コンセプトのつくりかた

今日は、玉樹真一郎 著の『コンセプトのつくりかた 「つくる」を考える方法』という本をご紹介したいと思います。ここ最近は読書はしているものの、訳あって心理学やら神経科学やらの小難しい専門書をひたすら読み漁っていました。そんな事をしているとかなり疲弊してくるので、ちょっと気分を変えて違うジャンルの本を手に取ってみました。読んでみると個人的にかなり面白かったので、是非共有したいと思います。

この著者は、大ヒットした任天堂のゲーム機「Wii」の元企画担当者が書いた本です。内容はタイトルの通りシンプルで、どうやってコンセプトをつくるかについて書かれています。コンセプトとは何か?ということについて著者は「まえがきのまえ」というページで以下の様に述べています。

広告やコンサルティング業界の人が振りかざす、小難しい道具?
何やらクリエイターに必要なアイデアとか発想とか?
…実は違います。
私たち誰もが、何かをするとき、生み出すときに最初に考えること。
それが「コンセプト」です。

何やらモヤっとしていて結局何が言いたいのかわからないでしょうか?実際、著者はこの「コンセプト」という言葉に色々な意味や思いを込めて使っています。何かを進めていく際に立ち返る場所、という意味でも使っていますし、世界を良くする方法、また自分と世界をつなぐもの、というように。後で僕なりの解釈はご紹介しますが、著者の真意は、是非実際に本書を読んで理解していただきたいと思います。

では、この本を読んで面白いと思ったこと、参考になったことをご紹介していきたいと思います。まず最初は、何と言っても極めて具体的にコンセプトの作り方を説明してくれている点だと思います。冷静に捉えれば、企画・アイデア発想法、特にブレインストーミングの手法をわかりやすく説明しているに過ぎないのかも知れませんが、僕が「参考になった」と感じたのは以下の点からです。

ブレインストーミング、これはアイデア出しをする時などに行う会議の手法なのですが、簡単に言えばとにかく制約を設けずに次々と自由にアイデアを出しまくる方法のことです。これを発散と言います。しかし、最終的にはその発散したアイデアを纏めないと収拾がつきませんので、もう出尽くしたな、と思ったら次はそれを収束させていきます。

僕は個人的に、ブレインストーミングの難しさは発散ではなく、収束にあると思っています。僕が不勉強なせいもあるでしょうが、今まで読んだ本の中で、ここまで収束のやり方を具体的に説明してくれている本はありませんでした。従ってブレインストーミングをやったけど収集がつかないよ!という悩みをお持ちの方は、とても参考になると思います。

この本を読んで面白かったこと、参考になったことの二つ目。それはコンセプトの作り方を、実際に「Wii」のコンセプトを作った時の例を挙げて説明してくれているところです。Wiiは家庭用ゲーム機の裾野を広げたと言っていいと思いますが、その製品のコンセプトがどのようにして作られたのか、それを追体験できるのはとても面白いと思います。特にゲーマーの方は「なるほど、そうだったのか!」と思う瞬間があると思いますよ!

そして三点目。それは著者が「コンセプト」という言葉に込めた思いに触れられたことです。著者は、明らかに辞書的な意味を拡張して「コンセプト」という言葉を使っているのですが、それはもはや自分の情熱、使命、アイデンティティに関わるほど深いものだと思います。

まず最初に強調されるのは、世界を良くするための指針、という部分です。もちろん、営利団体が行う事業はその背後に利益を出さなくてはならない、という宿命があるのですが、それよりも、どうやったらもっと世界が良くなるか、という思いがコンセプトには込められるべきなんだということを強く感じました。

それから、その「良さ」というものが既存の良さではなく、未知の良さであるべきだということ。既に誰もが価値を認めているような「良さ」ではなく、世の中の人が「おお、こんな良さもあったのか」と思うような、そんな未知の良さを世界に提案するために、著者の言うような「コンセプト」が不可欠なのだと思います。もちろん、既存の良さを追求していくという戦略もあり得るのですが、それをするには莫大なリソースが必要だよ、という現実的な視点も混ざっています。

そんなコンセプトを生み出すためには、方法論だけでなく自分の本質や根源から様々な思いを絞り出すことが重要です。この本を読んでいて、著者の言うコンセプト作りは、自分のアイデンティティを構築していく作業にとてもよく似ているなと思いました。

さて、ここでは大きく3つのポイントを挙げてみましたが、他にも参考になるポイントが沢山あると思います。文章も読みやすく、ゲームになぞらえた表現なども出てくるので、さらっと読めてしまいます。何か新しく行動を起こしてやろう、と思っている方には是非読んで頂きたいオススメの一冊です。勇気をもらえますよ。

ダイアログ・イン・ザ・ダークに行ってきました

今日は、読書ネタではなく、「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」というワークショップに行ってきた感想を書きたいと思います。DIALOG IN THE DARK、暗闇の中での対話という意味ですが、皆さんは聞いた事があるでしょうか?

