シンクロニシティ 未来をつくるリーダーシップ

今日は、ジョセフ・ジャウォースキー 著の「シンクロニシティ 未来をつくるリーダーシップ」という本をご紹介したいと思います。この本は、いわゆる“積ん読”状態になっていた本でしたが、ふと目に止まったので読んでみました。

皆さんは、シンクロニシティという単語をご存じでしょうか?日本語では共時性と言います。「二つ以上の出来事が重要な意味を持って同時に起こる事。そこには単なるチャンスの到来以外の何かが関わっている」と定義されており、心理学で非常に有名なC・G・ユングが提唱しました。このシンクロニシティについては、監修者解説の中で以下のように説明されています。

ある事象と別の事象が、さらにまた別の事象が、時間的に近接して、つぎつぎとつながりを持って生まれるような現象に出会い、それらの事象間に必ずしも因果で説明できる部分がなければ、それはシンクロニシティと言っていいだろう。

ちょっと不思議な感覚なのですが、皆さんもそんな経験はないでしょうか?何故だかはよくわからないけど、何となく意味やつながりを持つと思われるようなことが身の回りで次々と起きて、不思議な感覚を味わった経験。具体的な内容はあまり思い出せませんが、僕はその感覚を度々味わっているような気がします。

この本の内容は実話です。著者の身に実際に起こった「シンクロニシティ」が物語として語られていて、とても面白いです。物語なのでとても読みやすかったですし、とても感動しました。あまりにも面白かったので明け方までかかって一気に読んでしまいました。

さて、物語の中で語られるシンクロニシティを「不思議な偶然」として片づけてしまっては意味がありません。僕は、物語を読む中で、シンクロニシティに関して主に二つの教訓を得ました。

一つ目は、やはり人は自分が心の底からやりたいこと、やる必要があると思えることをやるべきだということです。欲求を突き詰めていくと、自分の利益と他人の利益が合致するポイントが必ずあります。それに対してコミットした時、まさに何かに導かれるように様々な偶然が起こって手助けしてくれる、それがこの本で本当に言いたかったシンクロニシティなのだと思います。本の中では、方向は決めるが目的地は決めない、何故なら流れに身を任せていれば導いてくれる、というようなことが書いてありましたが、この言葉の意味するところがやっとわかったような気がします。

もう一つは、著者に強い意思だけでなく、積極的で行動力があったこと。強い意思があれば、強く信じていれば、それだけでどんどんいいことが起こるわけではありません。自ら積極的に行動を起こし、他人を巻き込み、その連鎖が続くことで偶然としか思えないような結果が生まれました。「強く願えば思いは叶う」という言葉がありますが、それは暗に「強く願えばこそ、それにまつわるあらゆる行動をいとわない」という意味をも含んでいるのだと思います。

ところで、このシンクロニシティと副題の「リーダーシップ」とはどう関係があるのでしょう?僕も本を読み始めたときに疑問に思いました。読んでみるとわかりますが、この二つは直接的に関係はありません。著者はあるきっかけから、世の中を変える次世代のリーダーを育てなければ、という思いに駆られます。それを実現すべく著者自身もリーダーシップを発揮していくのですが、そうして行動をしていくうちにシンクロニシティと言うべき出来事が次々と起こっていきます。

シンクロニシティについては上記で少し触れましたが、著者が言う「リーダーシップ」もまた、とても示唆に富んだ内容になっています。著者が言うリーダーシップとは、「サーバント・リーダーシップ」というものです。これについてとあるエッセイを引用し、このように述べています。

グリーンリーフはこう述べている。リーダーシップの真髄は、互いに奉仕しあいたいという願望、自分たちを超えたものに、より高い目標に奉仕したいと言う願望である、と。伝統的な私たちの考え方では、「サーバント・リーダーシップ」というのは矛盾した表現であるように思われる。しかし、さまざまなつながり合いから成り立っている世界においては、関連性こそがこの世界を秩序だてる原理であり、その表現はきわめて理にかなっている。

サーバントとは奉仕者という意味です。まさに、僕たちが普段思っているリーダーとは逆のイメージですね。リーダーに仕えるのがサーバントなのでは?と思ってしまいます。しかし、そうではなく、チームのメンバーに「奉仕」し、世の中に「奉仕」することがリーダーシップである、ということのようです。

