今日は、リチャード・H・モリタ 著の「完結版マイ・ゴール 成功の秘訣は“選択”そのものにあった!」という本をご紹介したいと思います。「完結版」と付けられていますが、他にも新装版、ダイジェスト版など、Amazonで探しただけでも4つのバージョンが存在します。バージョン間の違いはよくわかりませんが、完結しているのならそれを読もう、ということで完結版を読んでみました。
この本はいわゆる成功哲学、自己啓発本にジャンル分けされると思いますが、主張はとてもわかりやすく、シンプルです。「はじめに」の冒頭には以下のように記されています。
結論から。
人生は選択の連続であり、今の人生は過去の選択の結果です。
そして未来は、これからあなたがどんな選択をするのか、その選択によってすべてが決まります。
もちろん目標を達成していくプロセスにおいては、たゆみない、人一倍の努力は当然のことですが、成功と自己実現の真相には、そうした「積極的に懸命な努力をしたから」というだけでは到底説明することのできない重要な事実が横たわっています。その事実こそ“選択”の問題だったのです。
成功哲学というと、いかに成功するかという方法論だと考えがちです。つまり、どのように考え、行動すれば成功できるのか、というプロセスに着目する考え方です。しかし本書では、プロセスも勿論重要だけれども、それよりも大事なのは「どんな目標を選択するのか」なのではないか、と説いています。
著者がこのような考え方に至った経緯が本書の中でも説明されていますが、当初はやはり「どうすれば成功できるか」という論点がスタート地点だったようです。それを調べるべく、成功者にインタビューを重ね、共通項目を抽出して「究極の成功ノウハウ」を作ろう、という研究を始めました。
しかし研究を進めていくうちに、ほとんどの成功者は自分がどうやって成功をつかんだのか、その本当の理由を上手く説明できていない、ということに気が付きました。人一倍努力をした、成功した姿を鮮明にイメージした、ポジティブだった、などと答えは返ってくるのですが、よく考えてみると的確な答えになっていない。そこからさらに突き詰めていった結果、実は目標の選択そのものが成功者たちに意欲を与え、努力を引き出したという結論に達したそうです。
僕はこの考え方はとても共感できます。そもそも僕は「成功哲学」というものにあまり興味がないのですが、その理由の一つに「成功という言葉の曖昧さ」があります。何を以って成功と呼ぶのか。それはあまりにも相対的で、人によって違うのだとすれば、それに達するプロセスも違うはずではないのか。そんなわけで、成功哲学を読むときは「あくまでこの人は自分の成功の理由をそう分析しているんだな」、と参考程度に捉えてきました。
さらに僕は、目標を達成するための方法を、人は直感的に知っているのではないかとも思っています。心の底から達成したい目標があるとき、具体的な方法を調べたり、試行錯誤を繰り返しながら目標に少しずつ近づいて行こうとします。そこに多少の効率の善し悪しはあるかも知れませんが、その努力を支えるだけのモチベーションがあるかどうか、そちらの方が重要なのだと思います。
先ほどから「目標」という言葉が出てきていますが、本書ではさらにもう一歩進んだ「マイ・ゴール」というものを扱います。定義は、「個人が、これだけは絶対に達成(手に入れたい)したいと思えるもので、またその目標が自分の才能や能力に合っているもの」とされています。ただの夢ではなく、「やりたいこと」「できること」「むいていること」を一致させた、実現可能な目標とも言えます。
ただの夢ではなく、ここで言う「マイ・ゴール」を見つけるためにはどうすれがいいのか。それは、自己認識を深めることです。つまり、自分が「やりたいこと」「できること」「むいていること」をきちんと認識できているかがカギになります。本書では自己認識を深める方法として、生活史の作成を勧めています。生活史とは、今まで自分が生きてきた過去を振り返った物語のようなものです。
過去を振り返るのに消極的なイメージを持つ方もいるかも知れません。しかし、それについては以下のように書かれています。
よく「過去を振り返るな!」と耳にする。確かに過去を振り返り、過去に生きることは愚かなことだ。しかし、過去の記憶から「ありのままの自分、本当の自分」を認識し、そこから教訓や情熱を見出し、眠っていた夢を復活させていくプロセスの中でマイ・ゴールをつかみ、“これから”を生きることはとても積極的な行為なのだ。
今の自分を作っているのは過去の選択です。そしてその過去の膨大な記憶が、今の僕たちに大きく影響していることは間違いありません。しかし過去の記憶はとても曖昧なもので、時とともに事実とはズレてくることがよくあります。そんな誤った自己像から、本当に素晴らしいと思える目標を設定できるでしょうか?そう、過去にとらわれる為ではなく、自分が本当に望む未来のために、今一度過去を棚卸して自己認識を再構築する必要があるのです。
本書の中には、生活史を作るために役立つ質問集なども含まれています。また、後半は物語になっており、理論だけだとわかりにくい、という方はストーリーを通して「マイ・ゴール」とはどういうものかが理解できるようになっています。ここに紹介しきれなかった様々な論点があり、度々「なるほど!」と思わされました。「成功哲学」には興味はあるけどなんか胡散臭い、と思っている方には本当にオススメの一冊です。是非読んでみてください!