媚びない人生

今日は、ジョン・キム 著の「媚びない人生」という本をご紹介したいと思います。本屋でふと見かけた本なのですが、帯に「従順な羊ではなく、野良猫になれ」と書かれていて、何だかおもしろそうなので購入し読んでみました。

著者のジョン・キムという人は、慶應大学の准教授で、メディア・コミュニケーション研究所というところでゼミを持っているらしい。このゼミは、視察に訪れたハーバードの教授をして、「ハーバードやエールよりも上じゃないか」と言わしめたほど厳しく、レベルが高いそうです。

本書は、そのゼミ生たちが卒業する際にはなむけの言葉として送っている最終講義「送る言葉」の内容が原点となっているそうです。内容はこれから社会に出ていく学生たちに「最後にこれだけは伝えたい」というメッセージのようなものになっています。従って、一つの論点について順序立てて書いた本というよりは、様々なメッセージが次々と登場する、という構成ですね。

これから社会に向けて巣立っていく学生向けということなので、社会人からしてみれば当たり前、と思う部分も多くあります。しかし、ハッとさせられる部分、頭ではわかっていても実践できていない部分が多々あることにも気づかされました。そして何より、内容がとても熱い。心からのメッセージであることがわかりますし、やはり教育者なのでしょう、厳しさの中にも愛情が感じられます。

そんなこの本、いくつかの論点をピックアップしてご紹介しましょう。まずはプロローグから。著者は「強さ」だけが人間を独立した存在に導く、と説きます。その強さとは・・・

  • お金とか名誉とか外面的な意味での強さではなく、内面的な強さだ。
  • 自分自身の尊厳に対する最大限のリスペクトを払える強さだ。
  • どんなに辛い逆境でもいつでも受けて立つ気概を持てる強さだ。
  • 自身のすべての行動に対し結果に対する全責任を自分で負う決意の持てる強さだ。
  • 何事にも縛られない何事にもとらわれない、そして物事をありのままの状態で受け入れられる大きくそして動じない強さだ。
  • 自分がこの世に存在する間に起きる全ての出会いや出来事は奇跡であると信じ、それが持つ意味を省察できる強さだ。
  • 他者の存在に対する最大限の尊敬を払うとともに他者の感性、思考、行動に対する深い理解のために努力をする。そして他者の不完全性に対し海のような包容力を持てる強さだ。
  • 愛する人のためなら世の中を敵に回せる強さだ。
  • 生きるすべての瞬間を人生の最後の瞬間になるかもしれないという緊張感を持ち、その瞬間に対する全ての審決を注ぐことのできる、そしてその緊張感や集中力を死ぬその最後の瞬間まで持続できる強さだ。

う~ん、熱い。改めて眺めてみると、このプロローグにメッセージのほとんどは集約されていると言っていいかもしれません。

「本当の自分」という言葉があります。本当の自分というのは何なのか、そんなものが本当にあるのか、と僕は思っていました。それに対して著者は、とてもわかりやすく説明してくれています。著者によれば、本当の自分とは、まだ社会性を持っていない幼児の自分だと言います。人間はそこから成長する過程で、周りに評価されたり形容されたりしながら、社会的に生きていきやすい自分を作り上げていきます。

社会に迎合して生きていくということは、不安を消し去ることでもあるそうです。確かに、誰かから評価されるように生きていけば、少なくともその人達からは支持されるわけで、安心です。しかし、そういう生き方こそが、人間を弱くしていると書かれています。むやみやたらに反骨精神を持てといっているのではなく、自分の軸を確立して、そして自分のモノサシで社会を測り、自然体で生きていくということが重要なのだと思います。

この本の中でも、社会的な「常識」は疑ってかかれ、という趣旨の事が書いてあります。そういった常識は非常に相対的なものであり、立場によって、時代によって違ってくるものです。このような常識というものは改めてその意味を考える必要がないので便利ではあるものの、ただ一つの普遍的な真実などというものは存在しない、あるのは複数の社会的な真実だけだ、と語られています。

何かに挑戦する時は、こういった「常識」に惑わされることなく、自分の信じた道を貫くことが重要ですね。本書にも、「結果に対する全責任を負う決意に基づいた選択は、常に正しい」と書かれています。その結果、自分が信じる「社会的な真実」を構築することだってできるのですから。

それと、就職活動について、とても面白い意見が書かれていました。

しかし、認識しておかなければいけないことがある。それは、学生の就職活動は、社会を知らないままに行われているということだ。社会に出たことがないのに、業界や企業を選ばなければならなかった。残念ながら、社会についてはわかっていないのだ。それは認めなければいけない。
そしてもうひとつは、自分自身について、まだわかっていないということである。就職活動で、自己分析はしたかもしれない。しかし、社会に出て、実際に働いた経験はない。ある仕事をしたときに、本当の自分がどんな反応をするのか、実はまったくわかっていないかったのだ。

なるほど。これは本当にそうですね。就職してから、思っていたのと違う、とギャップに悩まされる学生も少なくないのだと聞きます。しかし、それはある意味当り前と言えます。自分のことも相手のこともよくわからない状況で選んだんですから。本当の就職活動は、5年後にもう一度すればよい、というのが著者の主張です。大事なのは、その時までに本当にやりたいことをはっきりさせ、それをやるための実力をつけておくことなのだそうです。

この本を読んでいて、僕個人は「居心地の良さ」という言葉にハッとさせられました。居心地の良い状態というのは、ある意味警戒すべき状態である、と書かれています。これは、居心地によい状態に居座り続けるということは、新しい挑戦を怠っている可能性がある、ということを指しています。必要だとはわかっていても目をそらしていること、やろうやろうと思っているけどなかなか踏み出せていないこと。そういうものを一度棚卸ししてみようと思っています。

さて、如何だったでしょうか。学生向けとは言え、既に社会に出ている人が読んでも学ぶべきことは沢山あると思います。厳しくも優しい著者のメッセージに、背筋が伸びるような気持ちになりますよ。機会があれば是非読んでみてくださいね!