パンフレットによると、このワークショップは1989年にドイツで生まれ、世界全体で600万人以上の人が体験したそうです。日本では1999年以降、約85,000人の人が参加しています。どういう内容のものかについては、やはりパンフレットの概要説明がわかりやすいかと思いますので引用します。

参加者は完全に光を遮断した空間の中へ、何人かとグループを組んで入り、暗闇のエキスパートであるアテンド(視覚障がい者)のサポートのもと、中を探検し、様々なシーンを体験していきます。
その過程で視覚以外の感覚の可能性と心地よさを思い出し、そしてコミュニケーションの大切さ、あたたかさを再確認することになります。

僕が参加したのは、通常のワークショップではなく、ビジネスワークショップというものです。通常のワークショップは「楽しむ」ことを第一の目的として設計されていますが、ビジネス版では、体験を通して何を得たのか、という振り返りのワークがとても重要とされています。

さて、これから行かれる方のために詳細な内容については書きませんが、感想やこの体験を通して自分が得た学びについて書いてみたいと思います。

まず特筆すべきは、「完全な暗闇」という体験が、目の見える自分にとっては圧倒的だったことです。思い返してみれば、全く光のない場所であれだけの時間を過ごした経験はありません。目を開いていてもつぶっていても全く同じ、何も見えないのです。視覚を失った方が見ている世界とはこういうものか、と実感できましたし、その中を自由自在に動き回っていたアテンドの方が、とても頼もしく思えました。

さて、この暗闇がもたらしたもの。まず最初に気づいたのは、視覚以外の感覚が非常に研ぎ澄まされたように思えたこと。臭いや味覚はとても敏感に感じましたし、触覚・聴覚に至っては命綱です。杖から伝わってくる感覚、手の感覚や仲間同士で掛け合う声、明るいところでは当たり前と思っていることが当たり前ではなくなるため、安心や感謝といった気持がわき起こってきます。

次は心の壁についてです。声を掛け合わざるを得ない状況であるというのも勿論ありますが、不思議と暗闇の中では素直に発言したり、手をつないだりできました。僕は割とシャイな方だと思うのですが、どんどん発言している自分に気付いてびっくりしました。普段視覚から得ている情報、例えば相手の容姿、社会的地位、態度や醸し出す雰囲気などが如何に自分の言動に影響を与えているかがよくわかりました。

それからコミュニケーションの重要性についても学びました。コミュニケーションは信頼の上に成り立つと思いますが、暗闇の中ではそれが特に際立ちます。仲間を信頼しないと一歩たりとも前に進めないからです。そして信頼があっても、お互いに見えない中でのコミュニケーションはとても難しいです。「それ」「あれ」「こういう」などといった曖昧な表現は伝わりません。どうすれば相手に伝わるかという思いやり、これがコミュニケーションの基本だという当たり前のことに気付かされました。

同時に、聞く方の姿勢も重要です。相手が伝えようとしていることを如何に真剣に聞き、理解する努力をするか。これも思いやりです。この双方向の思いやりがあってこそ、真のコミュニケーションが成り立つのだと思います。

これはワーク中にとある男性とお話した内容なのですが、程度の差こそあれ、日常生活でも暗闇の中と同じことが起こっていると気付きました。それは、各人が持っている情報の質や量には差があるということです。例えば、上司が仕事を部下に与える時、断片を伝えただけでうまくいくでしょうか?情報の不足は、不安をもたらします。その気持ちがよくわかったので、このワークを通して何か一つキーワードを挙げるとしたら、という問いに対して僕は「共有」と答えました。

暗闇から出た後も、参加者の方の感想を色々聞きましたが、感じ方は本当に人それぞれでした。でも、皆さん確実に何か大きな気付きを得ていたように思います。暗闇がもたらす非日常感。とても得るものは大きかったですし、何よりもとても楽しめました。興味がある方は是非参加してみては如何でしょうか。

シンクロニシティ 未来をつくるリーダーシップ

今日は、ジョセフ・ジャウォースキー 著の「シンクロニシティ 未来をつくるリーダーシップ」という本をご紹介したいと思います。この本は、いわゆる“積ん読”状態になっていた本でしたが、ふと目に止まったので読んでみました。

