媚びない人生

今日は、ジョン・キム 著の「媚びない人生」という本をご紹介したいと思います。本屋でふと見かけた本なのですが、帯に「従順な羊ではなく、野良猫になれ」と書かれていて、何だかおもしろそうなので購入し読んでみました。

著者のジョン・キムという人は、慶應大学の准教授で、メディア・コミュニケーション研究所というところでゼミを持っているらしい。このゼミは、視察に訪れたハーバードの教授をして、「ハーバードやエールよりも上じゃないか」と言わしめたほど厳しく、レベルが高いそうです。

本書は、そのゼミ生たちが卒業する際にはなむけの言葉として送っている最終講義「送る言葉」の内容が原点となっているそうです。内容はこれから社会に出ていく学生たちに「最後にこれだけは伝えたい」というメッセージのようなものになっています。従って、一つの論点について順序立てて書いた本というよりは、様々なメッセージが次々と登場する、という構成ですね。

これから社会に向けて巣立っていく学生向けということなので、社会人からしてみれば当たり前、と思う部分も多くあります。しかし、ハッとさせられる部分、頭ではわかっていても実践できていない部分が多々あることにも気づかされました。そして何より、内容がとても熱い。心からのメッセージであることがわかりますし、やはり教育者なのでしょう、厳しさの中にも愛情が感じられます。

そんなこの本、いくつかの論点をピックアップしてご紹介しましょう。まずはプロローグから。著者は「強さ」だけが人間を独立した存在に導く、と説きます。その強さとは・・・

  • お金とか名誉とか外面的な意味での強さではなく、内面的な強さだ。
  • 自分自身の尊厳に対する最大限のリスペクトを払える強さだ。
  • どんなに辛い逆境でもいつでも受けて立つ気概を持てる強さだ。
  • 自身のすべての行動に対し結果に対する全責任を自分で負う決意の持てる強さだ。
  • 何事にも縛られない何事にもとらわれない、そして物事をありのままの状態で受け入れられる大きくそして動じない強さだ。
  • 自分がこの世に存在する間に起きる全ての出会いや出来事は奇跡であると信じ、それが持つ意味を省察できる強さだ。
  • 他者の存在に対する最大限の尊敬を払うとともに他者の感性、思考、行動に対する深い理解のために努力をする。そして他者の不完全性に対し海のような包容力を持てる強さだ。
  • 愛する人のためなら世の中を敵に回せる強さだ。
  • 生きるすべての瞬間を人生の最後の瞬間になるかもしれないという緊張感を持ち、その瞬間に対する全ての審決を注ぐことのできる、そしてその緊張感や集中力を死ぬその最後の瞬間まで持続できる強さだ。

う~ん、熱い。改めて眺めてみると、このプロローグにメッセージのほとんどは集約されていると言っていいかもしれません。

「本当の自分」という言葉があります。本当の自分というのは何なのか、そんなものが本当にあるのか、と僕は思っていました。それに対して著者は、とてもわかりやすく説明してくれています。著者によれば、本当の自分とは、まだ社会性を持っていない幼児の自分だと言います。人間はそこから成長する過程で、周りに評価されたり形容されたりしながら、社会的に生きていきやすい自分を作り上げていきます。

社会に迎合して生きていくということは、不安を消し去ることでもあるそうです。確かに、誰かから評価されるように生きていけば、少なくともその人達からは支持されるわけで、安心です。しかし、そういう生き方こそが、人間を弱くしていると書かれています。むやみやたらに反骨精神を持てといっているのではなく、自分の軸を確立して、そして自分のモノサシで社会を測り、自然体で生きていくということが重要なのだと思います。

この本の中でも、社会的な「常識」は疑ってかかれ、という趣旨の事が書いてあります。そういった常識は非常に相対的なものであり、立場によって、時代によって違ってくるものです。このような常識というものは改めてその意味を考える必要がないので便利ではあるものの、ただ一つの普遍的な真実などというものは存在しない、あるのは複数の社会的な真実だけだ、と語られています。

何かに挑戦する時は、こういった「常識」に惑わされることなく、自分の信じた道を貫くことが重要ですね。本書にも、「結果に対する全責任を負う決意に基づいた選択は、常に正しい」と書かれています。その結果、自分が信じる「社会的な真実」を構築することだってできるのですから。

それと、就職活動について、とても面白い意見が書かれていました。

しかし、認識しておかなければいけないことがある。それは、学生の就職活動は、社会を知らないままに行われているということだ。社会に出たことがないのに、業界や企業を選ばなければならなかった。残念ながら、社会についてはわかっていないのだ。それは認めなければいけない。
そしてもうひとつは、自分自身について、まだわかっていないということである。就職活動で、自己分析はしたかもしれない。しかし、社会に出て、実際に働いた経験はない。ある仕事をしたときに、本当の自分がどんな反応をするのか、実はまったくわかっていないかったのだ。

なるほど。これは本当にそうですね。就職してから、思っていたのと違う、とギャップに悩まされる学生も少なくないのだと聞きます。しかし、それはある意味当り前と言えます。自分のことも相手のこともよくわからない状況で選んだんですから。本当の就職活動は、5年後にもう一度すればよい、というのが著者の主張です。大事なのは、その時までに本当にやりたいことをはっきりさせ、それをやるための実力をつけておくことなのだそうです。

この本を読んでいて、僕個人は「居心地の良さ」という言葉にハッとさせられました。居心地の良い状態というのは、ある意味警戒すべき状態である、と書かれています。これは、居心地によい状態に居座り続けるということは、新しい挑戦を怠っている可能性がある、ということを指しています。必要だとはわかっていても目をそらしていること、やろうやろうと思っているけどなかなか踏み出せていないこと。そういうものを一度棚卸ししてみようと思っています。

さて、如何だったでしょうか。学生向けとは言え、既に社会に出ている人が読んでも学ぶべきことは沢山あると思います。厳しくも優しい著者のメッセージに、背筋が伸びるような気持ちになりますよ。機会があれば是非読んでみてくださいね!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です