パーソナリティを科学する―特性5因子であなたがわかる

今日ご紹介する本は、ダニエル・ネトル 著の「パーソナリティを科学する―特性5因子であなたがわかる」です。人間の性格を研究する学問である、パーソナリティ心理学の書籍です。

皆さんは性格診断テストをやったことがありますか?質問に答えていくと、最後に「あなたは~タイプです」というように性格を診断してくれます。世の中にはお遊び程度のものから、企業の採用試験に使われるものまで、性格診断が沢山ありますね。それだけ、皆が自分の性格を客観的に知りたがっている、と考えることもできます。

この本で扱うのは、特性5因子論と呼ばれる理論で、人の性格を5つの特徴で表すというものです。ビッグファイブとも呼ばれています。心理学関連の書籍を読むと、現在のところ性格を表現するための仮説としては主流である、と書かれていたりします。

さて、余談ですが人の性格を表すときの考え方に、類型論、特性論というものがあります。類型論は、あらかじめ性格をいくつかのタイプに分類し、それに当てはめていくという考え方。科学的根拠がないと言われてはいますが血液型による性格分類なんかは、わかりやすい類型論ですね。類型論はわかりやすい半面、大雑把すぎるという限界があります。人間の性格を少数のタイプに分けることなどできない!というわけです。

一方特性論では、人間の性格を特徴づける要素を「特性」としてあらかじめ定義しておき、人がそれらをどの程度持っているか(もしくは持っていないか)、と考えます。個々の特性の程度やその組み合わせは無限にあるので、人の性格を詳細に表現できる半面、全体像が見えにくい、などと言われているようです。

ビッグファイブは特性論の一つで、その名の通り5つの特性を定義しています。文献によって名前が微妙に違っていたりしますが、この本に書かれている内容をご紹介します。

  1. 外向性
    外向性がある、というと社交的なイメージを持つかも知れませんが、ここで言う外向性は少し違います。外向性のスコアが高い人は、低い人に比べて日常生活の中で、喜び、欲望、熱中、興奮といった「ポジティブな情動」を示すことが多いのだそうです。ポジティブな情動が多いため、それを獲得するような行動に出やすい、ということですね。
  2. 神経質傾向
    これは名前のイメージが少々悪いですが、外向性と逆の考え方です。つまり、ネガティブな情動をどれだけ持ちやすいかを表しています。不安や恐怖はそれをあらかじめ察知して避けるためにあると言われますが、神経質傾向のスコアが高い人は低い人に比べてその警報装置のアラームの感度が強い、と考えられます。
  3. 誠実性
    これも名前のイメージとは少し異なるのですが、どれだけ衝動を抑制することができるか、を表しています。誠実性のスコアが高い人は、自分をコントロールすることに長けている人であり、低い人は衝動的で、気の向くまま、意志が弱い、などと言えそうです。
  4. 調和性
    どれだけ他者の心の状態に注意を払い、それによって自分の行動を決定するかを表します。つまり、どれだけ人に共感できるかということですね。このスコアとEQ(共感指数)は強く関連しているようです。
  5. 開放性
    最後の一つ、開放性についてははまだわかっていないことも多く、少しわかりにくいです。「経験への開放性」とも呼ばれ、あらゆる種類の文化的、芸術的活動にどれほど関わっているかを表すようです。また、連想の広がりの度合いを示したりもするようです。確かに、天才的な芸術家は普通の人にない発想力を持っていそうですよね。

ひとつ重要な点を補足したいと思います。これらの特性は、スコアが高い=良いというわけではないということです。スコアが高いなりのデメリットのようなものもあるので、単純に良い・悪いではなく個性と考えた方がよいと思います。

ところで、なぜこの5つなのでしょう?ビッグファイブの歴史は、辞書に書いてある「人の性格を表す言葉」を全て調べ、分類していくという地道な作業から始まったようです。それらをベースに、統計的な分析、研究の蓄積を経て整理・統合され最終的に5つの特性に落ち着いた、ということのようです。

面白いのは、この5つの特性に関連している脳の領域や神経分泌物質などが見つかり始めているという点です。そう遠くない将来、ある程度正確に、機械的に人の性格を測れる時代がやってくるかも知れませんね。