リーダーに関してはこうも言っています。リーダーシップとは、「すべきこと」ではなく「あり方」なのだと。リーダーとは何かを考える時、「リーダーとはこういう行いをすべき」という行動面からから考えるのではなく、「われわれは共同で、何を創り出すことができるか」という姿勢を持つ、高い目標に奉仕できるマインドセットこそ、リーダーシップなのでしょう。こう捉えれば、リーダーシップは特定の人しか持っていない資質ではなく、考え方を変えることによって誰もが持ち得る考え方だということが理解できます。

本書は、物語の形式をとってはいますが、単なる事実ではなくそれが意味するところも十分に語られており、とにかく理解がしやすいです。ただ、理屈ではなく感覚で理解する必要がある部分もあるので、それはこれからまた読み返し、考え、そして行動を通して身につけていきたいと思っています。

本書の内容は、以前ご紹介した「U理論」とも深い関連があります。本書の内容をさらに深め、実践的なセオリーにしたのがU理論とのことですが、U理論を理解するためのヒントとしてもとても役に立ちました。

リーダーシップ、シンクロニシティ、そして物語。一冊で三度おいしい本です。この本を読み終わった後、自分もいよいよ夢の実現に向けて動き出さなければ、という決意に近い思いに至りました。夢がある方、世の中を変えたいと思っている方にはお奨めですよ!監修者解説にも、このような人に読んでほしい、と書かれていました。

  • 夢を探している人
  • 夢を再チェックすべき中年の人
  • 「リーダーシップの旅」が自分の夢とかかわると思っている人
  • 人々とのつながりを大切にしている(もっとそうしたいと思っている)人
  • 「自己実現」や「個性化」は、理解するのも実践するのも難しいと思っている人

これに少しでも該当すると思った方は、是非読んでみてくださいね!

その幸運は偶然ではないんです!

今日は、J・D・クランボルツ & A・S・レヴィン 著の「その幸運は偶然ではないんです! 夢の仕事をつかむ心の練習問題」という本をご紹介します。この本の著者の一人であるJ・D・クランボルツという人は、スタンフォード大学の教育学・心理学教授で、キャリアカウンセリング理論の先駆者だそうです。

この本のタイトルを見たときに、真っ先に「セレンディピティ」という言葉が思い浮かびました。皆さんは「セレンディピティ」という言葉はご存知でしょうか?「セレンディップと三人の王子」という童話に因んで作られた言葉ですが、「偶然に幸運をつかむ能力」という意味だとされています。「能力」というからには、それを身につけることで幸運を掴める、あるいは掴みやすくすることができるのでしょうか?そこにとても興味があり、本書を手に取りました。

さて、本書の主張はまさにタイトルの通り、「幸運は偶然ではない」です。「はじめに」には以下のように記されています。

幸運やチャンス、予期せぬ出来事に関する本はたくさんありますが、この本はほかの本とは少し違います。私たちは「幸運は偶然ではない(Luck is No Accident.)」と考えているのです。
キャリアや人生を前に進めるような予想外の出来事が起きて、それが本物のチャンスに変わるときには、その人自身が重要な役割を果たしています。この本はキャリアについて書かれていますが、その内容は、人生のほかの場面、たとえば恋愛にも応用できるものだと私たちは考えています。

著者はキャリアカウンセラーですので、キャリア選択についての話題がほとんどですが、ここに書かれているようにこの本の内容はとても汎用的なもので、ありとあらゆることに応用が可能だと思います。

では、幸運は偶然ではない、とは一体どういうことなのでしょうか。必ず幸運を掴めるような決まったやり方があるのでしょうか?残念ながらそういうわけではありません。著者は、「人生には予測不可能な偶然の出来事が必ず起こるので、結果をコントロールすることはできない」とした上で、「行動次第では、その結果を望ましいものにする確立が高められる」ということが言いたいのです。

