「ありのまま」という才能―性格に隠された成功のヒント

今日は、ロブ・ヤン 著の「『ありのまま』という才能―性格に隠された成功のヒント」という本をご紹介します。著者略歴によると、著者は心理学の博士で、成功の心理学の権威として広く知られている人とのことです。原題は「Personality: How to Unleash Your Hidden Strengths」です。う~ん、大人の事情なのかも知れないですが、副題はそのままの方がよかったような。

この本では、人の性格を7つの特性に分けて考えます。以下がその7つなのですが、こうして眺めているだけでも自分はどちら寄りかな、というのがある程度判断できると思います。この本では、それぞれに対してチェックリストがついていて、質問に答えることで自分がどちら寄りなのかを判断することができます。

  1. 好奇心
    結果を出す「現実派」 vs 先を追い求める「ロマンチスト」
  2. ストレス抵抗力
    プレッシャーに弱い「心配性」 vs ものごとに動じない「楽天家」
  3. 社交性
    ひとりが好きな「孤高の人」 vs 大勢が好きな「社交の人」
  4. 自律性
    行動の前に考える「慎重派」 vs 衝動のままに生きる「奔放派」
  5. 共感力
    ズバリ本音の「率直派」 vs 相手に合わせる「気配り派」
  6. 学習意欲
    学ぶことが命「知識派」 vs 行動で学ぶ「実践派」
  7. 上昇志向
    現状に満足の「のんびり屋」 vs 意欲に満ちた「野心家」

以前ご紹介したビッグ・ファイブによく似ていますね。これらは特性なので、どちらかのタイプに必ず当てはまるわけではなく、どちらの傾向がより強いか、ということになります。場合によっては、どちらの要素も持ち合わせている、ということもあります。また、どちらかが良くてどちらが悪い、というものではなく、それぞれ長所と短所があります。

それぞれの診断結果の後には、タイプ毎にアドバイスが書いてあるのですが、これがとても参考になります。個性は個性として受け止め、どういうことに気をつければいいか、という観点でヒントが書いてあるので、受け止めやすいと思います。また、自分とは逆のタイプの説明を読むのも発見があって面白いですよ。

この本には「はじめに」の部分にとても大事なことが書いてあります。

わたしたちは、性格的な嗜好をある程度もって生まれてきます。科学者によると、性格の半分までは両親から受け継いだもの、つまり遺伝子レベルのもののようです。(中略)

けれども、遺伝子はストーリーの一部分にすぎません。遺伝子はあなたの「ルール」の原型、あるいはあなたという「台本」の最初の原稿をつくりますが、そのあとに受ける教育がその原稿に手を加えるのです。(中略)

大人になったわたしたちにとって、性格のもととなる台本がすべて役立つとはかぎりません。ときには、自分の望みを妨げるような行動を、性格が指示するからです。
ならば、台本は書きなおすことができるのでしょうか?
はい、書きなおすことができます。しかも、あなたはすでにそれを日々行っているのですよ。

この「人は変われる」というメッセージは、とても勇気づけられますね。

それと、この本のいいところは、診断では終わらないところです。最終章には「アクションプラン」という章があり、これから何をするか、を考えるステップが用意されています。行動しなければ何も変わらない、ということなのでしょうね。

さて、最後に。これは僕の個人的な意見ですが、この手の性格診断は活用方法がとても重要だと思います。結果を自分なりに消化して、今後の自分の生活・行動に活かしていく分にはいいと思うのですが、場合によっては、真実かどうかもわからない欠点や短所を「認知」し、「強化」してしまう可能性があると思っています。

性格診断は傾向を出すには良いと思いますが、それだけで人間の性格を表せるほど僕たちは単純ではありません。状況や精神状態等で大きく変わるのですから。診断結果は参考程度にし、それを踏まえて自分はどんな人間なのか、と自分なりに考えてみる必要があるのだと思います。

「変わりたい」と思っている方や、自分を知るためのきっかけが欲しい方にオススメの一冊です。機会があったら是非読んでみてくださいね!