皆さんは、シンクロニシティという単語をご存じでしょうか?日本語では共時性と言います。「二つ以上の出来事が重要な意味を持って同時に起こる事。そこには単なるチャンスの到来以外の何かが関わっている」と定義されており、心理学で非常に有名なC・G・ユングが提唱しました。このシンクロニシティについては、監修者解説の中で以下のように説明されています。

ある事象と別の事象が、さらにまた別の事象が、時間的に近接して、つぎつぎとつながりを持って生まれるような現象に出会い、それらの事象間に必ずしも因果で説明できる部分がなければ、それはシンクロニシティと言っていいだろう。

ちょっと不思議な感覚なのですが、皆さんもそんな経験はないでしょうか?何故だかはよくわからないけど、何となく意味やつながりを持つと思われるようなことが身の回りで次々と起きて、不思議な感覚を味わった経験。具体的な内容はあまり思い出せませんが、僕はその感覚を度々味わっているような気がします。

この本の内容は実話です。著者の身に実際に起こった「シンクロニシティ」が物語として語られていて、とても面白いです。物語なのでとても読みやすかったですし、とても感動しました。あまりにも面白かったので明け方までかかって一気に読んでしまいました。

さて、物語の中で語られるシンクロニシティを「不思議な偶然」として片づけてしまっては意味がありません。僕は、物語を読む中で、シンクロニシティに関して主に二つの教訓を得ました。

一つ目は、やはり人は自分が心の底からやりたいこと、やる必要があると思えることをやるべきだということです。欲求を突き詰めていくと、自分の利益と他人の利益が合致するポイントが必ずあります。それに対してコミットした時、まさに何かに導かれるように様々な偶然が起こって手助けしてくれる、それがこの本で本当に言いたかったシンクロニシティなのだと思います。本の中では、方向は決めるが目的地は決めない、何故なら流れに身を任せていれば導いてくれる、というようなことが書いてありましたが、この言葉の意味するところがやっとわかったような気がします。

もう一つは、著者に強い意思だけでなく、積極的で行動力があったこと。強い意思があれば、強く信じていれば、それだけでどんどんいいことが起こるわけではありません。自ら積極的に行動を起こし、他人を巻き込み、その連鎖が続くことで偶然としか思えないような結果が生まれました。「強く願えば思いは叶う」という言葉がありますが、それは暗に「強く願えばこそ、それにまつわるあらゆる行動をいとわない」という意味をも含んでいるのだと思います。

ところで、このシンクロニシティと副題の「リーダーシップ」とはどう関係があるのでしょう?僕も本を読み始めたときに疑問に思いました。読んでみるとわかりますが、この二つは直接的に関係はありません。著者はあるきっかけから、世の中を変える次世代のリーダーを育てなければ、という思いに駆られます。それを実現すべく著者自身もリーダーシップを発揮していくのですが、そうして行動をしていくうちにシンクロニシティと言うべき出来事が次々と起こっていきます。

シンクロニシティについては上記で少し触れましたが、著者が言う「リーダーシップ」もまた、とても示唆に富んだ内容になっています。著者が言うリーダーシップとは、「サーバント・リーダーシップ」というものです。これについてとあるエッセイを引用し、このように述べています。

グリーンリーフはこう述べている。リーダーシップの真髄は、互いに奉仕しあいたいという願望、自分たちを超えたものに、より高い目標に奉仕したいと言う願望である、と。伝統的な私たちの考え方では、「サーバント・リーダーシップ」というのは矛盾した表現であるように思われる。しかし、さまざまなつながり合いから成り立っている世界においては、関連性こそがこの世界を秩序だてる原理であり、その表現はきわめて理にかなっている。

サーバントとは奉仕者という意味です。まさに、僕たちが普段思っているリーダーとは逆のイメージですね。リーダーに仕えるのがサーバントなのでは?と思ってしまいます。しかし、そうではなく、チームのメンバーに「奉仕」し、世の中に「奉仕」することがリーダーシップである、ということのようです。

リーダーに関してはこうも言っています。リーダーシップとは、「すべきこと」ではなく「あり方」なのだと。リーダーとは何かを考える時、「リーダーとはこういう行いをすべき」という行動面からから考えるのではなく、「われわれは共同で、何を創り出すことができるか」という姿勢を持つ、高い目標に奉仕できるマインドセットこそ、リーダーシップなのでしょう。こう捉えれば、リーダーシップは特定の人しか持っていない資質ではなく、考え方を変えることによって誰もが持ち得る考え方だということが理解できます。