第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい

今日は、マルコム・グラッドウェル 著の「第1感 『最初の2秒』の『なんとなく』が正しい」という本をご紹介します。

僕は常々、直感とは何だろうと思っていました。ちょっと調べているうちに、「直感」と「直観」という二つの言葉があることを知りました。厳密にはこれらは意味が違っていて、直感は「感覚的に物事を瞬時に感じとること」、一方直観は、「五感的感覚も科学的推理も用いず直接に対象やその本質を捉える認識能力」だそうです。(Wikipediaより)

最初から脱線してしまいましたが、この本ではどちらかというと「直感」について書かれた本だと言えると思います。様々な心理学の実験を元に直感とは何かを考察していくのですが、著者が雑誌のライターということもあってか、とても読みやすく面白い内容になっています。

ところで、タイトルにある第1感とは何でしょうか?訳者のあとがきにはこう書かれています。

世間には「第六感」という言葉があるが、あれは身体的な(したがって理屈で理解可能な)五感の優越を前提として、理屈を超えた六つ目の感覚を想定している。そうではなく、五感に優越する第1感があるのではないか。

なるほど。確かに直感というものをこういう風にとらえることもできそうですね。では、この直感とはどういうものなのでしょうか。

まず、直感とは、限られた情報で物事の本質をつかむ能力と言うことができます。例えばパッと見ただけで何かおかしいと感じたりすることです。科学的に入念な調査をしたわけではない状態(情報が限られている状態)で物事の判断をする時、僕たちは「輪切りの力」というものを使っているのだそうです。

これに関する面白い事例があります。夫婦喧嘩の様子を撮影した15分間のビデオを分析して、その夫婦の15年後を予測するというものです。何だそんなの簡単だよ、と思うかも知れませんが、実際にやってみるととても難しいのだそうです。15分間のビデオには態度、口調、言葉、表情など膨大な情報が入っており、ちゃんと分析しようとすると情報が多すぎるのです。

そこで、注目する要素を絞ってみたところ、90%前後の確立で夫婦の未来を予測できたそうです。著者は、僕たちが直感的に何かを感じる時、同じようなことをしているのだと言います。すなわち、対象を輪切りにして、不必要な要素を捨てて重要な要素に集中する、ということです。この考え方で行けば、どの要素に着目するかを正しく設定することで、直感の精度を上げられるような気がしますね。

次に、直感は瞬時に、そして無意識に起こるということです。これは何を意味しているかというと、直感を下した本人もその理由がわからないということです。そのような状況で説明を求められると、人間はその理由を「でっちあげる」のだと言います。

何かを選ぶ時も無意識であることが多いそうです。数ある商品の中から何故これを選んだのかという理由を説明させてみても、素人にはうまく説明できないそうです。そればかりか、もっともらしい理由を思いつき、本当の好みをその理由に合わせてしまうのだとか。これは何となくわかるような気がしますね。ちなみに、このような現象を「言語による書き換え」と呼ぶそうです。直感で感じた記憶が言葉にすることによって書き換えられてしまうんですね。

一方、プロは違います。理由を語る語彙も、評価する尺度も、経験も持っています。これを著者は、以下のように語っています。

無意識の感想は閉じた部屋から出てくる。部屋の中はのぞけない。でも経験を重ねれば、瞬時の判断と第一印象の裏にあるものを解釈し、意味を読み取れるように行動し、自分を訓練できるようになる。

ここでも、直観は訓練することができる、という主張が出てきていますね。

最後の章では4人の警官による誤射事件を通して、「心を読む力」について考えます。様々な証言などが織り交ぜられていて面白いです。僕が一番面白いと思ったのは、人の感情は必ず顔に現れる、というくだりです。表情記述法(FACS)という方法を使えば、表情により送られているメッセージを驚くほど理解することができるのだとか。これは興味深いですね。

この章で取り上げられている誤射事件では、この「心を読む力」が機能しませんでした。その理由は、人は興奮すると相手の心が読めなくなるから。人は命の危険にさらされると、目が冴えたり、視野が狭くなったり、音が消えたり、時間の感覚がゆっくりになったりするそうです。それは生存するために不要な情報を遮断するからなのですが、それが進み、心拍数が175を超えると、認知プロセスが完全におかしくなるのだとか。

腹を立てたり、脅えている人と議論しようとしたことはないだろうか?無理だ。・・・犬と議論するようなものだ。

確かに、感情的になっている時に議論することも不毛さは、僕もたびたび経験があります。そういう時は、頭を冷やして仕切りなおした方が賢明ですね。

さて、如何だったでしょうか。本書の中にはもっと様々な実験データ等も取り上げられており、とても面白いです。学術的な言葉も出てはくるのですが、とても平易に書かれているためにすぐ読めてしまいました。直感の正体について興味がある方は是非読んでみることをお奨めします!

「先延ばし」にしない技術

今日は、イ・ミンギュ 著の「『先延ばし』にしない技術」という本をご紹介したいと思います。心理学者である著者が実行力を身につける方法について書いた本です。先日ご紹介した「やりきる技術―最高のパフォーマンスを生み出す仕事のきほん」という本に通じるものがありますが、こちらはもう少し硬派な印象を受けます。

さて、内容です。著者は、偉大な人達が足跡を残せたのはアイデアを実行に移したからだと言います。そしてその実行力というのは、生まれつきの資質ではなく、技術だそうです。つまり、誰でも訓練すれば実行力を身につけることができる、というわけですね。これには少し勇気づけられますね。

さてその実行力。分解すると、決心、実行、維持という三段階に分かれます。本書では、それぞれについて章が設けられており、詳細なアドバイスが書かれています。ここでは、面白いと思った話題をピックアップしてご紹介したいと思います。