では、その行動とは、どのような行動なのでしょうか?この本の中には様々なアドバイスが含まれていますが、僕が重要だと思ったポイントを纏めてみました。

  1. 「想定外の出来事は必ず起こる」ということを理解しておく
    人生では、自分の想定していない出来事が沢山起こります。未来がどうなるかは誰にもわからないし、完全にコントロールすることはできません。全てが思い通り、という風にはなかなかいかないものだ、ということを理解しておきましょう。
    ただ、自分の行動や、物事に対する反応は自分でコントロールすることができますよね。実際には、これらが人生の方向性を決める重要な要因なのです。
  2. 想定外の出来事が起こった時の対処が重要
    想定外の出来事には、良いことも悪いこともあります。悪いことが起こった時、悲嘆にくれてふさぎ込む人もいますが、それをきっかけに建設的な行動を起こしてチャンスをつかむ人もいます。つまり、想定外の出来事が起こった時、どのように反応するかが重要なのです。逆に良いことが起こった時は、逃さずに掴み取りましょう!そのためには常にアンテナを張っておくことも重要だと思います。
  3. 積極的な行動で良い出来事を起こす
    想定外に良いことが起こった場合、それが単なる幸運や偶然とは言い切れません。大抵の場合、そうした出来事は連鎖して起こるためわかりにくいですが、本人の積極的な行動がそのような出来事を「起こして」いるケースも多々あると思います。想定外の出来事に対する反応、という受け身の姿勢だけでなく、自分から「起こす」という積極的な姿勢が重要ですね。
  4. 選択肢に対して常にオープンでいる
    著者は、「今後一切、自分のキャリアに関して意思決定をするな」と説きます。これは、複雑に変化する昨今の状況において、一つの選択にこだわり続けることは視野を狭くしてしまうということを言っています。つまり、固執することで他のより良い選択肢が見えなくなってしまうということですね。自分が見えていないだけで、実はもっともっと沢山の選択肢があるかも知れませんよ。
  5. 情熱は行動の前だけにあるのではなく、行動の結果として生まれることもある
    僕は今まで「情熱ありき」だと思っていました。が、自分の情熱がどこにあるのかわからない、と思っている人が悶々と考えていても何も始まらない、情熱は行動によって作られることもある、というこの意見はとても現実的で正しい意見だと思います。人には人それぞれの情熱があります。それを明確に認識できている人はいいですが、そうでない人はある程度方向性をつけたら先に行動を起こした方がいい、ということだと思います。
  6. 何もしなければ、何も起こらない
    未来はどうなるかは誰にもわからない、と書きましたが、例外があります。それは、何もしなければ確実に何も起こらない、ということです。つまり、何かを起こしたければ、リスクを取って行動すべきだということですね。例え失敗しても、次に何が起こるかはわかりませんし、そこから学べることもあるでしょう。失敗を恐れず、新しいことに挑戦しましょう。本当に恐ろしいのは、失敗することではなく、失敗を怖れて何もしないことなのですから。

この本には、普通の人たちがどんな行動によって幸運を掴むことができたか、というエピソードが沢山紹介されています。説明と合わせて実例を読むことで、さらに理解が深まると思います。各章の最後にはワークもついており、キャリアに悩んでいる方はもちろん、幸運を掴みたい方には是非おすすめの一冊です。是非読んでみてくださいね!

ザ・ビジョン 進むべき道は見えているか

今日は、ケン・ブランチャード 著の「ザ・ビジョン 進むべき道は見えているか」という本をご紹介したいと思います。この本は、先日ご紹介した「1分間アントレプレナー 黄金の起業法則」の著者が書いたビジョンについての本です。

この本も「一分間アントレプレナー」と同じく、物語形式で書かれており、とても読みやすいです。基本的にはビジネス書ですが、勿論ビジネス以外にも応用できると思うので、「ビジョン」について知りたい方にはどなたにでもオススメできる本だと思います。

ストーリーの流れは以下のような感じです。しかし、ただのストーリーではありません。ビジョンとは何か、そしてそれをどうやって作り、伝え、現実のものとしていけばいいのかという流れで話が進んでいきますし、所々にまとめ的な記述も出てきます。

思いもよらない夫の浮気、そして突然の別れ・・・専業主婦として夫や子どものためにのみ生きてきた主人公は、シングルマザーとして実社会に身を投じることになる。そして勤め先で、のちにメンターとなる魅力的な男性と出会い、ビジョンをもつことのすばらしさに目覚めていく・・・。(訳者あとがきより)

そもそも、ビジョンって良く聞きますけど、何となくつかみどころがないような気がしませんか?主人公たちも、その状態からスタートしていきます。試行錯誤を繰り返しながら、ビジョンの姿をクリアにしていき、そして最終的に行きついた結論は、