本書は、物語の形式をとってはいますが、単なる事実ではなくそれが意味するところも十分に語られており、とにかく理解がしやすいです。ただ、理屈ではなく感覚で理解する必要がある部分もあるので、それはこれからまた読み返し、考え、そして行動を通して身につけていきたいと思っています。

本書の内容は、以前ご紹介した「U理論」とも深い関連があります。本書の内容をさらに深め、実践的なセオリーにしたのがU理論とのことですが、U理論を理解するためのヒントとしてもとても役に立ちました。

リーダーシップ、シンクロニシティ、そして物語。一冊で三度おいしい本です。この本を読み終わった後、自分もいよいよ夢の実現に向けて動き出さなければ、という決意に近い思いに至りました。夢がある方、世の中を変えたいと思っている方にはお奨めですよ!監修者解説にも、このような人に読んでほしい、と書かれていました。

  • 夢を探している人
  • 夢を再チェックすべき中年の人
  • 「リーダーシップの旅」が自分の夢とかかわると思っている人
  • 人々とのつながりを大切にしている(もっとそうしたいと思っている)人
  • 「自己実現」や「個性化」は、理解するのも実践するのも難しいと思っている人

これに少しでも該当すると思った方は、是非読んでみてくださいね!

その幸運は偶然ではないんです!

今日は、J・D・クランボルツ & A・S・レヴィン 著の「その幸運は偶然ではないんです! 夢の仕事をつかむ心の練習問題」という本をご紹介します。この本の著者の一人であるJ・D・クランボルツという人は、スタンフォード大学の教育学・心理学教授で、キャリアカウンセリング理論の先駆者だそうです。

この本のタイトルを見たときに、真っ先に「セレンディピティ」という言葉が思い浮かびました。皆さんは「セレンディピティ」という言葉はご存知でしょうか?「セレンディップと三人の王子」という童話に因んで作られた言葉ですが、「偶然に幸運をつかむ能力」という意味だとされています。「能力」というからには、それを身につけることで幸運を掴める、あるいは掴みやすくすることができるのでしょうか?そこにとても興味があり、本書を手に取りました。

さて、本書の主張はまさにタイトルの通り、「幸運は偶然ではない」です。「はじめに」には以下のように記されています。

幸運やチャンス、予期せぬ出来事に関する本はたくさんありますが、この本はほかの本とは少し違います。私たちは「幸運は偶然ではない(Luck is No Accident.)」と考えているのです。
キャリアや人生を前に進めるような予想外の出来事が起きて、それが本物のチャンスに変わるときには、その人自身が重要な役割を果たしています。この本はキャリアについて書かれていますが、その内容は、人生のほかの場面、たとえば恋愛にも応用できるものだと私たちは考えています。

著者はキャリアカウンセラーですので、キャリア選択についての話題がほとんどですが、ここに書かれているようにこの本の内容はとても汎用的なもので、ありとあらゆることに応用が可能だと思います。

では、幸運は偶然ではない、とは一体どういうことなのでしょうか。必ず幸運を掴めるような決まったやり方があるのでしょうか?残念ながらそういうわけではありません。著者は、「人生には予測不可能な偶然の出来事が必ず起こるので、結果をコントロールすることはできない」とした上で、「行動次第では、その結果を望ましいものにする確立が高められる」ということが言いたいのです。