この本によると、人の性格を決めるのは約半分が遺伝、あとの半分が人生初期に受けた様々な影響であるとされています。そして、僕たちはそれをくつがえすことはできないようです。では、人が自分の嫌なところを変えたいと思い、また成長しようと努力するのは無駄なあがきなのでしょうか?この本にはそれに対する一つの回答が書いてあります。

個々の人間のもつ特異性は、3つのレベルから考えることができます。一つはこのビッグファイブの特性のスコア。二つめは特徴的行動パターン。そして三つめがパーソナル・ライフストーリー。一つめの特性に関しては、前述の通り後から変えることはできません。では、あとの二つは何でしょうか。

特徴的行動パターンとは、例えば「外向的である」という特性を持っていたとしても、その表れ方は個人によって違う、ということです。そして、その外向性をどのように表現するかは、ある程度選択することができます。そしてパーソナル・ライフストーリー。これはつまり自分をどう見るか、ということです。アイデンティティと言ってもいいですが、これについては僕たちは様々な方法で見直したり、作り直したりすることができます。

特性は変えられないとしても、その特性をどのように活かし、そして自分をどう定義するかは自分次第だということです。僕はこの考え方がとても気に入りました。人間の性格という身近なようでよくわかっていないものをわかりやすく解説してくれるこの本、それほど難しくないので興味のある方は是非読んでみてください!

潜在意識が答えを知っている!

今日は、マクスウェル・マルス 著の「潜在意識が答えを知っている!」をご紹介したいと思います。著者のマルス博士はもともとは形成外科医だったのですが、その後患者の心に興味を持ち、心理学、誘導ミサイルの技術から催眠術まで幅広い研究をし、原著を完成させたが1960年。既に博士は亡くなっているのですが、この本は半世紀にわたって3000万人以上の人に読まれたという名著です。

本書は、人間がいかに目標を達成するかというサイコ・サイバネティクス理論という科学理論について書かれた本です。しかし、内容は難解ではなく、一般の人が読んでもわかりやすいように書かれていると思います。

サイコ・サイバネティクスの理論によると、人間の心には潜在意識というものが存在します。顕在意識(※)と潜在意識。まるで二つの心があるかのようですが、著者によると潜在意識は心というより脳と神経系から成るメカニズムで、顕在意識によって「自動的」に作用し、その人を方向づけるものだそうです。

※ 僕たちが自分の意識だと自覚している意識のこと。

さて、潜在意識が自動的に作用すし、方向づけるとはどういうことでしょうか?顕在意識で一旦目標を設定すると、後は潜在意識が自動的にその目標を達成するためにその人を動かす、ということです。まるで誘導ミサイルのようですが、著者はその仕組みを知るために誘導ミサイルの技術を勉強したんでしょうね。

「自動的に」というところがポイントで、目標の設定を間違えると、誤った目標を達成しようとしてしまうわけです。つまり、成功イメージを目標として与えれば成功に向かっていきますが、失敗イメージを目標として与えてしまうと、どこまでも失敗を追いかけてしまうわけですね。

失敗イメージを目標にするなんてこと、あるはずがないと思うかも知れませんが、例えばとても大事な仕事に取り組んでいて、「失敗したらどうしよう」とばかり考えていたとすれば、意識が向くのは当然失敗イメージの方です。そうならないために、成功をイメージして、正しい方向に目標を設定してあげる必要があります。

目標設定についておもしろい記述があったのでご紹介します。

春に生まれたリスには、冬の経験がない。それでも、秋にはせっせと木の実を貯え、食糧が獲れない冬の間をしのぐ。渡り鳥も、巣作りや飛行を教わらない。
(中略)
にもかかわらず、寒い冬が訪れる時期、それに何千キロも離れた温暖な地の正確な場所を「知っている」のだ。
これを説明しようとするとき、私たちはたいて、動物には「本能」があるからだと口にする。この本能を分析していくと、動物が環境にうまく適応する仕組みを持っていることがわかる。いわば動物は「成功本能」をもっているわけだ。

なるほど、確かに本能のなせる技というのはすごいですね。ただ、動物はその目標を自ら定めることができないと著者は言います。一方人間は、もっと複雑な成功本能を持っています。何故なら、さまざまな目標を自ら生み出すことだできるからです。この成功本能のことを「創造的なイマジネーション」と呼びます。