「こんなはずじゃない自分」に負けない心理学

今日は、晴香葉子 著の「『こんなはずじゃない自分』に負けない心理学」という本をご紹介したいと思います。帯には、「自信がない。居場所がない。理解してもらえない。そんな生き方不器用さん達に。」と書いてあり、本屋で思わず手にとってしまった本です。

今まで何ら関わりのなかった自分が心理学という分野に興味を持ったのは、「自己肯定感」という言葉を知ったのがきっかけでした。自分を肯定する、つまり「自分は今のままでいいんだ!」という感覚ですが、漠然と思い描いていた理想と、なかなかうまくいかない現実との狭間で苦しんでいたのでしょうね。この概念を知って以来、どうすれば「自己肯定感」を高められるのかを考えるようになりました。

「このままじゃいけない」、そう思う気持ちが前に進む力になっているうちはいいんですよね。でも、それが繰り返し打ちのめされていくうちに、「こんなに上手くいかないのは何か自分に重要な欠陥があるんじゃないか」なんて思い始めたりします。そうなると、どんどん自分が嫌いになり、自信がなくなり、人は立ちすくんでしまうのだと思います。

そんな状態にならないに越したことはありません。でも、長い人生の中、がんじがらめで前に進めなくなってしまうこと、ありますよね。そんな時にこんな本を読んでみるといいかも知れません。一つの長い話というより複数のTips的な話で構成されており、カウンセラーである著者の優しく、でもどこか力強い雰囲気に勇気づけられます。

この本の中には様々な心理学の理論が出てくるのですが、その中で僕が気に入っているものを一つご紹介します。

僕たちは、感情がある状況から直接引き起こされると思いがちですよね。例えば、ある人に批判された、それによって怒りをおぼえた、という具合に。批判されたことが「状況」、そしてそれによって怒りという「感情(結果)」が引き起こされた、となります。

しかし、本当にそうでしょうか?ABC理論では、この「状況」と「感情(結果)」の間に「思考」が存在しており、実は「感情(結果)」を引き起こしているのはその「思考」だと考えます。状況(Activating event)、思考(Belief)、結果(Consequence)の頭文字をとってABCです。

批判されたという例をもう一度見てみましょう。ABC理論で考えれば、批判されたことによって「自分を否定された」「恥をかかされた」「バカにされた」などの思考が生まれ、それによって怒りという感情が結果として生まれたと考えることができます。

自分を変えるのは簡単ではありません。そして相手を変えることや、自分の身の回りで起こることを変えるのはさらに難しいですよね。でも、思考(受け止め方)を変えることはできます。不愉快には違いありませんが、「この人は自分とは異なる価値観を示しているんだな」と思うことができれば、そこから何か学ぶことがあるかも知れません。

この考え方を突き詰めていくと、もともと世の中に起きている出来事に意味などなく、それに解釈をつけているのは僕たち自身だ、とも言えると思います。ものは考えよう、ってやつですね。何か嫌なことが起きた時、もし違う解釈で少しでも気持ちが楽になるのなら、そういう意味を勝手に「付けて」しまえばいいのかも知れませんね。

このABC理論以外にも、さまざまな考え方を簡潔に、わかりやすく紹介してくれています。自分自身のコンプレックスや人間関係で悩んでいる方に、気楽な気持で読んでいただきたい一冊です。

パーソナリティを科学する―特性5因子であなたがわかる

今日ご紹介する本は、ダニエル・ネトル 著の「パーソナリティを科学する―特性5因子であなたがわかる」です。人間の性格を研究する学問である、パーソナリティ心理学の書籍です。

皆さんは性格診断テストをやったことがありますか?質問に答えていくと、最後に「あなたは~タイプです」というように性格を診断してくれます。世の中にはお遊び程度のものから、企業の採用試験に使われるものまで、性格診断が沢山ありますね。それだけ、皆が自分の性格を客観的に知りたがっている、と考えることもできます。

この本で扱うのは、特性5因子論と呼ばれる理論で、人の性格を5つの特徴で表すというものです。ビッグファイブとも呼ばれています。心理学関連の書籍を読むと、現在のところ性格を表現するための仮説としては主流である、と書かれていたりします。