まずは目標について。何かを実行する上で、一番最初に必要なのは目標を定め、「やる」と決意することです。それがないと何も始まりません。その際に、「ゴールをイメージすれば夢がかなう」といったことが多く語られてきました。著者は、これは実際には効果がなく、かえって邪魔になることすらあると言っています。

その理由は、あまりにバラ色の未来を思い描いていると、何かうまく行かなかった時に簡単に挫折してしまい、イメージの中に逃げ込んでしまう可能性が高いからだそうです。ではどうすればいいのか。それは、ゴールをイメージして何かをやる決意が生まれたら、そこからは「どうやってそこにたどりつくか=プロセス」をしっかり考えること。

プロセスをあれこれ考える時には、当然想定される障害やリスク、代替案なども考えますよね。つまり、ゴールした姿という楽観的なイメージと、失敗した時にどうするかという悲観的なイメージを両方持つことが重要なのだそうです。もっと言えば、楽観的なイメージと悲観的なイメージをどのようにバランスさせて、前に進む力に変えていくかが重要なんだと思います。具体的な方法を考えずにゴールを考えていても前には進みませんし、心配ばかりして恐れていたらなかなか行動に移すことができませんよね。

次に変わりたいと思っても変われない理由について。その理由について、「今の状況が、耐えられないほど苦痛ではないからだ。切実に望むものがないからだ。」と書かれています。う~ん、とてもストイックですが、これは僕も実感としてあります。必要性を心の底から理解している時は、実行するのはそれほど苦ではないと思います。苦であっても、必要なのでやらざるを得ない、という感じでしょうか。

さて、次は実行に関して二つほど。一つは、何かを「やろうかな、でも後にしようかな・・・」と迷ったときは、その実行のベストタイミングは「今」だということ。「後で」は永遠にやってきません。これはとても耳が痛い言葉ですが、まさにその通りだと思います。最初の一歩さえ踏み出せば物事はどんどん進んでいくもの、最初の一歩は小さくてもいいので、「今」始めてみるといいかも知れませんね。これに付随して、こんな記述がありました。

本当に残念なのは、ただ時間を浪費するだけでなく、待っている間に頭の中にあった目標が消えてしまうことだ。将来、何かになりたければ、必ずいま何かをしなければならない。

本書には、「行動に移さないアイデアはゴミだ」という強烈なタイトルのコラムがあります。しかし、せっかくのアイデアも実行に移せなければ、結果としてゴミになってしまうという意味では正しいのかも知れませんね。

実行に関するもう一つのトピックは、「できない理由」に関してです。できない理由を述べる前に、やってみたのか?著者はこれを実験精神と呼んでいるのですが、何事も実験だと思えば、実行に移すハードルはかなり下がります。僕は、厳密に言えば実際にやってみないと「できない理由」などわからないのではないかと思います。この辺りは精神論と言えなくもないですが、頭の片隅に置いておくと、いざという時に後押ししてくれるかも知れませんよ。

最後に、「目標達成率を高める観察の力」というトピックです。これは、人は誰かに見られていることを意識すると行動が変わりやすいということだそうです。そして、「誰か」というのは自分自身も当てはまります。一時期流行ったレコーディングダイエットなどは、この力を応用したものなんだと思います。僕も昨年末から今年にかけて家計簿、体重記録などをつけ始めました。これが本当に効果が実感でき、意識の力はこれほどなのか、と思っています。これについてはまた改めて書きたいと思います。

いくつかトピックをご紹介してきましたが、本書の中にはもっともっと沢山のアイデアが詰まっています。非常にストイックな印象を受けますが、どれも正論だと思います。以前にも書きましたが、この手の本は読んだ後、取捨選択やアレンジをして自分のやり方として昇華させる必要があるものです。少なくともそのための重要なヒントは散りばめられているので、実行力について真面目に考えてみたい方は是非読んでみてください!

自分の秘密 才能を自分で見つける方法

今日は、北端康良 著の「自分の秘密 才能を自分で見つける方法」という本をご紹介したいと思います。著者の肩書きは、才能心理学協会 理事長。そんな学問分野や団体があるのを始めて知りましたが、タイトルに惹かれて購入してみました。

世の中には偉人と呼ばれるすごい人が沢山います。彼らは皆、何かしらの才能に恵まれた人たちのように見えます。本書は、何故彼らはそのような才能を手に入れることができたのか、という問いかけで始まります。

才能が継続によって培われるものだとか、その継続を支えているのは切望感や感情である、というのはよく言われますね。著者は、その切望感や感情を生み出している秘密を明らかにすべく、様々な偉人の人生を検証していきます。このパートが「プロローグ」になっているのですが、分量的には全体の半分近くを占めており、検証にとても力を入れていることが読み取れます。数人の偉人の人生が著者の解釈で語られており、お話として読むにも面白いですよ。

長いプロローグが終わると、いよいよ「才能の秘密」を解き明かす段階に入っていきます。そこには、5つの秘密があると言います。ここでは、特に面白いと思った最初の3つをご紹介したいと思います。

  1. 才能の源泉
  2. 能力の源泉
  3. 才能のベクトル
  4. 時代の声
  5. 才能の闇

まず一つ目の秘密、才能の源泉。ここで語られるのは、「才能の源泉は、人生のルーツにある」ということです。この人生のルーツという言葉、なかなか答えるのが難しい質問ですよね。それに対して著者は、なかなか面白い切り口を提供してくれています。

世の中の人間には、二種類の人間しかいない。
二種類の人間とは、「ある人」と「ない人」です。

人生に「あったもの」もしくは「なかったもの」がその人に大きな影響を与え、才能の源泉になっているということのようです。何が「あった」のか、または「なかった」のかは人によって違いますが、それらの個人的な体験を通して感じた感情が、人を突き動かす原動力になる。またそれは、身近な体験であればあるほど、強烈であればあるほど、大きな原動力になります。