ではどうすれば潜在意識の力をうまく使って目標を達成できるのでしょうか。そのための5つの基本原理をご紹介します。

  1. あなたに内蔵された成功メカニズムには、目標やターゲットがなければならない。
    目標がなければそこに向かうことはできません。目標やターゲットは「すでに存在している」ものとして思い描くこと。
  2. 自動成功メカニズムは間接的に作用する。
    目標をきちんと設定したのなら、そこに至る具体的な手段が現時点でわからなくても大丈夫。手段を提供するように機能する。
  3. 一時的な失敗や誤りを恐れない。
    どんな誘導装置も、一発で目標に到達することはありません。前進し、誤りを修正しながら軌道修正していくものです。
  4. どんな技能も、試行錯誤によって身につけることができる。
    失敗を修正しながら学習を続ければ、過去の誤りを忘れ、成功した反応を覚えて模倣することができるようになります。
  5. 自分のメカニズムがきちんと働くと信頼しなければならない。
    メカニズムは、自分が行動し、行動によって要求が出されて初めて働きます。保証が得られるのを待って行動するのではなく、保証があるかのように行動することです。

大事なのはイメージをどう持つかです。本書には上記以外にも、とても有用なヒントが散りばめられています。最後に、僕が好きな一節を引用しておきます。

不可能は単なる見解にすぎない

なんか勇気づけられますね。何か達成したい目標がある、という方にオススメの一冊です。是非読んでみてください。

あなたの人生には使命がある

今日は、アルフォンソ・リナーレス・フェルナンデス 著の「あなたの人生には使命がある」という本をご紹介したいと思います。あとがきによると、著者は南米ベネズエラに住むネット事業家で、プロの書き手ではないそうです。しかし、その主張はシンプルでとてもわかりやすく、とてもいい本に出会えたと思っています。

本書の最大の主張はタイトルに言い尽くされています。著者は、妹さんの死をきっかけに今までの人生を振り返り、自己探求の果てに「誰の人生にも使命がある」という考えてに至ったそうです。使命と聞くと漠然としていますが、「生きる目的」や「存在意義」と置き換えてもいいですね。

ではそれは一体どのようなものなのでしょうか。様々な考察を経て著者が出した結論はこうです。

人生に託された「使命」とは、「情熱」に駆られ、みずからの「才能」を生かし、世の中に最大限の「善」を施すこと。

著者の思考の過程は本書に詳しく解説されているので読んで頂ければいいのですが、この定義には本当に共感します。「情熱」+「才能」+「善」が使命だと言っているのですが、つまりはこういうことだと思います。

  1. 自分が情熱を持てることをやりなさい
  2. 自らが持つ才能を生かしなさい
  3. 世の中に対して貢献しなさい

どれか一つを満たすものが使命なのではなく、上記三つを全て満たすものが使命、つまり僕たちがやるべきことだということです。三つ全てを同時に考えるのはなかなか難しいので、それぞれ別々に考えていくといいと思います。

まずは自分がやりたいことについて。仕事を選ぶとき、「自分が何をやりたいのかわからない」という話を聞くことがあります。でもよくよく聞いていると、現実的な選択肢の中に自分のやりたいことがない、ってだけだったりします。この「現実的な選択肢」ってのが曲者で、制約を一旦無くすと、目を輝かせて好きなことを語り出したりするんですよね。

自分がやりたいこと、そのものずばりの仕事に就くのは難しいかも知れません。リスクを取って一歩踏み出す人もいますが、そんなリスクは取れない、という人も是非「自分はなぜそれがやりたいのか」を深く追求してみて欲しいと思います。

やりたいことの本質に気がつくと、その実現方法が一つではないことに気が付きます。つまり、自分がすぐ思いつく「仕事のリスト」から選ぶのではなく、自分がやりたいことに少しでも関わっていそうなことを探したり、作り出したりするという選択肢もあるということを覚えておくといいかも知れません。

次に才能について。僕たちは遺伝や育った環境の影響を受ける以上、個性ってやっぱりありますよね。その意味で不得意なことよりも得意なことをやった方がいい、というのはその通りだと思います。でも、才能を個性と考えれば、才能がない人なんていません。自分の才能をしっかり認識し、制限する方向ではなく、活かす方向で考えたいですね。

「何も特筆すべきスキルがない」という意味で「自分には何の才能もない」と言う人がいますが、それは自分の特性を把握していないか、それを活かす方法がまだ見つかっていないだけだと思いますよ。自分の武器は何なのか、棚卸して見ましょう!

