幸せがずっと続く12の行動習慣

今日は、ソニア・リュボミアスキー 著の「幸せがずっと続く12の行動習慣」という本をご紹介したいと思います。著者は心理学の教授で、ハーバードで学士を、スタンフォードで博士を取ったようです。すごい経歴ですね。

この本は、「幸せ」というものを真剣に研究し、幸せになるためにはどうすればいいのかを科学的な観点から解き明かした本です。結論から言うと、本当に素晴らしい本でした。

僕が見た時点では、Amazonでのレビューが全て5点満点(!)だったのですが、実際に読んでみて充分に頷ける内容だと思いました。「幸せ」という難しいテーマにこだわって研究している著者の熱意もすごいですが、書かれていることは全て裏付けがあり、怪しげな自己啓発本とは一線を画しているという所がポイントだと思います。

伝統的な心理学では、精神疾患の治療に重きが置かれていたため、どちらかというとネガティブな状態をゼロに戻す、そんな研究が主となってきました。しかし近年、心理学の知見をもっとポジティブに生きるためにも使えるのではないか、ということで「ポジティブ心理学」なるものが注目されているようです。この本もそのポジティブ心理学について書かれた本です。

さて、この本を読んでいてまず勇気づけられるのは、「人の幸せは何によって決まるのか」について書かれた部分です。その答えは、「遺伝」「環境」「意図的な行動」です。さらに、それぞれが人の幸福感に与えるインパクトは、50%、10%、40%という割合になっています。皆さんはこの数字を見て、どのように思われるでしょうか。

間違えて欲しくないのは、「実際に幸せかどうか」ではなく、「幸せだと思うかどうか」がこの割合で決まるということです。その上でこの数字を見てみると、やはり遺伝の影響は大きいですね。著者はこの遺伝によって決まる部分を、基準点(初期設定値)という呼び方で読んでいます。人が感じる幸福度は、生まれつきある程度決まっていて、様々な出来事によって上下動はするものの、ある程度の時間が経つと基準点に戻る特性があるようです。

次に環境ですが、10%しかないというのが面白いですね。これについて著者の言葉を引用してみましょう。

おそらく、最も意外に思われるであろう結論をこの円グラフは示しています。「裕福か、貧乏か」「健康か、病気がちか」「器量がいいか、人並みか」「既婚者か、離婚経験者か」などの生活環境や状況による違いは、幸福度のわずか10%しか占めない、ということを。

この原因は、「快楽順応」というキーワードにあります。人は、環境の変化に、驚くほど早く「慣れてしまう」のだそうです。著者はこの原因として、願望がどんどん大きくなっていくこと、まわりの人と比較してしまうこと、の二つを挙げています。著者によれば、「多くの人が幸せになるために環境を変えようと努力するが、これこそ幸せを追求する上での最大の皮肉」だそうです。

さて、遺伝と環境、合わせて60%ですが、遺伝は変えられるものではありませんし、環境は変えるのに大きな労力を要する割には効果が小さい。そう、鍵は残りの40%、つまり「意図的な行動」にあるというのが本書のテーマです。行動習慣を変えることによって、幸福度は高めることができる、というわけです。

ちなみに、監修者のあとがきにもありましたが、40%までしか幸せになれない、という意味ではありません。40%を使って非常に幸福な状態になることも可能です。これは体重に例えることができます。元々太りやすい体質かどうかは遺伝で決まりますが、適切な栄養管理や運動を行うことで痩せることは可能です。幸せについても同じ。元々幸福度を感じにくい体質であっても、意図的な行動によって幸せになることはできるのです。

では、その意図的な行動とは一体何か?タイトルにもあるように、12の行動を習慣付けることが提案されています。しかし、一度に12もの行動を行うのは無理があります。そこで、「幸福行動診断テスト」というものがあります。これは、12の行動のうち、自分に合ったものがどれかを診断するためのテストで、まずはテストで得点の高かった4つから行動に移しなさい、とされています。12の行動とは、下記のような内容です。

  1. 感謝の気持ちを表す:自分が恵まれていることを数えあげるとか、これまできちんとお礼を言ったことがない相手に感謝やありがたいという思いを伝えること。
  2. 楽観的な気持ちを高める:将来の最高の自分を想像したり、それについて日記に書いたり、あるいはどんな状況でも明るい面を見ること。
  3. 考えすぎない、他人と比較しない:問題についてくよくよ悩んだり、自分を他人と比較したりしないために何かをすること。
  4. 人に親切にする:相手が友人であっても見知らぬ人でも、直接にでも匿名でも、その場の偶然でも計画したものであっても、人に親切にすること。
  5. 人間関係を育む:もっと強めたい人間関係を選んで、それを深め、確認し、楽しむために時間やエネルギーを注ぎ込むこと。時には修復することも含む。
  6. 問題に立ち向かうための対策をとる:最近のストレスや困難を克服したり、トラウマから学んだりする方法を身につけること。
  7. 人を許す:日記をつけたり手紙を書いたりして、あなたを傷つけたりひどい扱いをした人への怒りや恨みを手放そうとすること。
  8. 心から打ち込める活動をもっと増やす:家庭や職場で「我を忘れる」ほど打ち込め、やりがいがあり没頭できる経験を増やすこと。
  9. 人生の喜びを深く味わう:人生の喜びや驚きの時間にもっと注意を向け、そのことを味わい、思い出すこと。
  10. 目標の達成に全力を尽くす:自分にとって意味のある重要な目標を1つ~3つほど選び、時間を費やして追い求める努力をすること。
  11. 宗教やスピリチュアルなものに関わる:教会や寺社などにもっと足を運び、スピリチュアルなものをテーマにした本を読んだり、そうしたものについて考えたりすること。
  12. 身体を大切にする:運動や瞑想を行うこと。

注目すべきは、これらの行動に幸福度を高める効果がある、ということが少なくとも現在の心理学で実証されているということだと思います。ちなみに僕は、楽観的な気持ちを高める、人間関係を育む、心から打ち込める活動をもっと増やす、人生の喜びを深く味わう、という4つが当面の行動目標になりました。

もちろん、本書にはそれぞれの行動についての詳細や、具体的にどんなことをすればいいのかなどがきちんと示されています。誰もが幸せになりたいと願っています。しかしその方法を見つけることは難しいですし、あったとしても怪しげな感じがしますよね。この本はその点にとても配慮して書かれていると思いますので、どんな方にもオススメできる一冊です。幸せになりたい!という方は是非読んでみてくださいね。

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