例えばとても身体が弱かったことが強烈な体験として焼きついている人は、将来自分と同じような境遇の人を助けたい、という志を持つかも知れませんよね。この例では、健康な身体が「なかった」と考えることができます。一方、小さい頃から父親に憧れて育った子供が、父のようになりたいと思ったとします。これは、尊敬すべき父親が「いた(あった)」と考えられます。

「ある」体験や「ない」体験、皆どちらの体験もしているはずですが、その人にとって最もインパクトを与えた体験がどちらかによって才能の源泉は異なる、というのが大きなポイントだと思います。才能の源泉が違えば、以下のような違いが出ると言うのも面白いですね。

「ある人」は維持し、広げる人で、「ない人」は変革し、創り出す人。

続いて二つ目の秘密、「能力の源泉」についてです。第一の秘密で扱った切望感を満たすためにはそれなりの「能力」が必要ですよね。著者は「能力」を「能力の源泉 × 技術」、「能力の源泉」を「無意識的に繰り返している感情・思考・行動のパターン」とそれぞれ定義しています。

これはつまり、能力とは単純な技術のことではなく、感情・思考・行動のパターン(能力の源泉)と技術が結びついたもの、ということを言っているのだと思います。さて、この定義で考えれば、少なくとも「能力の源泉」がない人など存在しません。感情・思考・行動に一切関わらずに生きてきた人などいませんからね。

では、感情・思考・行動のパターンとは何でしょうか?それは、普段から何気なく行っている感情→思考→行動という一連の流れの中にある一貫性のことです。ある出来事に対して何かしらの感情を持ち、それを自分の中でどのように考え、その結果どのような行動を起こしてきたでしょうか。そのようなパターンが度々繰り返されてこなかったでしょうか。そういったパターンは繰り返されることでどんどん強化され、自分だけの強みになっていきます。

著者はこのパターンと具体的な技術が結びついたもの、それがその人特有の能力だと言っているのだと思います。能力の定義の中に感情や思考の要素が入ってくる、というのはなかなか面白いですね。コンピテンシー(優れた業績を達成している人の基本的な特徴)理論でも、単純な技術は比較的習得が容易とされていますが、要は技術だけで優位性を保つのは難しい、ということなのでしょう。

三つ目は才能のベクトル。これは言い換えればビジョンのことです。そのヒントは、

「誰を幸せにしたいのか?」
「その人のために、どんな理想の未来を描き、目指すのか?」

という問いに答えが隠されていると語られています。そして、「才能のベクトル」の章の最後には以下のように書かれています。

あなたは、誰を幸せにしたいでしょうか?
かつての自分のような人でしょうか。両親や兄弟姉妹でしょうか。友人でしょうか。
その人を、どんな世界に連れて行きたいでしょうか?
「これが満たされれば、みんな幸せになれた」と、あなたが思っていた世界。
その場所は、かつてあなたが「愛する人を必ず連れて行く」と胸に誓った約束の地。
ビジョンとは、「約束の地」のことなのです。

僕はこのフレーズがとても気に入っています。ビジョンとは単なる未来予想図ではなく、想像しただけで心躍るような、感情に訴えかけるような、そんな絵である必要があると、僕も思うからです。

5つの秘密のうち3つをご紹介しましたが、如何だったでしょうか?既にご紹介した3つの秘密についてもっと詳しく知りたい!という方や、残りの2つも気になる、という方は是非本書を手に取ってみてくださいね。才能というテーマについてとても深く考えられている良書だと思います。

※ 本書の最後には、「最後の秘密」として、実はもう一つ秘密があることが書かれています。が、内容は明かされておらず、読者に問いかける形になっています。僕も自分なりに答えを考えて、思いついたら後日改めて書きたいと思います。

自分を超える法

今日は、ピーター・セージ 著の「自分を超える法」という本をご紹介したいと思います。このピーター・セージは、世界的に有名なコーチ、アンソニー・ロビンズの公式トレーナーに史上最年少で認められた人です。本書の中でも彼のキャリアが語られていますが、22社の会社を経営し、現在は太陽エネルギー関連の一兆円規模のビジネスに取り組んでいるみたいです。

さて、そんなすごいキャリアを持つ彼の本。肝心の内容は、いわゆる成功哲学の部類に入ると思います。「真の成功」を手に入れるために必要なことは何か、を5つの法則という形で書き記してあります。

  1. 「成功の心理学」
    成功の80%は心理で決まる
  2. 「お金のつくり方」
    資金ゼロでもビジネスはできる
  3. 「リーダーシップ」
    人間関係の達人になる方法
  4. 「世界観をつくる」
    人生に力を与える考え方
  5. 「文章の力」
    言葉ひとつで劇的な成果を上げる

僕は「成功」を目的として掲げた本というのはあまり読まないのですが、著者の言う「真の成功」の定義に共感するところがあったので読んでみました。

お金がたくさんあっても、大豪邸に住んでいても、忙しく仕事をするだけで、恋人や友人、家族と会話をする時問がないのでは、成功とはいえません。経済的豊かさを味わい尽くすライフスタイルを手に入れ、「人生が充足していると感じる心が伴ってこそ、真の成功といえる」はずです。

個人的には、必ずしも経済的豊かさがここで言う「真の成功」の絶対条件だとは思いませんが、人生が充実していると感じる心を持つことが重要、という考え方にはとても共感します。

それでは5つの法則のうち、僕が特に参考になった「成功の心理学」について少しご紹介したいと思います。

成功の心理学って何?と思うかも知れませんが、内容は人間の行動の裏にある欲求についての記述がメインです。人間の欲求と言うとアブラハム・マズローの欲求段階説が有名ですが、著者はそれとは異なる「シックス・ヒューマン・ニーズ」という考え方を示しています。人間には6つの欲求がある、というもので、内容は下記の通りです。

  1. 安定感・・・安定したいというニーズ
  2. 不安定感・・・変化が欲しいというニーズ
  3. 重要感・・・価値ある存在でありたい、自分は特別でありたいというニーズ
  4. 愛とつながり・・・愛されたい、誰かとつながりを持ちたいというニーズ
  5. 成長・・・成長したいというニーズ
  6. 貢献・・・何かに貢献したいというニーズ