そして最後に貢献です。貢献と言っても、ボランティアをやれということではありません。情熱と才能を使って誰の為に何をするのか?ということです。貢献というとちょっとハードルが高いですが、基本的には仕事をしていれば(ビジネスだけに限らず、家事だって育児だってそうです)誰かに何らかの形で役に立っていますよね。

ただ、ここで言いたいのは、自分の情熱と才能を最大限に活用し、「誰に」「何を」貢献するのかを意識すれば、さらに多くの貢献ができるのではないか、ということだと思います。人の欲求は突き詰めていくと貢献欲求になるとも言われています。確かに、誰かの役に立ったと思った時はとても気分がいいですよね。

才能を活かしてやりたいことをやり、その結果誰かの役に立つ。それを使命と呼ぶなら、僕は是非自分の使命を見つけて全うしたいと思います。僕の個人的な意見も沢山書いてしまいましたが、とてもよい本なのでオススメです!

ソース・セルフ・スタディ・キット

以前のエントリで、「ソース―あなたの人生の源はワクワクすることにある。」という本を紹介しました。その時にも少し書きましたが、書籍の内容をさらに深めて教材にしたセルフ・スタディ・キットというものが存在します。僕はそちらの方もやってみましたので、今日はその感想を書いてみたいと思います。

セルフ・スタディ・キットは、CDによるガイダンスを聞きながらワークブックに書き込んでいくという形式で進んでいきます。ワークブックのページ数は(解説込みですが)250ページ程度、CDは本編が7枚。結構な分量があります。僕は結構頑張ってやって一週間程度かかりました。

一枚目のCDをセットしていざ始めようとすると、何やらスピーカーから眠くなりそうな声が聞こえてきます。ナビゲーションCDに入っている声は出版元であるVOICE出版の社長、喜多見龍一さんの声。何でも、オリジナル「ソース」の開発者であるマイク・マクマナスという人は既に亡くなっていて、その遺志を継いで日本バージョンを作ったのがこの人みたいです。

前置きはさておき、内容です。第1部は心構えなどの説明なのでサクサク進みます。心構えの中で強調されていたのは、とにかく自分のペースで構わないので楽しく続けること。つらくて気が進まなくなったらしばらく休むなりして、新しい気持ちでまた始めてくださいとのことでした。気が楽になった半面、そんなに大変なんだ…と覚悟を決めた瞬間でもありました。

ひとたび第2部に入ると、怒涛のようにワークが続きます。用意された質問に対して、自分の過去から未来まで思いを巡らせて、とにかく書いていきます。今まで深く考えたことがないようなことも平気で聞いてくるので、変な疲れ方をします。でも、裏を返せばそれだけ漫然と過ごしてきたということなので、いい刺激になります。

この質問攻めが終わると、そこからは書いたものをまとめていく作業。あまり詳しく書くとネタバレになってしまうので書きませんが、この部分がこのプログラムの真骨頂だと思います。自分の中にある様々な要素をできるだけ沢山集めて、その中から大事なものを抽出し、精錬していくイメージでしょうか。最後に残るのは、自分が本当に価値を感じているものです。自分のことはよくわかっているつもりでしたが、改めて見せられることで多くの発見があります。それがまた、楽しくもあります。

自分が大事にしているものがわかったら、それを行動に繋げていくための行動計画を作ります。いくら価値観を明確にして、いい気分になったところで、行動が変わらなければ何も変わりませんよね。好きなことをどう生活に取り入れていくかを考えるのは、楽しいものです。ここで作った計画は、小さな一歩でも構わないので実行に移す覚悟を決めましょう。

第3部は、作った行動計画をどうやって実行に移していくかという解説で、読み物中心です。そして最後の第4部は、人間関係や仕事でどう活かすか、最後に纏めという構成です。