ビジョンとは、自分は何者で、何をめざし、何を基準にして進んでいくのかを理解することである。

という定義です。ここには、三つの要素が含まれています。

  1. 有意義な目的
    上記の定義で言えば、「自分は何者で」の部分になります。これは言い換えれば「自分は何のために存在するのか」、つまり存在意義を問うている部分です。ここでのポイントは、目的の内容そのもの、つまり「what」も重要ですが、「なぜ」の部分、「why」も極めて重要であるという点でしょう。
  2. 明確な価値観
    順番は前後してしまいますが、上記の定義で言うところの「何を基準にして」という部分です。価値観とは、「自分は何を基準にして、どのように生きていくのか」という問いに答えるもの、あるいは目的を達成するために日々どのように過ごすのかのガイドライン、とされています。つまりこれは「how」の部分になります。
  3. 未来のイメージ
    主人公たちは「目的」「価値観」がビジョンを作る上で重要だと気付くのですが、それだけでは何か足りないと感じます。それは、それだけでは目指す方向がはっきりしないということでした。そこで出てくるのが「何をめざし」の部分です。言い換えれば、最終結果に到達した際にどのような未来が待っているかの明確なイメージです。イメージの力は強力です。特に会社のような複数人で構成されている組織では、目的だけでなく具体的な結果を共有しないと、なかなかコントロールが難しいですよね。これが「where」の部分になります。

さて、ビジョンの三要素が出揃いました。基本的にこれを踏まえればビジョンは作れます。しかし、自分が作ったビジョンが要件を満たしているかというチェックリストが本に書かれていました。非常に有用だと思ったのでご紹介したいと思います。

  • そのビジョンは、自分たちの使命をはっきりさせてくれるか。
  • そのビジョンは、日々の決断を正しく行っていくための指針になりうるか。
  • そのビジョンは、めざすべき未来を目に見えるような形で描いているか。
  • そのビジョンには永続性があるか。
  • そのビジョンには、ライバルに勝つだけというだけではない、何か崇高なものがあるか。
  • そのビジョンは、数字の力を借りずに、人々に活気を吹き込むことができるか。
  • そのビジョンは、あらゆる人の心と精神に訴えかけるか。
  • そのビジョンは、ひとりひとりに自分の役割を自覚させるか。

基本的にビジネス向けなので複数人の組織を想定していますが、「自分に」と読み替えれば応用が可能だと思います。

さて、ビジョンが出来てもそれを実行できなければ何の意味もありません。それを実行するに当たって、二つのヒントが紹介されていました。

  1. ビジョンから目をそらさないこと
  2. 一身を投げだす勇気を持つこと

一番目の意味するところは、ビジョンに基づいて行動しなさい、ということです。しかし、何があっても最初に決めたビジョンに固執しなさい、ということではありません。むしろ逆で、ビジョンを実現するための計画や、場合によってはビジョンそのものを変更した方がいいケースも出てくるでしょう。そんな時は、ビジョンを修正して、またビジョンに沿って行動するようにしましょう、ということだと思います。自分が根ざす軸があるのとないのとでは大違いですからね。変える必要があるなら、軸そのものを変えればいいのだと思います。

そして二番目は勇気です。何かを踏み出す際には必ず必要になりますよね。行動をうながす方法論については、過去のエントリでもいくつかご紹介してきました。しかしそれらは、「行動しやすくする」ことはできても、自分を強制的に行動に駆り立てるものではありません。やはり最後は「よし!」と決めて自分から動き出すことが必要だと思います。そこに必要なのは、飛び込む勇気なのでしょうね。

さて、ビジョンについてご紹介してきましたが、かなりざっくりと纏めてしまったので、それぞれが意味するところの詳細が気になる方や、話の「流れ」が気になる方は是非本書を手にとって読んでみてください。皆さんも是非、ご自分のビジョンを考え、行動に移してみてくださいね!

「先延ばし」にしない技術

今日は、イ・ミンギュ 著の「『先延ばし』にしない技術」という本をご紹介したいと思います。心理学者である著者が実行力を身につける方法について書いた本です。先日ご紹介した「やりきる技術―最高のパフォーマンスを生み出す仕事のきほん」という本に通じるものがありますが、こちらはもう少し硬派な印象を受けます。

さて、内容です。著者は、偉大な人達が足跡を残せたのはアイデアを実行に移したからだと言います。そしてその実行力というのは、生まれつきの資質ではなく、技術だそうです。つまり、誰でも訓練すれば実行力を身につけることができる、というわけですね。これには少し勇気づけられますね。

さてその実行力。分解すると、決心、実行、維持という三段階に分かれます。本書では、それぞれについて章が設けられており、詳細なアドバイスが書かれています。ここでは、面白いと思った話題をピックアップしてご紹介したいと思います。

まずは目標について。何かを実行する上で、一番最初に必要なのは目標を定め、「やる」と決意することです。それがないと何も始まりません。その際に、「ゴールをイメージすれば夢がかなう」といったことが多く語られてきました。著者は、これは実際には効果がなく、かえって邪魔になることすらあると言っています。