さて、余談ですが人の性格を表すときの考え方に、類型論、特性論というものがあります。類型論は、あらかじめ性格をいくつかのタイプに分類し、それに当てはめていくという考え方。科学的根拠がないと言われてはいますが血液型による性格分類なんかは、わかりやすい類型論ですね。類型論はわかりやすい半面、大雑把すぎるという限界があります。人間の性格を少数のタイプに分けることなどできない!というわけです。

一方特性論では、人間の性格を特徴づける要素を「特性」としてあらかじめ定義しておき、人がそれらをどの程度持っているか(もしくは持っていないか)、と考えます。個々の特性の程度やその組み合わせは無限にあるので、人の性格を詳細に表現できる半面、全体像が見えにくい、などと言われているようです。

ビッグファイブは特性論の一つで、その名の通り5つの特性を定義しています。文献によって名前が微妙に違っていたりしますが、この本に書かれている内容をご紹介します。

  1. 外向性
    外向性がある、というと社交的なイメージを持つかも知れませんが、ここで言う外向性は少し違います。外向性のスコアが高い人は、低い人に比べて日常生活の中で、喜び、欲望、熱中、興奮といった「ポジティブな情動」を示すことが多いのだそうです。ポジティブな情動が多いため、それを獲得するような行動に出やすい、ということですね。
  2. 神経質傾向
    これは名前のイメージが少々悪いですが、外向性と逆の考え方です。つまり、ネガティブな情動をどれだけ持ちやすいかを表しています。不安や恐怖はそれをあらかじめ察知して避けるためにあると言われますが、神経質傾向のスコアが高い人は低い人に比べてその警報装置のアラームの感度が強い、と考えられます。
  3. 誠実性
    これも名前のイメージとは少し異なるのですが、どれだけ衝動を抑制することができるか、を表しています。誠実性のスコアが高い人は、自分をコントロールすることに長けている人であり、低い人は衝動的で、気の向くまま、意志が弱い、などと言えそうです。
  4. 調和性
    どれだけ他者の心の状態に注意を払い、それによって自分の行動を決定するかを表します。つまり、どれだけ人に共感できるかということですね。このスコアとEQ(共感指数)は強く関連しているようです。
  5. 開放性
    最後の一つ、開放性についてははまだわかっていないことも多く、少しわかりにくいです。「経験への開放性」とも呼ばれ、あらゆる種類の文化的、芸術的活動にどれほど関わっているかを表すようです。また、連想の広がりの度合いを示したりもするようです。確かに、天才的な芸術家は普通の人にない発想力を持っていそうですよね。

ひとつ重要な点を補足したいと思います。これらの特性は、スコアが高い=良いというわけではないということです。スコアが高いなりのデメリットのようなものもあるので、単純に良い・悪いではなく個性と考えた方がよいと思います。

ところで、なぜこの5つなのでしょう?ビッグファイブの歴史は、辞書に書いてある「人の性格を表す言葉」を全て調べ、分類していくという地道な作業から始まったようです。それらをベースに、統計的な分析、研究の蓄積を経て整理・統合され最終的に5つの特性に落ち着いた、ということのようです。

面白いのは、この5つの特性に関連している脳の領域や神経分泌物質などが見つかり始めているという点です。そう遠くない将来、ある程度正確に、機械的に人の性格を測れる時代がやってくるかも知れませんね。

この本によると、人の性格を決めるのは約半分が遺伝、あとの半分が人生初期に受けた様々な影響であるとされています。そして、僕たちはそれをくつがえすことはできないようです。では、人が自分の嫌なところを変えたいと思い、また成長しようと努力するのは無駄なあがきなのでしょうか?この本にはそれに対する一つの回答が書いてあります。

個々の人間のもつ特異性は、3つのレベルから考えることができます。一つはこのビッグファイブの特性のスコア。二つめは特徴的行動パターン。そして三つめがパーソナル・ライフストーリー。一つめの特性に関しては、前述の通り後から変えることはできません。では、あとの二つは何でしょうか。

特徴的行動パターンとは、例えば「外向的である」という特性を持っていたとしても、その表れ方は個人によって違う、ということです。そして、その外向性をどのように表現するかは、ある程度選択することができます。そしてパーソナル・ライフストーリー。これはつまり自分をどう見るか、ということです。アイデンティティと言ってもいいですが、これについては僕たちは様々な方法で見直したり、作り直したりすることができます。

特性は変えられないとしても、その特性をどのように活かし、そして自分をどう定義するかは自分次第だということです。僕はこの考え方がとても気に入りました。人間の性格という身近なようでよくわかっていないものをわかりやすく解説してくれるこの本、それほど難しくないので興味のある方は是非読んでみてください!