僕はこの教材をやってよかったと思います。自己啓発本は一時的な高揚感を提供してくれるが長続きしない、という指摘がありますが、僕はこれをやって以来色々なことを始めたり、挑戦するようになりました。このブログもその一つです。もちろんこの教材のおかげで人生がバラ色になった、なんてことはありませんが、自分を知り、自分についてよく考えるきっかけになったことは間違いありません。

ただ、これを人に奨めようとすると二つのハードルがあるんですよね。一つは、自己啓発というジャンルは人を選ぶということ。僕は特に抵抗ないですが、嫌いは人は嫌いですよね。そしてもう一つは結構大変なので気軽にお奨めできないということ。もしこの二つがクリアできるという方は、是非やってみてくださいね!

MI:個性を生かす多重知能の理論

今日ご紹介する本は、ハワード・ガードナー 著の「MI:個性を生かす多重知能の理論」です。過去のエントリでも「自分らしさ」、つまり個性のお話が出てきましたが、今日は個性を心理学・教育という観点から考えてみたいと思います。

この本はMI理論(Multiple Intelligences:多重知能)という理論を解説した本で、なかなか読みごたえのある本でした。というか、僕はかなり気合を入れないと読めませんでした。が、とてもおもしろいことが書いてあるので、ざっくりと僕なりに纏めてみます。

IQという言葉は有名ですよね。これは知能指数のことで、知能を測定する尺度です。IQが高い人は、知能が高いとされてきました。他にも、EQ(心の知能指数)、SQ(社会性の知能指数)等が一時期とても話題になりました。

本書の著者は、知能は一つではないと言います。

多くの心理学者が持っていて、われわれの言い回しのなかにもしっかり定着している信念、知能は単一の能力であり、全面的に「賢い」か「愚か」のどちらかである、という信念に挑戦したのである。

では、どんな知能が存在するのか。現時点では8つあります。「現時点で」というのは、まだ見つかっていない知能が今後見つかる可能性があるからだそうです。その8つを下記に紹介します。

  1. 言語的知能
    言葉に対する感受性、言語を学ぶ能力、言語を用いる能力
  2. 論理数学的知能
    問題を論理的・科学的に分析・究明したり、数学的操作をする能力
  3. 音楽的知能
    音楽の演奏や作曲、鑑賞のスキル
  4. 身体運動的知能
    体全体や身体部位を使う能力
  5. 空間的知能
    空間を認識する能力や、パターンについての能力(※)
    ※ 画家や彫刻家、建築家に重要な能力
  6. 対人的知能
    他人の意図や動機づけ、欲求を理解して他人とうまくやっていく能力
  7. 内省的知能
    自分自身を理解する能力
  8. 博物的知能
    様々なものを見分け、区別したり分類したりする能力

他にも候補はあるそうですが、現段階ではこれだけです。「知能」と見なすための条件も本書には記載してあるので、興味のある方は読んでみてください。

さて、これが一体何なのか?まず、人間にはこれだけの数の知能(能力、才能)が存在していて、それぞれの知能は、個人の遺伝的資質と環境によって生じるということ。そして、私たちの知能の組み合わせはそれぞれ独自である、ということ。つまり、この組み合わせが個性になるのでしょうね。

こういう話を聞くと、自分にどの知能がどれだけあるのか知りたくなりますが、それはなかなか難しそうです。これら全ての能力を簡単に測定することができないからです。また、評価できたとしても、この人は~が苦手だ、などのラベル付けをしてしまうリスクも指摘しています。

では、この理論をどんなことに活かせるのでしょうか。本書では、教育現場や企業などでMI理論をどう活かせるかが紹介されています。例えば教育。現在主流の教育方法は画一的な教育です。つまり、全ての個人は同じように扱われるべきだ、という考え方です。しかし、一旦個性を認めると、これは公平なようで公平ではありません。これを解決する方法として、「個人ごとに設計された教育」の可能性を示唆しています。

また、企業でも同じようなことが言えます。従業員には個性があり、部署・役職によって求められる能力も違う。であれば、従業員それぞれの個性をきちんと把握し、能力をどう活かすか、どう伸ばすか考えることは有益なはずです。