安定感というニーズは、人間の基本的な欲求であるとしながらも、現代社会においては、この安定感というニーズが過剰に求められすぎている、と著者は言います。そもそも、絶対の安定が保証されている場所などどこにもないですし、逆に完璧に安定した生活があったとしても、人間はそれに耐えられないですよね。それは、安定と逆のニーズ、不安定感というニーズがあるからです。人間には、変化が必要という考え方ですね。

安定感と不安定感は相対するもので、それぞれのバランスを取りながら人は生きているのですが、ここでなるほどと思わせる名言が出てきます。人生の質は、あなたが居心地のよさを感じられる、不安定感の量に正比例する。確かに、自分のストレスにならない範囲で変化に満ちた毎日、というのはちょっと魅力的ですね。だから、不安定な状況に対処する能力を身につければ、人生の質は向上する、ということになります。

重要感というのは、自分は価値のある人間だと思いたい、というニーズです。これは上手く付き合えば自分を動かす強い原動力になり得るのですが、エゴとの関わり方によって建設的にも、破壊的にもなり得ると言います。エゴと結びついてしまうと、自分の欲を満たすため、自分の重要さを誇示するという行動に出てしまうのです。

愛とつながり、というのは誰かから愛されたい、つながりを持ちたいというニーズ。これは重要感と対極にあるニーズです。重要感というのは自分は特別でありたい、というニーズですから、これを求める時点で他人とは分離した状態となります。

さて、安定感 vs 不安定感、重要感 vs 愛とつながり、というようにこの2対のニーズはそれぞれ対立しており、人はそのバランスを取ろうとします。しかし、このバランスを突き詰めることが人生の目的ではない、と著者は言っています。では、何が人生の充足感を決めるのか?それが「成長」と「貢献」です。成長と貢献に関しても面白い論点が色々と紹介されていますが、ここでは以下の文章を引用するに留めておきます。

自分の「失敗や試練」を、世の中に役に立つものに転換させて「成長」し、自分の一生を超えた、永続的な「貫献」という名の財産を残すことこそが、真に満たされる人生なのです。

このヒューマン・シックス・ニーズという考え方。このフレームワークを使うと人間の持つ様々な側面をシンプルに説明できると思います。本書には、これ以外にも様々な考え方・フレームワークが提示されています。内容の半分はビジネス関連ですが、一応起業家のはしくれである自分にとっては、それもとても参考になりました。

全体としてとても読みやすく、面白いだけでなく、読んでいて頑張ろうと思えるような、そんな本だと思います。一度だけでなく、何回か読み直してみたいと思っています。Amazonでもなかなか高評価のようですね。気になったら是非読んでみてくださいね!

やりきる技術―最高のパフォーマンスを生み出す仕事のきほん

今日ご紹介する本は、小倉広 著の「やりきる技術―最高のパフォーマンスを生み出す仕事のきほん」です。僕は特に目的がなくても定期的に本屋さんに足を運んで何か面白い本はないか、と情報収集するのですが、この本もそうやって出会った本です。

本書は、物事を「やりきる」ためにはどうすればいいか、について書かれています。何かを始めたはいいけど、続かなくて途中でやめてしまう。そんな経験、僕も沢山あります。この本のいいところは、「やりきる」ための具体的な技術だけでなく、「やりきる」ことが大切な理由や、何故「やりきる」ことが難しいのか、という考察が優れている所だと思います。

少しご紹介しましょう。まず、「やりきる」ことが何故大切なのか?すぐ思いつくのは、「継続は力なり」という言葉ですね。コツコツと続けていくうちに大きな力になる、ということです。しかし、この本では違った観点からその理由を説いています。まず、「やりきる」ことができないと、「腐ってしまう」という観点です。

できないのであれば、約束をしない方がいい。続かないなら、約束を反故にして、やめてしまった方がはるかにいい。決めたことを守れない風土ができあがってしまうくらいならば、最初から約束をしない方がはるかにマシなのだ。
そして、これは個人にも当てはまる。個人に「負け癖」がついてしまうのだ。「やりきる」ことができない弱い自分に慣れていってしまう。それが一番恐ろしいのだ。

僕もこれは心当たりがあります。何かを始めたにも関わらず、途中で投げ出してしまうことが続くと、少なからず自己嫌悪に陥りますよね。自尊心を守るために言い訳を用意して「しょうがなかった」と自分に言い聞かせてはみるのですが、こうした体験は少しずつ自己評価を蝕んでいくように思います。

そして次は、「やりきる」ことで得られるものという観点。著者は、「やると決めたこと」=約束と捉えて、他人との約束を守ると「信頼」が、そして自分との約束を守ると「自信」が手に入ると言います。「やりきる」ことで継続による大きな力だけでなく、信頼や自信まで勝ち取ることができる、だから「やりきる」ことは重要なのだ、ということです。なるほど。これは非常に共感することができました。

気がつけば、ブログを書き始めて1ヶ月が経ちました。原則毎日更新を目指してきましたが、忙しくて書けない日もありました。でも、何かを始めては三日坊主だった僕にとっては、とりあえず続いているというのはちょっとした奇跡です。

他にも、読書、家計簿、ダイエット、ジム、早起き、等を去年から始めました。それらは、完璧にはほど遠いですが、今も何とか続いています。まだ何一つやりきってはいませんが、とにかく続いている、ということはとても自信になります。著者が言う、自分との約束を守ると「自信」が手に入る、というのは僕の実体験から見ても正しいと思います。

まず小さなことから何か行動してみて、それを達成する。それを繰り返すことで自分に対する評価を改善していくという手法は、カウンセリングでも使われる方法です。小さくても、何か一つ成功体験を得ると、「何だできるじゃん、じゃあ他のこともできるかもしれない」、という気持ちになってきます。