潜在意識が答えを知っている!

今日は、マクスウェル・マルス 著の「潜在意識が答えを知っている!」をご紹介したいと思います。著者のマルス博士はもともとは形成外科医だったのですが、その後患者の心に興味を持ち、心理学、誘導ミサイルの技術から催眠術まで幅広い研究をし、原著を完成させたが1960年。既に博士は亡くなっているのですが、この本は半世紀にわたって3000万人以上の人に読まれたという名著です。

本書は、人間がいかに目標を達成するかというサイコ・サイバネティクス理論という科学理論について書かれた本です。しかし、内容は難解ではなく、一般の人が読んでもわかりやすいように書かれていると思います。

サイコ・サイバネティクスの理論によると、人間の心には潜在意識というものが存在します。顕在意識(※)と潜在意識。まるで二つの心があるかのようですが、著者によると潜在意識は心というより脳と神経系から成るメカニズムで、顕在意識によって「自動的」に作用し、その人を方向づけるものだそうです。

※ 僕たちが自分の意識だと自覚している意識のこと。

さて、潜在意識が自動的に作用すし、方向づけるとはどういうことでしょうか?顕在意識で一旦目標を設定すると、後は潜在意識が自動的にその目標を達成するためにその人を動かす、ということです。まるで誘導ミサイルのようですが、著者はその仕組みを知るために誘導ミサイルの技術を勉強したんでしょうね。

「自動的に」というところがポイントで、目標の設定を間違えると、誤った目標を達成しようとしてしまうわけです。つまり、成功イメージを目標として与えれば成功に向かっていきますが、失敗イメージを目標として与えてしまうと、どこまでも失敗を追いかけてしまうわけですね。

失敗イメージを目標にするなんてこと、あるはずがないと思うかも知れませんが、例えばとても大事な仕事に取り組んでいて、「失敗したらどうしよう」とばかり考えていたとすれば、意識が向くのは当然失敗イメージの方です。そうならないために、成功をイメージして、正しい方向に目標を設定してあげる必要があります。

目標設定についておもしろい記述があったのでご紹介します。

春に生まれたリスには、冬の経験がない。それでも、秋にはせっせと木の実を貯え、食糧が獲れない冬の間をしのぐ。渡り鳥も、巣作りや飛行を教わらない。
(中略)
にもかかわらず、寒い冬が訪れる時期、それに何千キロも離れた温暖な地の正確な場所を「知っている」のだ。
これを説明しようとするとき、私たちはたいて、動物には「本能」があるからだと口にする。この本能を分析していくと、動物が環境にうまく適応する仕組みを持っていることがわかる。いわば動物は「成功本能」をもっているわけだ。

なるほど、確かに本能のなせる技というのはすごいですね。ただ、動物はその目標を自ら定めることができないと著者は言います。一方人間は、もっと複雑な成功本能を持っています。何故なら、さまざまな目標を自ら生み出すことだできるからです。この成功本能のことを「創造的なイマジネーション」と呼びます。

ではどうすれば潜在意識の力をうまく使って目標を達成できるのでしょうか。そのための5つの基本原理をご紹介します。

  1. あなたに内蔵された成功メカニズムには、目標やターゲットがなければならない。
    目標がなければそこに向かうことはできません。目標やターゲットは「すでに存在している」ものとして思い描くこと。
  2. 自動成功メカニズムは間接的に作用する。
    目標をきちんと設定したのなら、そこに至る具体的な手段が現時点でわからなくても大丈夫。手段を提供するように機能する。
  3. 一時的な失敗や誤りを恐れない。
    どんな誘導装置も、一発で目標に到達することはありません。前進し、誤りを修正しながら軌道修正していくものです。
  4. どんな技能も、試行錯誤によって身につけることができる。
    失敗を修正しながら学習を続ければ、過去の誤りを忘れ、成功した反応を覚えて模倣することができるようになります。
  5. 自分のメカニズムがきちんと働くと信頼しなければならない。
    メカニズムは、自分が行動し、行動によって要求が出されて初めて働きます。保証が得られるのを待って行動するのではなく、保証があるかのように行動することです。

