていて、われわれの言い回しのなかにもしっかり定着している信念、知能は単一の能力であり、全面的に「賢い」か「愚か」のどちらかである、という信念に挑戦したのである。

では、どんな知能が存在するのか。現時点では8つあります。「現時点で」というのは、まだ見つかっていない知能が今後見つかる可能性があるからだそうです。その8つを下記に紹介します。

  1. 言語的知能
    言葉に対する感受性、言語を学ぶ能力、言語を用いる能力
  2. 論理数学的知能
    問題を論理的・科学的に分析・究明したり、数学的操作をする能力
  3. 音楽的知能
    音楽の演奏や作曲、鑑賞のスキル
  4. 身体運動的知能
    体全体や身体部位を使う能力
  5. 空間的知能
    空間を認識する能力や、パターンについての能力(※)
    ※ 画家や彫刻家、建築家に重要な能力
  6. 対人的知能
    他人の意図や動機づけ、欲求を理解して他人とうまくやっていく能力
  7. 内省的知能
    自分自身を理解する能力
  8. 博物的知能
    様々なものを見分け、区別したり分類したりする能力

他にも候補はあるそうですが、現段階ではこれだけです。「知能」と見なすための条件も本書には記載してあるので、興味のある方は読んでみてください。

さて、これが一体何なのか?まず、人間にはこれだけの数の知能(能力、才能)が存在していて、それぞれの知能は、個人の遺伝的資質と環境によって生じるということ。そして、私たちの知能の組み合わせはそれぞれ独自である、ということ。つまり、この組み合わせが個性になるのでしょうね。

こういう話を聞くと、自分にどの知能がどれだけあるのか知りたくなりますが、それはなかなか難しそうです。これら全ての能力を簡単に測定することができないからです。また、評価できたとしても、この人は~が苦手だ、などのラベル付けをしてしまうリスクも指摘しています。

では、この理論をどんなことに活かせるのでしょうか。本書では、教育現場や企業などでMI理論をどう活かせるかが紹介されています。例えば教育。現在主流の教育方法は画一的な教育です。つまり、全ての個人は同じように扱われるべきだ、という考え方です。しかし、一旦個性を認めると、これは公平なようで公平ではありません。これを解決する方法として、「個人ごとに設計された教育」の可能性を示唆しています。

また、企業でも同じようなことが言えます。従業員には個性があり、部署・役職によって求められる能力も違う。であれば、従業員それぞれの個性をきちんと把握し、能力をどう活かすか、どう伸ばすか考えることは有益なはずです。

なんとなく言いたいことは伝わったでしょうか。もしもっと掘り下げて読んでみたい、という方は是非読んでみてください。

さあ、才能(じぶん)に目覚めよう

本日ご紹介するのは、マーカス・バッキンガム & ドナルド・O・クリフトン 著の「さあ、才能(じぶん)に目覚めよう―あなたの5つの強みを見出し、活かす」です。

この本は自分の強みを見つけ、活かすためにはどうすればいいのか、というテーマについて書かれた本です。強みとは「常に完璧に近い成果を生み出す能力」であり、才能・知識・技術が合わさって生まれれるもの、とこの本では定義しています。その中でも大切なのは才能なのだと言います。知識や技術は後から習得可能ですが、才能は新たに作り出すことはできません。

能力の得意・不得意は脳神経細胞の結びつきの強さによって決まるのだそうです。3歳までの間は神経細胞が次々に結びつき、広範囲にわたる回路を作っていきます。しかし面白い事に、それ以降は回路を広げるのではなく捨てる方向に成長が進み、16歳になる頃には3歳の時の半分程度になります。これは、3歳までの間に遺伝と幼児期の体験に基づいて強化される回路が選別されるためなのだそうです。

つまり脳は効率の良い回路を選んで、それを強化することで成長するシステムになっているということです。それが上手くできずに必要以上の回路が生き残ってしまうと、脳は成人レベルに達しないのだそうです。さて、これが才能の正体だとすると、才能に乏しい分野(弱い回路)で頑張るより、才能がある分野(強い回路)を伸ばした方がいいような気がしてきませんか?

じゃあ、自分の才能は何なのか?気になりますよね。この本では、ストレングス・ファインダーというオンラインのツールを使って自分の才能を見つける手助けをしてくれます。この本を買うとストレングス・ファインダーにアクセスするためのIDが付いてくるので、それを使ってオンライン上で診断を行うと、自分の才能が明らかになります。

このツールは200万人に対して行ったインタビューの結果に基づいて作成されており、本書で定義された34の才能の中から、自分の才能上位5つを選び出してくれます。

参考までに僕の結果は

  • 学習欲
  • 自我
  • 個別化
  • 目標志向
  • 規律性

でした。もちろん、それぞれに説明が付いてきますが、長くなるので割愛します。僕は、どの内容にも納得できましたよ。

ちなみに「才能」というと、やりたいことを制限されているようなイメージを感じる方がいるかも知れません。でも、僕は逆だと思います。やりたいことが決まっているなら、自分の才能をその分野でどう活かせるのか、そういう発想で考えてみては如何でしょうか。

自分の強みは何?と言われても、なかなか客観的に判断するのが難しいもの。こういった本やツールを活用して自分の強みを再認識するのもいいかも知れません。興味のある方は是非やってみてください。

最後に注意点を。ストレングス・ファインダーに付いているIDの使用は一度限りなので、中古の本を買うと肝心のテストができない可能性があります。そうなるとこの本は全くといっていいほど意味をなさないので、購入される方は新品を買われることをおすすめします。