ザ・ビジョン 進むべき道は見えているか

今日は、ケン・ブランチャード 著の「ザ・ビジョン 進むべき道は見えているか」という本をご紹介したいと思います。この本は、先日ご紹介した「1分間アントレプレナー 黄金の起業法則」の著者が書いたビジョンについての本です。

この本も「一分間アントレプレナー」と同じく、物語形式で書かれており、とても読みやすいです。基本的にはビジネス書ですが、勿論ビジネス以外にも応用できると思うので、「ビジョン」について知りたい方にはどなたにでもオススメできる本だと思います。

ストーリーの流れは以下のような感じです。しかし、ただのストーリーではありません。ビジョンとは何か、そしてそれをどうやって作り、伝え、現実のものとしていけばいいのかという流れで話が進んでいきますし、所々にまとめ的な記述も出てきます。

思いもよらない夫の浮気、そして突然の別れ・・・専業主婦として夫や子どものためにのみ生きてきた主人公は、シングルマザーとして実社会に身を投じることになる。そして勤め先で、のちにメンターとなる魅力的な男性と出会い、ビジョンをもつことのすばらしさに目覚めていく・・・。(訳者あとがきより)

そもそも、ビジョンって良く聞きますけど、何となくつかみどころがないような気がしませんか?主人公たちも、その状態からスタートしていきます。試行錯誤を繰り返しながら、ビジョンの姿をクリアにしていき、そして最終的に行きついた結論は、

ビジョンとは、自分は何者で、何をめざし、何を基準にして進んでいくのかを理解することである。

という定義です。ここには、三つの要素が含まれています。

  1. 有意義な目的
    上記の定義で言えば、「自分は何者で」の部分になります。これは言い換えれば「自分は何のために存在するのか」、つまり存在意義を問うている部分です。ここでのポイントは、目的の内容そのもの、つまり「what」も重要ですが、「なぜ」の部分、「why」も極めて重要であるという点でしょう。
  2. 明確な価値観
    順番は前後してしまいますが、上記の定義で言うところの「何を基準にして」という部分です。価値観とは、「自分は何を基準にして、どのように生きていくのか」という問いに答えるもの、あるいは目的を達成するために日々どのように過ごすのかのガイドライン、とされています。つまりこれは「how」の部分になります。
  3. 未来のイメージ
    主人公たちは「目的」「価値観」がビジョンを作る上で重要だと気付くのですが、それだけでは何か足りないと感じます。それは、それだけでは目指す方向がはっきりしないということでした。そこで出てくるのが「何をめざし」の部分です。言い換えれば、最終結果に到達した際にどのような未来が待っているかの明確なイメージです。イメージの力は強力です。特に会社のような複数人で構成されている組織では、目的だけでなく具体的な結果を共有しないと、なかなかコントロールが難しいですよね。これが「where」の部分になります。

さて、ビジョンの三要素が出揃いました。基本的にこれを踏まえればビジョンは作れます。しかし、自分が作ったビジョンが要件を満たしているかというチェックリストが本に書かれていました。非常に有用だと思ったのでご紹介したいと思います。

  • そのビジョンは、自分たちの使命をはっきりさせてくれるか。
  • そのビジョンは、日々の決断を正しく行っていくための指針になりうるか。
  • そのビジョンは、めざすべき未来を目に見えるような形で描いているか。
  • そのビジョンには永続性があるか。
  • そのビジョンには、ライバルに勝つだけというだけではない、何か崇高なものがあるか。
  • そのビジョンは、数字の力を借りずに、人々に活気を吹き込むことができるか。
  • そのビジョンは、あらゆる人の心と精神に訴えかけるか。
  • そのビジョンは、ひとりひとりに自分の役割を自覚させるか。

基本的にビジネス向けなので複数人の組織を想定していますが、「自分に」と読み替えれば応用が可能だと思います。

さて、ビジョンが出来てもそれを実行できなければ何の意味もありません。それを実行するに当たって、二つのヒントが紹介されていました。

  1. ビジョンから目をそらさないこと
  2. 一身を投げだす勇気を持つこと

一番目の意味するところは、ビジョンに基づいて行動しなさい、ということです。しかし、何があっても最初に決めたビジョンに固執しなさい、ということではありません。むしろ逆で、ビジョンを実現するための計画や、場合によってはビジョンそのものを変更した方がいいケースも出てくるでしょう。そんな時は、ビジョンを修正して、またビジョンに沿って行動するようにしましょう、ということだと思います。自分が根ざす軸があるのとないのとでは大違いですからね。変える必要があるなら、軸そのものを変えればいいのだと思います。