僕がやっていることは、常日頃からしっかりやっている人から見れば当たり前のことです。しかし、それが今まで全くといっていいほどできていなかった僕にとっては、生活改善から得られる実利と、それらを通じた自己評価の改善という一粒で二度おいしい状況になっています。

さて、では何故「やりきる」ことってこんなに難しいのでしょう。著者は、「やりきる」ためのステップは3つあるのだと言います。そのステップとは、「始める」「続ける」「やり直す」です。そしてその3つのステップそれぞれに、落とし穴があります。

著者がこの中でも特に重要だと説くのが、「やり直す」技術。完璧にできないのならやめてしまえ、いわゆるオール・オア・ナッシング的な考え方ではなく、そもそも完璧になんてできないのだから、例え続かなかったとしても何度でもやり直せばいい。まさに、某漫画の「あきらめたらそこで試合終了」ですね。

僕は元々オール・オア・ナッシング的な思考が強かったので、何かを一日サボったら「もうだめだ」となり、そこでやめてしまっていました。でも、一日サボっても、また次の日からやり直せばいいんですよね。そして、やり直すのをやめない限り、失敗したことにはならない。そう考えると、何かを続けるというのは、もっと気楽にやればいいということなのかも知れません。

最後に。これは僕個人の考えですが、上記で引用した言葉、「できないのなら、約束をしない方がいい」というのは、極論かも知れませんが、非常に重要だと思います。気楽にやればいいとは言え、何かを成し遂げるにはそれなりの覚悟が必要です。でも、何かを「とりあえず試し」で始める度に、そんな覚悟はしていられません。そんな時は、「これはお試し」と割り切って、やめる時はスパっとやめてしまうことも重要だと思います。無駄に自信をすり減らす必要もないですからね。

本書には、「始める」「続ける」「やり直す」というそれぞれのステップに役立つ考え方や手法が沢山紹介されています。心理学的な考え方や、精神論、時間管理に至るまで、役に立つポイントが必ずあるはずです。物事を続けられず、知らず知らずのうちに自信をなくしてしまっている方に是非おすすめしたい一冊です。この本に書いてある方法を自分なりにアレンジして、独自の「やりきる技術」を体得できるといいですね!

自己肯定感って、なんやろう?

今日ご紹介するのは、臨床心理学者である高垣忠一郎と、版画家の山田喜代春によるコラボレーションから生まれた絵本、「自己肯定感って、なんやろう?」です。

この本は、自己肯定感という分かっているようで分かりづらい概念を、絵本という形で表現しています。臨床心理学者の高垣さんが不登校の子どもの親御さんに向けて話した講演録に、絵をつけたようですね。講演録ということもあってか、終始関西弁で語りかけるような口調で、なんだかほのぼのします。版画も味があり、全体的に優しい感じがする、いい絵本だと思います。

絵本なのでボリュームも50ページと少ないです。が、読んでみると結構内容は深いです。

自己肯定感というと、自分の中に肯定できる部分を見つけること。そう考えてしまいがちですよね。でも、探しても探しても見つからない人はどうなるのでしょう。そもそも、肯定できるかどうかという基準はとても相対的なものです。その基準が比較的緩やかな人は、自分の中に肯定できる部分を沢山見つけられるかも知れません。

でも、その基準が厳しい人は、肯定できる部分を見つけられずに苦しんでしまうのではないでしょうか。こう考えると、「自己肯定感」という概念を間違って使うと、人によっては余計苦しくなってしまうのだと言えます。

著者の言う自己肯定感はこうです。人にはそれぞれ欠点や弱点、ダメなところはあります。もちろん、無いにこしたことはないですし、それそのものを肯定することはできません。でも、欠点があってもいいんです。欠点を抱えながらも一生懸命生きる、その健気さに免じて自分を「こんな自分でもいい」と赦してあげる。この感覚が自己肯定感と言うのだそうです。

自分のいい所に目を向けましょう!という感覚と、この自己肯定感のニュアンスの違い、なんとなくわかりますよね。

自分にダメな所があることを認めつつも一生懸命生きるためには、そのダメな所を認識し、その上で受け入れる必要があります。それは、ダメな部分がある自分を、「それでもいいんだ」と受け入れてあげるということです。

自分のことを好きになれない人、いると思います。本書の中では、そうなってしまう原因の一つとして広告を挙げています。これは僕も非常に強く共感する部分なのですが、世の中のメディアを見ていると、コンプレックスを刺激するようなメッセージが飛び交っていますね。例えばダイエット広告。見ている人からすれば、「ダメな所」を指摘され、「もっとこうした方がいいですよ」と日々言われ続けていることになります。

また、最近は情報がすぐ手に入るため、どうしても人と比べがちですよね。他人はみんなこうなのに、自分は…。そんな状況では、不安なので無理やり自分の「いいところ」を見つけようとします。前述の通り、それでも見つからない人はさらに苦しむことになりますし、なんとか見つけたとしても、「~だから自分は大丈夫」というように、自分を認めるために条件が必要になってきてしまうんですね。

自己肯定感とは、自分の長所を無理やり見つけることではなく、ダメな部分も含めた自分を「それでもいいんだ」と認め、受け入れること。諦めや開き直りとも違うものだと思います。僕も、「自分はダメだ」と思うことがよくあります。おそらく、自分の理想が高すぎて、それについていけない現実の自分が嫌なのだと思います。そんな自分にイライラせず、きちんと受け入れられるようになりたいと思います。

自己肯定感の意味がよくわかる本書、とてもおすすめです。30分くらいですぐに読めるので、是非読んでみてください。読み終わると、なんだかほっこりしていると思いますよ!