では、その行動とは、どのような行動なのでしょうか?この本の中には様々なアドバイスが含まれていますが、僕が重要だと思ったポイントを纏めてみました。

  1. 「想定外の出来事は必ず起こる」ということを理解しておく
    人生では、自分の想定していない出来事が沢山起こります。未来がどうなるかは誰にもわからないし、完全にコントロールすることはできません。全てが思い通り、という風にはなかなかいかないものだ、ということを理解しておきましょう。
    ただ、自分の行動や、物事に対する反応は自分でコントロールすることができますよね。実際には、これらが人生の方向性を決める重要な要因なのです。
  2. 想定外の出来事が起こった時の対処が重要
    想定外の出来事には、良いことも悪いこともあります。悪いことが起こった時、悲嘆にくれてふさぎ込む人もいますが、それをきっかけに建設的な行動を起こしてチャンスをつかむ人もいます。つまり、想定外の出来事が起こった時、どのように反応するかが重要なのです。逆に良いことが起こった時は、逃さずに掴み取りましょう!そのためには常にアンテナを張っておくことも重要だと思います。
  3. 積極的な行動で良い出来事を起こす
    想定外に良いことが起こった場合、それが単なる幸運や偶然とは言い切れません。大抵の場合、そうした出来事は連鎖して起こるためわかりにくいですが、本人の積極的な行動がそのような出来事を「起こして」いるケースも多々あると思います。想定外の出来事に対する反応、という受け身の姿勢だけでなく、自分から「起こす」という積極的な姿勢が重要ですね。
  4. 選択肢に対して常にオープンでいる
    著者は、「今後一切、自分のキャリアに関して意思決定をするな」と説きます。これは、複雑に変化する昨今の状況において、一つの選択にこだわり続けることは視野を狭くしてしまうということを言っています。つまり、固執することで他のより良い選択肢が見えなくなってしまうということですね。自分が見えていないだけで、実はもっともっと沢山の選択肢があるかも知れませんよ。
  5. 情熱は行動の前だけにあるのではなく、行動の結果として生まれることもある
    僕は今まで「情熱ありき」だと思っていました。が、自分の情熱がどこにあるのかわからない、と思っている人が悶々と考えていても何も始まらない、情熱は行動によって作られることもある、というこの意見はとても現実的で正しい意見だと思います。人には人それぞれの情熱があります。それを明確に認識できている人はいいですが、そうでない人はある程度方向性をつけたら先に行動を起こした方がいい、ということだと思います。
  6. 何もしなければ、何も起こらない
    未来はどうなるかは誰にもわからない、と書きましたが、例外があります。それは、何もしなければ確実に何も起こらない、ということです。つまり、何かを起こしたければ、リスクを取って行動すべきだということですね。例え失敗しても、次に何が起こるかはわかりませんし、そこから学べることもあるでしょう。失敗を恐れず、新しいことに挑戦しましょう。本当に恐ろしいのは、失敗することではなく、失敗を怖れて何もしないことなのですから。

この本には、普通の人たちがどんな行動によって幸運を掴むことができたか、というエピソードが沢山紹介されています。説明と合わせて実例を読むことで、さらに理解が深まると思います。各章の最後にはワークもついており、キャリアに悩んでいる方はもちろん、幸運を掴みたい方には是非おすすめの一冊です。是非読んでみてくださいね!

U理論

今日は、C・オットー・シャーマー 著の『U理論 過去や偏見にとらわれず、本当に必要な「変化」を生み出す技術』という本をご紹介したいと思います。最近の僕は「人が変わる仕組み」について知りたいと思っていて、この本の副題には興味をそそられたので読んでみました。

実際に読み始めるまで、どんな内容の本なのか全く把握していませんでしたが、これはなかなか強敵でした。内容が600ページ近いというのもさることながら、言葉では説明しにくい部分を文章で説明しようとしていて、かなり難解でした。一度読んだだけでは100%腑に落ちた感覚になるのは難しいですが、何らかの問題意識を抱えていて、世の中を変えたいと思っている人にとってはとても重要なことが書かれている気がします。

また読み返したいと思っていますが、とりあえず一度読み終わった段階でこのU理論というものが何なのかを僕なりにまとめてみたいと思います。

この本は、現代に生きる僕たちが抱えている諸問題(個人的なものも、社会的なものも含めて)はどんどん複雑性を増しており、今までのやり方で解決することは難しい、という問題提起から始まっています。今までのやり方とは、「過去から学ぶ」というやり方。つまり、過去から学んでいるだけでは、今僕たちが抱えている諸問題を解決することができないということです。そうではなく、僕たちは「未来から学ぶ」必要があるのだと著者は言います。その手法を体系化したのが本書で扱っているU理論ということになります。

さて、この「未来から学ぶ」という言葉。いきなり難解ですね。それが何かを結論づける前に、U理論のプロセスを簡単に辿って行きましょう。

僕たちは何かを解決しようとするとき、「過去に似たようなことがなかったか」という観点で考えることが多いですよね。その過去のケースが上手くいったのならば、今回もそれと同じ方法で解決できるのではないか、こう思います。或いは、そんな思考すら通さず、習慣的に対応することさえあります。しかし、今僕たちのまわりで起こっていることは、あまりに複雑で状況も刻々と変わっているため、このような「過去から学ぶ」やり方では通用しません。

この「過去から学ぶ」という行為を、この本では「ダウンローディング」と呼んでいます。既に確立されている解決策を、そのままダウンロードして適用する、というイメージなのでしょう。このダウンローディングを止めるというのが、U理論のスタート地点です。