なんとなく言いたいことは伝わったでしょうか。もしもっと掘り下げて読んでみたい、という方は是非読んでみてください。

My Credo(マイクレド)

今日は、浜口隆則・村尾隆介 著の「My Credo(マイクレド)」をご紹介したいと思います。

僕は恥ずかしながらクレドという言葉を知らなかったのですが、調べてみたところラテン語で「信条」を意味する言葉だそうです。マイクレド、つまり自分の信条をしっかり持ちましょう、というのが本書のメインテーマです。

この本には、

  • 何故信条を持つべきなのか
  • 信条を持つとどんな良いことがあるのか
  • 信条を作るための具体的な方法

がしっかりと述べられており、とてもわかりやすいです。特に、何故信条を持つべきなのか(僕たちの生きている環境・時代背景の考察)については、本当にその通りだと思います。自由であるが故に様々な不安に溢れている今の社会で、自分の軸をしっかり持つためのヒントが沢山詰まっています。

本書の中で特に印象に残っているのは「自分らしさ」についての考察です。この言葉、よく耳にしますがなかなか曲者ですよね。というのも、甘えを正当化する言い訳になり得るからです。「自分には合わない」と言えば一見価値観の問題かのようにも思えますが、実際には「嫌だ!やりたくない!」と言っているだけだったりします。本の中に「自分らしさという保健室」という表現がありました。なるほど、おもしろいですね。

それともう一点、本の中で紹介されている「自利利他」という考え方が気に入ったので引用してみます。

自利利他の精神というと、 「人のために何か良いことをしていると、それがめぐりめぐって自分の良いことになって還ってくる。だから、人のために役に立つことをしましょう」という意味だと勘違いしている人がいますが、ちょっと違います。

自利利他とは、本当は「自らの悟りのために修行し努力することと、ほかの人の救済のために尽くすこと。この二つを共に完全に行うことを大乗の理想とする」という意味です。

つまり、「自分を高めること」と「人のお役に立つ」ということは、「同時にやらないといけませんよ」ということです。

どうしても利己主義 vs 利他主義という二項対立で考えがちですが、実はどちらも大事、というお話。これは直感的にしっくりきます。自分のことばかり考えている人間にはなりたくありませんが、かと言って常に自分を犠牲にして他人のことばかり、というのも嫌です。この二つを高い次元で両立するのは簡単ではないですが、例えば自分がやりたいことを突き詰めることによって世の中に貢献し、報酬を得るという生き方は、まさに僕の目指すところです。

本書の後半にはワークがあり、最後にまとめ的にマイクレドを作る、という流れになっています。全体を通してテンポよく進むので読みやすく、ブレない自分の軸を見つけたい方に是非読んでいただきたいオススメの一冊です。

さあ、才能(じぶん)に目覚めよう

本日ご紹介するのは、マーカス・バッキンガム & ドナルド・O・クリフトン 著の「さあ、才能(じぶん)に目覚めよう―あなたの5つの強みを見出し、活かす」です。

この本は自分の強みを見つけ、活かすためにはどうすればいいのか、というテーマについて書かれた本です。強みとは「常に完璧に近い成果を生み出す能力」であり、才能・知識・技術が合わさって生まれれるもの、とこの本では定義しています。その中でも大切なのは才能なのだと言います。知識や技術は後から習得可能ですが、才能は新たに作り出すことはできません。

能力の得意・不得意は脳神経細胞の結びつきの強さによって決まるのだそうです。3歳までの間は神経細胞が次々に結びつき、広範囲にわたる回路を作っていきます。しかし面白い事に、それ以降は回路を広げるのではなく捨てる方向に成長が進み、16歳になる頃には3歳の時の半分程度になります。これは、3歳までの間に遺伝と幼児期の体験に基づいて強化される回路が選別されるためなのだそうです。

つまり脳は効率の良い回路を選んで、それを強化することで成長するシステムになっているということです。それが上手くできずに必要以上の回路が生き残ってしまうと、脳は成人レベルに達しないのだそうです。さて、これが才能の正体だとすると、才能に乏しい分野(弱い回路)で頑張るより、才能がある分野(強い回路)を伸ばした方がいいような気がしてきませんか?