その理由は、あまりにバラ色の未来を思い描いていると、何かうまく行かなかった時に簡単に挫折してしまい、イメージの中に逃げ込んでしまう可能性が高いからだそうです。ではどうすればいいのか。それは、ゴールをイメージして何かをやる決意が生まれたら、そこからは「どうやってそこにたどりつくか=プロセス」をしっかり考えること。

プロセスをあれこれ考える時には、当然想定される障害やリスク、代替案なども考えますよね。つまり、ゴールした姿という楽観的なイメージと、失敗した時にどうするかという悲観的なイメージを両方持つことが重要なのだそうです。もっと言えば、楽観的なイメージと悲観的なイメージをどのようにバランスさせて、前に進む力に変えていくかが重要なんだと思います。具体的な方法を考えずにゴールを考えていても前には進みませんし、心配ばかりして恐れていたらなかなか行動に移すことができませんよね。

次に変わりたいと思っても変われない理由について。その理由について、「今の状況が、耐えられないほど苦痛ではないからだ。切実に望むものがないからだ。」と書かれています。う~ん、とてもストイックですが、これは僕も実感としてあります。必要性を心の底から理解している時は、実行するのはそれほど苦ではないと思います。苦であっても、必要なのでやらざるを得ない、という感じでしょうか。

さて、次は実行に関して二つほど。一つは、何かを「やろうかな、でも後にしようかな・・・」と迷ったときは、その実行のベストタイミングは「今」だということ。「後で」は永遠にやってきません。これはとても耳が痛い言葉ですが、まさにその通りだと思います。最初の一歩さえ踏み出せば物事はどんどん進んでいくもの、最初の一歩は小さくてもいいので、「今」始めてみるといいかも知れませんね。これに付随して、こんな記述がありました。

本当に残念なのは、ただ時間を浪費するだけでなく、待っている間に頭の中にあった目標が消えてしまうことだ。将来、何かになりたければ、必ずいま何かをしなければならない。

本書には、「行動に移さないアイデアはゴミだ」という強烈なタイトルのコラムがあります。しかし、せっかくのアイデアも実行に移せなければ、結果としてゴミになってしまうという意味では正しいのかも知れませんね。

実行に関するもう一つのトピックは、「できない理由」に関してです。できない理由を述べる前に、やってみたのか?著者はこれを実験精神と呼んでいるのですが、何事も実験だと思えば、実行に移すハードルはかなり下がります。僕は、厳密に言えば実際にやってみないと「できない理由」などわからないのではないかと思います。この辺りは精神論と言えなくもないですが、頭の片隅に置いておくと、いざという時に後押ししてくれるかも知れませんよ。

最後に、「目標達成率を高める観察の力」というトピックです。これは、人は誰かに見られていることを意識すると行動が変わりやすいということだそうです。そして、「誰か」というのは自分自身も当てはまります。一時期流行ったレコーディングダイエットなどは、この力を応用したものなんだと思います。僕も昨年末から今年にかけて家計簿、体重記録などをつけ始めました。これが本当に効果が実感でき、意識の力はこれほどなのか、と思っています。これについてはまた改めて書きたいと思います。

いくつかトピックをご紹介してきましたが、本書の中にはもっともっと沢山のアイデアが詰まっています。非常にストイックな印象を受けますが、どれも正論だと思います。以前にも書きましたが、この手の本は読んだ後、取捨選択やアレンジをして自分のやり方として昇華させる必要があるものです。少なくともそのための重要なヒントは散りばめられているので、実行力について真面目に考えてみたい方は是非読んでみてください!

やりきる技術―最高のパフォーマンスを生み出す仕事のきほん

今日ご紹介する本は、小倉広 著の「やりきる技術―最高のパフォーマンスを生み出す仕事のきほん」です。僕は特に目的がなくても定期的に本屋さんに足を運んで何か面白い本はないか、と情報収集するのですが、この本もそうやって出会った本です。

本書は、物事を「やりきる」ためにはどうすればいいか、について書かれています。何かを始めたはいいけど、続かなくて途中でやめてしまう。そんな経験、僕も沢山あります。この本のいいところは、「やりきる」ための具体的な技術だけでなく、「やりきる」ことが大切な理由や、何故「やりきる」ことが難しいのか、という考察が優れている所だと思います。