ダウンローディングを止めるということは、起きている現象をステレオタイプとして捉えるのではなく、「観察する」ということです。「ゼロベース」という言葉にも似ていますが、要は先入観を捨てることが重要です。先入観を捨てることで、今まで見えていなかったものが次々と見えてくるようになります。

しかし、あるものを「観ている」という状態は、自分がその内部にいないことを意味しています。つまり、自分が「観ている」ものは、自分とは区別された何かであり、自分の外で起こっていること。当事者意識を感じられていないんですね。しかし、問題を解決するためには、自分がその問題を引き起こしている状況の一部であることを「感じ取る」必要があります。つまり、視野が自分という個人から全体へと移る、これが次のステップです。

さて、ここまで来てやっと、「未来から学ぶ」ための準備が整ったことになります。「感じ取る」の次のステップを「プレゼンシング」と言いますが、この言葉の意味は「出現しようとしている未来の可能性を認識すること」です。この解釈は特に捉えどころが難しいので、かなり自分の解釈が入っていますが、つまり以下のようなことだと思います。

今までのプロセスで、ステレオタイプ的なものの見方を止め、自分を当事者として認めました。しかし、既にダウンローディングは止めてしまっているので、過去の解決策をそのまま持ち込むことはできません。つまり、問題をどう解決するかを「自分の頭」で考えなくてはならないのです。これは言いかえれば、「どのような未来を描き」、「その未来に対して自分がやるべきことは何なのか」を明らかにすることでもあります。

「どのような未来を描き」、「その未来に対して自分がやるべきことは何なのか」。この問いに答える為には、自分は何者なのか、をきちんと認識している必要があります。自分のことをよくわからなければ、どんな未来になって欲しいか、それに対して自分に何ができるか、はわかりませんからね。つまりここで、「思い描く未来像」と「自己の本質」が深い部分で繋がることになります。だいぶデフォルメしていますが、これが「未来から学ぶ」ということだと僕は解釈しました。

この「プレゼンシング」以降は、実際に行動に移していくプロセスです。出現する未来の可能性を元に具体的な未来像を構築し(「結晶化」)、試行錯誤を繰り返し(「プロトタイピング」)、最終的に実行に移していく(「実践する」)。それぞれに論点はありますが、もっとも分かりにくく、かつ重要なのはやはり「プレゼンシング」の部分でしょう。

なかなかすんなり入ってきにくいですが、U理論の概要はこんな感じです。この本では、難しい言葉も沢山出てきますが、このU理論が様々な観点から繰り返し説明されているので、なんとか読み進めていくことができます。実例なども数多く紹介されているので理解の助けになってくれると思います。

付け加えるなら、全部で21章まであるうちの20章までは理論的な説明がほとんどなので、「じゃあ一体どうすればいいの?」というストレスを抱えながら読むことになります。しかし、最後の章を読んで印象は一変しました。この章は「プレゼンシングの原則と実践」というタイトルなのですが、マニュアルのような形式でU理論を実践するためのステップが説明されています。これはとてもわかりやすく、実践の手引きとしても、理論の具体的理解にもとても役立ちます。

最初にも書きましたが、世の中を変えたい、組織を変えたい、自分を変えたい、という問題意識を持っている方にとっては、今までにない考え方が紹介されている良書だと思います。そして、直感的にこれは、これから先の時代を生きていくにあたってとても重要な考え方だと感じています。確かに読むのは大変ですが、特に組織や社会を変えたいと思っている方は是非読んで頂きたい一冊です。

ザ・ビジョン 進むべき道は見えているか

今日は、ケン・ブランチャード 著の「ザ・ビジョン 進むべき道は見えているか」という本をご紹介したいと思います。この本は、先日ご紹介した「1分間アントレプレナー 黄金の起業法則」の著者が書いたビジョンについての本です。

この本も「一分間アントレプレナー」と同じく、物語形式で書かれており、とても読みやすいです。基本的にはビジネス書ですが、勿論ビジネス以外にも応用できると思うので、「ビジョン」について知りたい方にはどなたにでもオススメできる本だと思います。

ストーリーの流れは以下のような感じです。しかし、ただのストーリーではありません。ビジョンとは何か、そしてそれをどうやって作り、伝え、現実のものとしていけばいいのかという流れで話が進んでいきますし、所々にまとめ的な記述も出てきます。

思いもよらない夫の浮気、そして突然の別れ・・・専業主婦として夫や子どものためにのみ生きてきた主人公は、シングルマザーとして実社会に身を投じることになる。そして勤め先で、のちにメンターとなる魅力的な男性と出会い、ビジョンをもつことのすばらしさに目覚めていく・・・。(訳者あとがきより)