大事なのはイメージをどう持つかです。本書には上記以外にも、とても有用なヒントが散りばめられています。最後に、僕が好きな一節を引用しておきます。

不可能は単なる見解にすぎない

なんか勇気づけられますね。何か達成したい目標がある、という方にオススメの一冊です。是非読んでみてください。

MI:個性を生かす多重知能の理論

今日ご紹介する本は、ハワード・ガードナー 著の「MI:個性を生かす多重知能の理論」です。過去のエントリでも「自分らしさ」、つまり個性のお話が出てきましたが、今日は個性を心理学・教育という観点から考えてみたいと思います。

この本はMI理論(Multiple Intelligences:多重知能)という理論を解説した本で、なかなか読みごたえのある本でした。というか、僕はかなり気合を入れないと読めませんでした。が、とてもおもしろいことが書いてあるので、ざっくりと僕なりに纏めてみます。

IQという言葉は有名ですよね。これは知能指数のことで、知能を測定する尺度です。IQが高い人は、知能が高いとされてきました。他にも、EQ(心の知能指数)、SQ(社会性の知能指数)等が一時期とても話題になりました。

本書の著者は、知能は一つではないと言います。

多くの心理学者が持っていて、われわれの言い回しのなかにもしっかり定着している信念、知能は単一の能力であり、全面的に「賢い」か「愚か」のどちらかである、という信念に挑戦したのである。

では、どんな知能が存在するのか。現時点では8つあります。「現時点で」というのは、まだ見つかっていない知能が今後見つかる可能性があるからだそうです。その8つを下記に紹介します。

  1. 言語的知能
    言葉に対する感受性、言語を学ぶ能力、言語を用いる能力
  2. 論理数学的知能
    問題を論理的・科学的に分析・究明したり、数学的操作をする能力
  3. 音楽的知能
    音楽の演奏や作曲、鑑賞のスキル
  4. 身体運動的知能
    体全体や身体部位を使う能力
  5. 空間的知能
    空間を認識する能力や、パターンについての能力(※)
    ※ 画家や彫刻家、建築家に重要な能力
  6. 対人的知能
    他人の意図や動機づけ、欲求を理解して他人とうまくやっていく能力
  7. 内省的知能
    自分自身を理解する能力
  8. 博物的知能
    様々なものを見分け、区別したり分類したりする能力

他にも候補はあるそうですが、現段階ではこれだけです。「知能」と見なすための条件も本書には記載してあるので、興味のある方は読んでみてください。

さて、これが一体何なのか?まず、人間にはこれだけの数の知能(能力、才能)が存在していて、それぞれの知能は、個人の遺伝的資質と環境によって生じるということ。そして、私たちの知能の組み合わせはそれぞれ独自である、ということ。つまり、この組み合わせが個性になるのでしょうね。

こういう話を聞くと、自分にどの知能がどれだけあるのか知りたくなりますが、それはなかなか難しそうです。これら全ての能力を簡単に測定することができないからです。また、評価できたとしても、この人は~が苦手だ、などのラベル付けをしてしまうリスクも指摘しています。

では、この理論をどんなことに活かせるのでしょうか。本書では、教育現場や企業などでMI理論をどう活かせるかが紹介されています。例えば教育。現在主流の教育方法は画一的な教育です。つまり、全ての個人は同じように扱われるべきだ、という考え方です。しかし、一旦個性を認めると、これは公平なようで公平ではありません。これを解決する方法として、「個人ごとに設計された教育」の可能性を示唆しています。

また、企業でも同じようなことが言えます。従業員には個性があり、部署・役職によって求められる能力も違う。であれば、従業員それぞれの個性をきちんと把握し、能力をどう活かすか、どう伸ばすか考えることは有益なはずです。

なんとなく言いたいことは伝わったでしょうか。もしもっと掘り下げて読んでみたい、という方は是非読んでみてください。