少しご紹介しましょう。まず、「やりきる」ことが何故大切なのか?すぐ思いつくのは、「継続は力なり」という言葉ですね。コツコツと続けていくうちに大きな力になる、ということです。しかし、この本では違った観点からその理由を説いています。まず、「やりきる」ことができないと、「腐ってしまう」という観点です。

できないのであれば、約束をしない方がいい。続かないなら、約束を反故にして、やめてしまった方がはるかにいい。決めたことを守れない風土ができあがってしまうくらいならば、最初から約束をしない方がはるかにマシなのだ。
そして、これは個人にも当てはまる。個人に「負け癖」がついてしまうのだ。「やりきる」ことができない弱い自分に慣れていってしまう。それが一番恐ろしいのだ。

僕もこれは心当たりがあります。何かを始めたにも関わらず、途中で投げ出してしまうことが続くと、少なからず自己嫌悪に陥りますよね。自尊心を守るために言い訳を用意して「しょうがなかった」と自分に言い聞かせてはみるのですが、こうした体験は少しずつ自己評価を蝕んでいくように思います。

そして次は、「やりきる」ことで得られるものという観点。著者は、「やると決めたこと」=約束と捉えて、他人との約束を守ると「信頼」が、そして自分との約束を守ると「自信」が手に入ると言います。「やりきる」ことで継続による大きな力だけでなく、信頼や自信まで勝ち取ることができる、だから「やりきる」ことは重要なのだ、ということです。なるほど。これは非常に共感することができました。

気がつけば、ブログを書き始めて1ヶ月が経ちました。原則毎日更新を目指してきましたが、忙しくて書けない日もありました。でも、何かを始めては三日坊主だった僕にとっては、とりあえず続いているというのはちょっとした奇跡です。

他にも、読書、家計簿、ダイエット、ジム、早起き、等を去年から始めました。それらは、完璧にはほど遠いですが、今も何とか続いています。まだ何一つやりきってはいませんが、とにかく続いている、ということはとても自信になります。著者が言う、自分との約束を守ると「自信」が手に入る、というのは僕の実体験から見ても正しいと思います。

まず小さなことから何か行動してみて、それを達成する。それを繰り返すことで自分に対する評価を改善していくという手法は、カウンセリングでも使われる方法です。小さくても、何か一つ成功体験を得ると、「何だできるじゃん、じゃあ他のこともできるかもしれない」、という気持ちになってきます。

僕がやっていることは、常日頃からしっかりやっている人から見れば当たり前のことです。しかし、それが今まで全くといっていいほどできていなかった僕にとっては、生活改善から得られる実利と、それらを通じた自己評価の改善という一粒で二度おいしい状況になっています。

さて、では何故「やりきる」ことってこんなに難しいのでしょう。著者は、「やりきる」ためのステップは3つあるのだと言います。そのステップとは、「始める」「続ける」「やり直す」です。そしてその3つのステップそれぞれに、落とし穴があります。

著者がこの中でも特に重要だと説くのが、「やり直す」技術。完璧にできないのならやめてしまえ、いわゆるオール・オア・ナッシング的な考え方ではなく、そもそも完璧になんてできないのだから、例え続かなかったとしても何度でもやり直せばいい。まさに、某漫画の「あきらめたらそこで試合終了」ですね。

僕は元々オール・オア・ナッシング的な思考が強かったので、何かを一日サボったら「もうだめだ」となり、そこでやめてしまっていました。でも、一日サボっても、また次の日からやり直せばいいんですよね。そして、やり直すのをやめない限り、失敗したことにはならない。そう考えると、何かを続けるというのは、もっと気楽にやればいいということなのかも知れません。

最後に。これは僕個人の考えですが、上記で引用した言葉、「できないのなら、約束をしない方がいい」というのは、極論かも知れませんが、非常に重要だと思います。気楽にやればいいとは言え、何かを成し遂げるにはそれなりの覚悟が必要です。でも、何かを「とりあえず試し」で始める度に、そんな覚悟はしていられません。そんな時は、「これはお試し」と割り切って、やめる時はスパっとやめてしまうことも重要だと思います。無駄に自信をすり減らす必要もないですからね。

本書には、「始める」「続ける」「やり直す」というそれぞれのステップに役立つ考え方や手法が沢山紹介されています。心理学的な考え方や、精神論、時間管理に至るまで、役に立つポイントが必ずあるはずです。物事を続けられず、知らず知らずのうちに自信をなくしてしまっている方に是非おすすめしたい一冊です。この本に書いてある方法を自分なりにアレンジして、独自の「やりきる技術」を体得できるといいですね!