そもそも、ビジョンって良く聞きますけど、何となくつかみどころがないような気がしませんか?主人公たちも、その状態からスタートしていきます。試行錯誤を繰り返しながら、ビジョンの姿をクリアにしていき、そして最終的に行きついた結論は、

ビジョンとは、自分は何者で、何をめざし、何を基準にして進んでいくのかを理解することである。

という定義です。ここには、三つの要素が含まれています。

  1. 有意義な目的
    上記の定義で言えば、「自分は何者で」の部分になります。これは言い換えれば「自分は何のために存在するのか」、つまり存在意義を問うている部分です。ここでのポイントは、目的の内容そのもの、つまり「what」も重要ですが、「なぜ」の部分、「why」も極めて重要であるという点でしょう。
  2. 明確な価値観
    順番は前後してしまいますが、上記の定義で言うところの「何を基準にして」という部分です。価値観とは、「自分は何を基準にして、どのように生きていくのか」という問いに答えるもの、あるいは目的を達成するために日々どのように過ごすのかのガイドライン、とされています。つまりこれは「how」の部分になります。
  3. 未来のイメージ
    主人公たちは「目的」「価値観」がビジョンを作る上で重要だと気付くのですが、それだけでは何か足りないと感じます。それは、それだけでは目指す方向がはっきりしないということでした。そこで出てくるのが「何をめざし」の部分です。言い換えれば、最終結果に到達した際にどのような未来が待っているかの明確なイメージです。イメージの力は強力です。特に会社のような複数人で構成されている組織では、目的だけでなく具体的な結果を共有しないと、なかなかコントロールが難しいですよね。これが「where」の部分になります。

さて、ビジョンの三要素が出揃いました。基本的にこれを踏まえればビジョンは作れます。しかし、自分が作ったビジョンが要件を満たしているかというチェックリストが本に書かれていました。非常に有用だと思ったのでご紹介したいと思います。

  • そのビジョンは、自分たちの使命をはっきりさせてくれるか。
  • そのビジョンは、日々の決断を正しく行っていくための指針になりうるか。
  • そのビジョンは、めざすべき未来を目に見えるような形で描いているか。
  • そのビジョンには永続性があるか。
  • そのビジョンには、ライバルに勝つだけというだけではない、何か崇高なものがあるか。
  • そのビジョンは、数字の力を借りずに、人々に活気を吹き込むことができるか。
  • そのビジョンは、あらゆる人の心と精神に訴えかけるか。
  • そのビジョンは、ひとりひとりに自分の役割を自覚させるか。

基本的にビジネス向けなので複数人の組織を想定していますが、「自分に」と読み替えれば応用が可能だと思います。

さて、ビジョンが出来てもそれを実行できなければ何の意味もありません。それを実行するに当たって、二つのヒントが紹介されていました。

  1. ビジョンから目をそらさないこと
  2. 一身を投げだす勇気を持つこと

一番目の意味するところは、ビジョンに基づいて行動しなさい、ということです。しかし、何があっても最初に決めたビジョンに固執しなさい、ということではありません。むしろ逆で、ビジョンを実現するための計画や、場合によってはビジョンそのものを変更した方がいいケースも出てくるでしょう。そんな時は、ビジョンを修正して、またビジョンに沿って行動するようにしましょう、ということだと思います。自分が根ざす軸があるのとないのとでは大違いですからね。変える必要があるなら、軸そのものを変えればいいのだと思います。

そして二番目は勇気です。何かを踏み出す際には必ず必要になりますよね。行動をうながす方法論については、過去のエントリでもいくつかご紹介してきました。しかしそれらは、「行動しやすくする」ことはできても、自分を強制的に行動に駆り立てるものではありません。やはり最後は「よし!」と決めて自分から動き出すことが必要だと思います。そこに必要なのは、飛び込む勇気なのでしょうね。

さて、ビジョンについてご紹介してきましたが、かなりざっくりと纏めてしまったので、それぞれが意味するところの詳細が気になる方や、話の「流れ」が気になる方は是非本書を手にとって読んでみてください。皆さんも是非、ご自分のビジョンを考え、行動に移してみてくださいね!