じゃあ、自分の才能は何なのか?気になりますよね。この本では、ストレングス・ファインダーというオンラインのツールを使って自分の才能を見つける手助けをしてくれます。この本を買うとストレングス・ファインダーにアクセスするためのIDが付いてくるので、それを使ってオンライン上で診断を行うと、自分の才能が明らかになります。

このツールは200万人に対して行ったインタビューの結果に基づいて作成されており、本書で定義された34の才能の中から、自分の才能上位5つを選び出してくれます。

参考までに僕の結果は

  • 学習欲
  • 自我
  • 個別化
  • 目標志向
  • 規律性

でした。もちろん、それぞれに説明が付いてきますが、長くなるので割愛します。僕は、どの内容にも納得できましたよ。

ちなみに「才能」というと、やりたいことを制限されているようなイメージを感じる方がいるかも知れません。でも、僕は逆だと思います。やりたいことが決まっているなら、自分の才能をその分野でどう活かせるのか、そういう発想で考えてみては如何でしょうか。

自分の強みは何?と言われても、なかなか客観的に判断するのが難しいもの。こういった本やツールを活用して自分の強みを再認識するのもいいかも知れません。興味のある方は是非やってみてください。

最後に注意点を。ストレングス・ファインダーに付いているIDの使用は一度限りなので、中古の本を買うと肝心のテストができない可能性があります。そうなるとこの本は全くといっていいほど意味をなさないので、購入される方は新品を買われることをおすすめします。

伝わる・揺さぶる!文章を書く

今日は、山田ズーニー 著の「伝わる・揺さぶる!文章を書く」という本をご紹介します。

著者の山田ズーニーさんは進研ゼミで小論文通信教育のプロデュースをされていた方です。失礼ですけどおもしろいお名前なので調べてみたら、ズーニーとはカシミール語で「月」という意味なんだそうです。(出典:Wikipedia

この本はタイトルの通り、どうやって伝えたいことを読み手にきちんと伝え、さらに読み手の気持ちを動かすか、というテーマについて書かれた本です。これから文章力をつけていきたいと思っていた折、ネットでの評判がよかったので読んでみました。 文章術についてのみ書かれた本かと思いきや、書かれていることはとても深いです。

書き出しには、

書くことは考えることだ。だから、書くために必要なことを、自分の頭で考える方法がわかれば、文章力は格段に進歩する。

とあります。この本の論点は、書く技術だけでなく、どうやって考えるかにも及んでいます。

文章には様々な種類があります。文学の世界に始まり、新聞・雑誌などの記事、メールや単なるメモ書きなど。この本が目指すゴールは、「鑑賞ではなく、機能する文章」だと言います。機能する文章とは、自分の書いた文章で読み手の気持ちを動かし、望む結果を出すための文章のこと。学校教育ではこの観点が抜け落ちていると。

なるほど、確かにメールの書き方や手紙の書き方なんて学校で習わなかったなぁ。その代わり、会社に入ってからはメールの書き方を嫌というほど指導されました。メールの重要性が高まっている昨今、そうやって育ててくれた先輩にはとても感謝しています。仕事をしていて要領を得ないメールを見かけることがありますが、あまり考えずに言いたいことだけを流れてまかせて書くと、相手を悩ませるんですよね。気をつけたいものです。

こうやって書くとなんだか小難しそうですが、さすが文章のプロだけあって、とても読みやすいです。構成も前半は理論、後半は実例をあげて実戦的な解説が書いてあります。機能するいい文章を書く必要がある方におすすめの一冊です。

最後まで読んでふと、人に読んでもらう文章とはコミュニケーションそのものなんだな、と改めて思いました。自分の主張は貫きつつ、読み手のこともきちんと考える。難しいですが、精進していきたいと思います。

自分だけにしか思いつかないアイデアを見つける方法

祝!三日坊主突破!ということで今日も読書のまとめを書いていきたいと思います。

今日ご紹介する本は、米光一成 著の「自分だけにしか思いつかないアイデアを見つける方法」です。

この本は良いアイデア発想法はないかと色々な本を読み漁っていた時に出会った本です。著者の米光一成さんはあの人気ゲーム「ぷよぷよ」を作ったゲームクリエイターなんですって。発想力に関する講師なんかもやっているみたいです。