「ありのまま」という才能―性格に隠された成功のヒント

今日は、ロブ・ヤン 著の「『ありのまま』という才能―性格に隠された成功のヒント」という本をご紹介します。著者略歴によると、著者は心理学の博士で、成功の心理学の権威として広く知られている人とのことです。原題は「Personality: How to Unleash Your Hidden Strengths」です。う~ん、大人の事情なのかも知れないですが、副題はそのままの方がよかったような。

この本では、人の性格を7つの特性に分けて考えます。以下がその7つなのですが、こうして眺めているだけでも自分はどちら寄りかな、というのがある程度判断できると思います。この本では、それぞれに対してチェックリストがついていて、質問に答えることで自分がどちら寄りなのかを判断することができます。

  1. 好奇心
    結果を出す「現実派」 vs 先を追い求める「ロマンチスト」
  2. ストレス抵抗力
    プレッシャーに弱い「心配性」 vs ものごとに動じない「楽天家」
  3. 社交性
    ひとりが好きな「孤高の人」 vs 大勢が好きな「社交の人」
  4. 自律性
    行動の前に考える「慎重派」 vs 衝動のままに生きる「奔放派」
  5. 共感力
    ズバリ本音の「率直派」 vs 相手に合わせる「気配り派」
  6. 学習意欲
    学ぶことが命「知識派」 vs 行動で学ぶ「実践派」
  7. 上昇志向
    現状に満足の「のんびり屋」 vs 意欲に満ちた「野心家」

以前ご紹介したビッグ・ファイブによく似ていますね。これらは特性なので、どちらかのタイプに必ず当てはまるわけではなく、どちらの傾向がより強いか、ということになります。場合によっては、どちらの要素も持ち合わせている、ということもあります。また、どちらかが良くてどちらが悪い、というものではなく、それぞれ長所と短所があります。

それぞれの診断結果の後には、タイプ毎にアドバイスが書いてあるのですが、これがとても参考になります。個性は個性として受け止め、どういうことに気をつければいいか、という観点でヒントが書いてあるので、受け止めやすいと思います。また、自分とは逆のタイプの説明を読むのも発見があって面白いですよ。

この本には「はじめに」の部分にとても大事なことが書いてあります。

わたしたちは、性格的な嗜好をある程度もって生まれてきます。科学者によると、性格の半分までは両親から受け継いだもの、つまり遺伝子レベルのもののようです。(中略)

けれども、遺伝子はストーリーの一部分にすぎません。遺伝子はあなたの「ルール」の原型、あるいはあなたという「台本」の最初の原稿をつくりますが、そのあとに受ける教育がその原稿に手を加えるのです。(中略)

大人になったわたしたちにとって、性格のもととなる台本がすべて役立つとはかぎりません。ときには、自分の望みを妨げるような行動を、性格が指示するからです。
ならば、台本は書きなおすことができるのでしょうか?
はい、書きなおすことができます。しかも、あなたはすでにそれを日々行っているのですよ。

この「人は変われる」というメッセージは、とても勇気づけられますね。

それと、この本のいいところは、診断では終わらないところです。最終章には「アクションプラン」という章があり、これから何をするか、を考えるステップが用意されています。行動しなければ何も変わらない、ということなのでしょうね。

さて、最後に。これは僕の個人的な意見ですが、この手の性格診断は活用方法がとても重要だと思います。結果を自分なりに消化して、今後の自分の生活・行動に活かしていく分にはいいと思うのですが、場合によっては、真実かどうかもわからない欠点や短所を「認知」し、「強化」してしまう可能性があると思っています。

性格診断は傾向を出すには良いと思いますが、それだけで人間の性格を表せるほど僕たちは単純ではありません。状況や精神状態等で大きく変わるのですから。診断結果は参考程度にし、それを踏まえて自分はどんな人間なのか、と自分なりに考えてみる必要があるのだと思います。

「変わりたい」と思っている方や、自分を知るためのきっかけが欲しい方にオススメの一冊です。機会があったら是非読んでみてくださいね!

ザ・ミッション 人生の目的の見つけ方

今日ご紹介する本は、ドクター・ジョン・F・ディマティーニ 著の「ザ・ミッション 人生の目的の見つけ方」です。この本の著者であるドクター・ジョン・F・ディマティーニは、ベストセラーになった「ザ・シークレット」にも出てきた人みたいです。小学生の頃に学習障害と診断され、一時はホームレス同然の生活をしていたらしいのですが、今では心理学や哲学、天文学など275以上の分野の知識を身につけているとか。275以上ってすごいな。

この本は、以下のように構成されています。

  • 第一部:人生の目的=ミッションを知る
  • 第ニ部:人生のスキルを磨く
  • 第三部:自分の人生を創造する
  • 第四部:リーダーとしての資質に目覚める

第一部で自分の人生の目的(ミッション)は何かを考え、第二部ではその目的(ミッション)を達成するために何に力を注いでいけばいいのかを明らかにします。第三部ではミッションを元に、自分の人生の総合計画を立てていきます。そして最後の第四部にはミッションを突き詰めていく過程でその分野のリーダーとなり、世の中にどうやって影響を与えていくかが書かれています。

この本の大きな流れを追っていくと、この手の自己啓発本では特に珍しくはない話の進み方のように見えますね。質問を通して自己分析を行って自分のミッションを明らかにし、それを元にビジョンを作る。そのビジョンを生きることで世の中に影響を与える(貢献する)という考え方は、以前このブログでご紹介した本でも度々語られている考え方です。

それでも僕がこの本をご紹介しようと思ったのは、個々の論点の中に非常におもしろい考え方が散りばめられているからです。いくつかご紹介したいと思います。

全ての人は、それぞれの「価値観の優先順位」に従って生きています。そしてその順位は、意識的に、もしくは無意識のうちに感じている「欠落」によって決定されています。

著者は、人生の目的を見つけるにあたって自分の価値観の優先順位を知る事がとても重要だと説いているのですが、それを決めているのは「欠落」だと言っています。欠落とは、自分が満ち足りていないと「思っている」部分のことです。つまり、欠落していると思うということは、それについて価値を感じているということなのでしょうね。