1分間アントレプレナー 黄金の起業法則

今日はちょっと趣向を変えて、ビジネス書をご紹介したいと思います。ケン・ブランチャード 著の「1分間アントレプレナー 黄金の起業法則」です。ケン・ブランチャードという人は「1分間マネジャー」「1分間リーダーシップ」などの「1分間シリーズ」で有名な著者・講演者です。

本の内容は、とある青年が起業して成功するまでを描いたストーリーになっています。そのストーリーを通じて、起業するのに必要なことは何か?というアドバイスを伝えるという形式ですね。基本的にはフィクションですが、一部の登場人物は実在しています。これから起業を考えている方には是非お奨めです。ちなみに、僕は一応起業家のはしくれなので、全てのメッセージが大いに参考になりました。

しかし、本書に書かれているアドバイスの多くは、起業家を目指す人だけに当てはまるものではなく、一般化すれば誰にでも参考にできるものだと思います。色々とご紹介したいのですが、起業しようと思っている方がそれほど多いとも思えないので、ここでは誰にでも参考になるアドバイスの中から、僕が強く影響を受けたものをご紹介したいと思います。

一つ目は、主人公の青年がとある講演を聞きにいった時、スピーカーが話した内容です。

今から五年後のみなさんが、今日のみなさんと唯一違うのは、その間に誰と出会い、どんな本を読んだかです。本気で成功したいと思うのなら、自分を啓発してくれる本や有名な著者の本を本棚いっぱいに並べることです!ある著者の思想や価値観、執筆のスタイルがすばらしいと思ったら、その著者の作品を全部読みとおすべきです。

少し誇張しすぎな感はありますが、誰と出会い、どんな本を読むか、それが未来の自分を決める、ということです。これは僕にとってはとても強烈なメッセージでした。僕は基本的に技術書以外の本は読まなかったのですが、このメッセージを意識するようになってからは気になった本をジャンルを問わずどんどん読むようになりました。

最近、とある番組でビル・ゲイツが言っていましたが、新しい問題に取り組む時、Amazonで関連する書籍を片っ端から購入し、全て読むのだそうです。僕も似たようなことをしています。もちろん、彼ほどお金持ちではないので、大分控えめだとは思いますが・・・。ただ、本を読むことで確実に自分の世界は広がりました。自分への投資だと思って本代はケチるな、とよく言いますが、その通りだと僕も思います。

それに、最近は本当に色々なジャンルの本が出ていますよね。そのおかげで、人から教えてもらわなくても、高いお金を払って学校に通わなくても、とても「学びやすい」環境になっていると思います。僕は今Web関係の仕事をしているのですが、最近仕事に使っている技術はほとんど本やインターネットから得たものです。皆さんも、気になるけど手を出せていない事について、まずはAmazonで調べてみることから始めてみては如何でしょうか。

二つ目は、起業するかどうか悩んでいる主人公に対して、彼のメンター(指導者)がアドバイスをするシーンです。

問題は、どんな事業をやるつもりなのかだ。シェルダン・ボウルズというすばらしい起業家で著者でもある人が、こう言っているよ。事業を始めたいのなら、情熱に従うべきだとね。これをシェルダンは「喜びのテスト」と呼んでいる。つまり、何をいちばんやりたいのか。もしも、胸にたぎる思いを満たすためではなく、金をもうけたいから起業家になるというのなら、失敗するだろう。自分の事業を心から好きだと思えないのであれば、その世界でベストになるために必要な時間を費やすこともしないからだ。

このメッセージも僕にとってはとても大きなものでした。当時は「できること」と「やりたいこと」の狭間で僕自身も会社も大きく揺れ動いており、どうすればいいのかわからなくなっていました。

この本を読み、仕事のパートナーと議論した結果、やはり一番重要なのは「情熱」だという結論に落ち着きました。それからは、我々の情熱はどこにあるのか、どうすればその情熱を形にできるか、という方向に舵を切る事ができました。今はまだまだその最中なので何も結果が出ていませんが、情熱がないことはうまくいかない、というのは確信に変わってきています。

ここで言う「事業」という言葉を「仕事」に置き換えれば、誰にでも通用するアドバイスになると思います。やはり何をするにしても、自分をドライブするエンジンに相当するものは、情熱なのだと思います。世の中には無理やりモチベーションを持続させるような方法論も多くありますが、外部からのモチベーションでは結局続かない、僕はそう思っています。

さて、如何だったでしょうか。起業を目指していない方はなかなか読もうという気になりにくいかも知れませんが、このように一般的に参考にできるアドバイスも沢山書かれています。僕がひねくれているのか、ちょっと主人公が優等生すぎるのが気になりましたが(笑)、ストーリーなのでとても読みやすいですよ。もちろん、起業家を目指している方には是非読んで頂きたい一冊だと思います。