さて、肝心の内容ですが、とても読みやすいです。カジュアルな文体で、発想とは何か、自分のやりたいことを明確にするためのトレーニング、そしてタイトルにもなっている自分だけの「切り口」を見つける方法、という流れで話が進んでいきます。

クリエイターの人ってものすごく感覚的な発想の仕方をするのかなぁと勝手なイメージを持っていたのですが、読んでいくうちに、理屈としてとても納得できる部分が沢山あることに気づきました。本の中でも、発想は「筋道のある思考過程」と言っています。僕は「発想」と「ひらめき」を混同して考えていたみたいです。

トレーニングのやり方もステップ・バイ・ステップで解説されており、もっとアイデアを沢山出せるようになりたいと考えている方にはおすすめの一冊です。

この本の中で、僕が実際にやってみてすごい!と思った方法を一つ紹介します。カラーバスという方法です。やり方は簡単。

最初にテーマを決めます。何でもいいんですが例えば「赤いもの」。一度テーマを決めたら、その日は赤いものに意識を向けるようにしてみてください。そうやって外を歩いていると、普段の景色の中に赤いものが意外と多いことに気がつきます。あれはなんで赤いんだろう?とか、赤って言っても色んな赤があるな、とか、新しい観点や疑問が次々と生まれてきます。こういうものがアイデアの原石となりうるのでしょう。そう、アイデアの原石は何もしなくても向こうからやってきてくれるようはものではないのです。

この本の一説に面白い言葉がありました。「世界に対して常に質問し続ける」。そうすることでアンテナが普段より研ぎ澄まされて、「降りてきた」という感覚が味わえるのでしょう。質問をするということは、具体的に聞きたいことが固まっている、ということです。あまりに漠然とした状態では、質問すらすることができません。

つまり、自分の中を整理して、解決したい問題を世界に対して質問し続ける=意識を向けることで、思いもよらぬことからひらめきが生まれるのだと思います。カラーバスはそれを体験するよい方法だと思います。

皆さんも、気が向いたら試してみてください!何かおもしろい発見があるかも知れませんよ。

ソース―あなたの人生の源はワクワクすることにある。

今日は読書まとめの初回として、マイク・マクマナス 著の「ソース―あなたの人生の源はワクワクすることにある。」について書きたいと思います。

この本はいわゆる自己啓発本というジャンルに入ります。自己啓発はブームにもなっていますが、そこで語られている内容はまさに玉石混淆。硬派なものから怪しげなものまで世に溢れており、何を参考にすればいいのかわからない状況になっています。

そんな中たまたま手に取ったこの本の主張は、シンプルですがとても納得感があります。

「ワクワクすることを全部やりなさい」。要約してしまえばこれだけなのですが、そのやり方や注意点、そしてその結果どんなことが起こるか等が解説されています。

心の底からワクワクすることを書き出し、その理由を突き詰めて行くことで、自分が何に重きを置いているのかが明らかになります。自己分析の一つの方法論と言ってもいいと思います。

僕がこの本を気に入った理由の一つに、「小さな一歩」という考え方があります。人は何か新しいことを始めようとする時、できない理由を考えてしまいがちです。皆さんも心当たりがあるかもしれませんが、「時間がない」「お金がかかる」「年をとりすぎた」など、次々と言い訳を考えてしまいますよね。でも、最初の一歩は本当に小さくていいんです。やりたいことがあれば、インターネットで調べてみたり、詳しい人に聞いてみる、スクール等に資料請求してみるのもいいかも知れません。そこまで小さいことであれば、できない理由はなくなるのではないでしょうか。

僕は、自己啓発本は読んで終わりでは何の意味もないと思っています。その点、強烈に行動を促すこの考え方は、とても共感できました。

全体としては文体も読みやすく、ところどころに沢山の発見がありました。やりたいことが見つからなくて悩んでいる方に是非読んでいただきたい一冊です。

最後に注意点を。実は、ソースには書籍以外にもセルフ・スタディ・キットという教材があります。読み物として読むなら書籍で十分ですが、ワークをやってみようという方には書籍だけだと説明不足だと思います。僕はセルフ・スタディ・キットの方もやってみましたので、改めてそちらの感想も書きたいと思います。