人生の目的のヒントは、自分の好きなこと、夢、ワクワクすること、など比較的ポジティブな部分にあるという考え方が多いですが、人によっては強烈な欠乏感という表われ方をすることもあるのではないか、という点でとてもおもしろいと思いました。

続いてはこれ。

「好きなことをしなさい。お金はあとからついてきます」とよく聞きますが、お金を稼ぐ道が1つしかないという意味ではなく、理想の職業を手に入れたときにやっと人生が花開くという意味でもありません。賢明な人は、何をしているかに関係なく、自分がしていることを好きになるのが鍵だとわかっているのです。

好きなことを突き詰める。言うのは簡単ですが、状況によってはリスクを負わなければできない、現実的に考えたらそんなリスクは取れないと考える人もいるでしょう。一方で、今自分がやっていることと好きなことは関係ない、だから今やっていることは無駄だと考えたり、今やりたくないことをやらない言い訳にしてしまうこともあります。

それに対して、著者は「好きなことをしても、していることを好きになっても、どちらでもいい」と言っています。世の中には多様な考え方があります。好きなことを突き詰めるために大きな決断をする生き方も素晴らしいですが、今やっていることを好きになって、それを一生懸命頑張るという生き方も、やはり立派だと思います。

最後はリーダーシップについて。この本を読んでいて、突然「リーダーシップ」という言葉が出てきたので少し違和感を感じました。が、よく読むと著者が言わんとすることがよくわかったような気がします。「リーダー」というのは上司・部下といった立場のことでもなければ、気質や性格のことでもありません。そうではなく、マインドセット、つまり心の在り方のことを言っているのだと思います。

そういう意味では、誰でもリーダーのマインドセットを身につけることができます。そのマインドセットを身につけるための方法についても触れられています。面白かったのは、「1日30分間、特定の分野について学ぶと、7年後にはその分野のリーダー(ここでは第一人者という意味)になれる」というお話。もしそれが本当だとすると、好きなことをコツコツ7年間続けていたら、気が付いたらその分野の第一人者になれるということですよね。ちょっとワクワウしますね。

人には最低一つ、否が応でもリーダーシップを持たなくてはならない分野があると思います。それは自分の人生です。この本にも「人生の主人公」という言葉が出てきますが、自分の人生をできるだけ思ったように動かしていくために、リーダーのマインドセットを身につけておくといいかも知れませんね。

本書には、ここでご紹介した以外にも沢山の論点が詰まっています。基本はベーシックな内容なので、あまりこういった本を読まない方にもお奨めですし、色々読まれている方にも様々な観点を提供してくれる本だと思います。機会があったら是非読んでみてください。

「こんなはずじゃない自分」に負けない心理学

今日は、晴香葉子 著の「『こんなはずじゃない自分』に負けない心理学」という本をご紹介したいと思います。帯には、「自信がない。居場所がない。理解してもらえない。そんな生き方不器用さん達に。」と書いてあり、本屋で思わず手にとってしまった本です。

今まで何ら関わりのなかった自分が心理学という分野に興味を持ったのは、「自己肯定感」という言葉を知ったのがきっかけでした。自分を肯定する、つまり「自分は今のままでいいんだ!」という感覚ですが、漠然と思い描いていた理想と、なかなかうまくいかない現実との狭間で苦しんでいたのでしょうね。この概念を知って以来、どうすれば「自己肯定感」を高められるのかを考えるようになりました。

「このままじゃいけない」、そう思う気持ちが前に進む力になっているうちはいいんですよね。でも、それが繰り返し打ちのめされていくうちに、「こんなに上手くいかないのは何か自分に重要な欠陥があるんじゃないか」なんて思い始めたりします。そうなると、どんどん自分が嫌いになり、自信がなくなり、人は立ちすくんでしまうのだと思います。

そんな状態にならないに越したことはありません。でも、長い人生の中、がんじがらめで前に進めなくなってしまうこと、ありますよね。そんな時にこんな本を読んでみるといいかも知れません。一つの長い話というより複数のTips的な話で構成されており、カウンセラーである著者の優しく、でもどこか力強い雰囲気に勇気づけられます。

この本の中には様々な心理学の理論が出てくるのですが、その中で僕が気に入っているものを一つご紹介します。

僕たちは、感情がある状況から直接引き起こされると思いがちですよね。例えば、ある人に批判された、それによって怒りをおぼえた、という具合に。批判されたことが「状況」、そしてそれによって怒りという「感情(結果)」が引き起こされた、となります。

しかし、本当にそうでしょうか?ABC理論では、この「状況」と「感情(結果)」の間に「思考」が存在しており、実は「感情(結果)」を引き起こしているのはその「思考」だと考えます。状況(Activating event)、思考(Belief)、結果(Consequence)の頭文字をとってABCです。

批判されたという例をもう一度見てみましょう。ABC理論で考えれば、批判されたことによって「自分を否定された」「恥をかかされた」「バカにされた」などの思考が生まれ、それによって怒りという感情が結果として生まれたと考えることができます。

自分を変えるのは簡単ではありません。そして相手を変えることや、自分の身の回りで起こることを変えるのはさらに難しいですよね。でも、思考(受け止め方)を変えることはできます。不愉快には違いありませんが、「この人は自分とは異なる価値観を示しているんだな」と思うことができれば、そこから何か学ぶことがあるかも知れません。

この考え方を突き詰めていくと、もともと世の中に起きている出来事に意味などなく、それに解釈をつけているのは僕たち自身だ、とも言えると思います。ものは考えよう、ってやつですね。何か嫌なことが起きた時、もし違う解釈で少しでも気持ちが楽になるのなら、そういう意味を勝手に「付けて」しまえばいいのかも知れませんね。

このABC理論以外にも、さまざまな考え方を簡潔に、わかりやすく紹介してくれています。自分自身のコンプレックスや人間関係で悩んでいる方に、気楽な気持で読んでいただきたい一冊です。