そして二番目は勇気です。何かを踏み出す際には必ず必要になりますよね。行動をうながす方法論については、過去のエントリでもいくつかご紹介してきました。しかしそれらは、「行動しやすくする」ことはできても、自分を強制的に行動に駆り立てるものではありません。やはり最後は「よし!」と決めて自分から動き出すことが必要だと思います。そこに必要なのは、飛び込む勇気なのでしょうね。

さて、ビジョンについてご紹介してきましたが、かなりざっくりと纏めてしまったので、それぞれが意味するところの詳細が気になる方や、話の「流れ」が気になる方は是非本書を手にとって読んでみてください。皆さんも是非、ご自分のビジョンを考え、行動に移してみてくださいね!

人間らしさとはなにか?

本日は、マイケル・S・ガザニガの「人間らしさとはなにか?」という本をご紹介したいと思います。この本は、非常に哲学的なタイトルがついていますが、昨日ご紹介した「脳のなかの幽霊」と同じく脳神経科学の本です。この著者もまた、脳神経科学でとても有名な人なのだそうです。

この本はタイトルの通り、人間らしさとは一体何か、ということについて書かれた本です。特に、他の動物と比べてどこが人間を人間らしくさせているのか、という視点が強調されているように思います。

本書は、人間の脳はユニークなのか?という問いから始まります。科学者の間では、身体を見た時に人間が他の動物と違う、というのは割とすんなり受け入れられるそうですが、では、脳は?と聞くと、議論になると言います。大きさが異なるだけで本質的には変わらないとか、哺乳類の間であればニューロンはニューロンだ、とか。しかし著者は様々なデータから、やはり人間の脳はユニークな特徴をたくさん持っているのだと考えます。では、人間を人間らしくさせているその違いとは、どのようなものなのでしょうか?

この違いについて、さまざまな観点から検討がなされています。他の動物が「心の理論」を持つかどうかに始まり、コミュニケーション、社会性、道徳、共感、芸術・・・というように視点は多岐にわたります。その中でも、僕が特に面白かったと感じたのは「意識」ついての章です。少し難しいのですが、僕なりの解釈で要約してみますね。

まず、意識とはどんなものなのでしょうか。著者は、「大企業のトップのようなもの」と言っています。脳の中には、本当に様々な機能がありますが、それらのほとんどは、僕たちが気づかないうちに、つまり無意識のうちに処理されています。その中で意識の上に上がってきたものについて、僕達は「意識的に」処理するわけですが、それがあたかも、部下が働いている間にゴルフのコースに出ている大企業のトップのようだ、というわけですね。

では、無意識下の処理のうち、意識上がってくるものとはどんなものなのでしょうか?様々な刺激が意識に到達するには主に二種類あるのですが、そこには「注意」が深く関係しています。一つは、意識的に注意を向けるということ。例えば、「よし、今から仕事の事を考えよう」というのは自ら仕事に対して注意を向けていますね。それとは逆のパターンもあります。例えば仕事のことを考えている時に火災報知機が鳴り響いたケースがそれにあたります。火災報知機の警報音を聴いて注意が奪われ、そちらに意識が向きます。

意識にはまだまだ謎があります。私たちは「自分自身」という感覚を持ちます。これは自分を意識する、ということに他なりませんが、この自分自身という感覚はどこから来るのでしょう?無数の情報を一つに統合し、自分という感覚を作り上げているものは何なのでしょうか?

その答えは、左脳にあるのではないかと著者は言います。右脳・左脳という言葉は聞いたことがありますよね。人間の大脳は右脳(右半球)と左脳(左半球)に分かれています。右脳は顔の認識と注意の集中と知覚による識別に、左脳は言語と発話と知的行動に特化しているそうです。

ここで分離脳患者の話が出てきます。分離脳患者とは、右脳と左脳をつなぐ脳梁という部分が切断された患者のことです。彼らには何が起こるのでしょうか?それぞれの脳が連携できなくなるので、お互いの脳はもう片方の脳半球で何が起きているかを知る事ができなくなってしまいます。

分離脳患者に関する興味深い実験があります。彼らの右脳に、「笑え」という命令を出します。患者は笑い出しますが、右脳と切り離されている左脳の言語中枢は、何故笑っているかの理由を知りません。その状態で患者になぜ笑っているのかをたずねると、「わからない」とは言わず、何とかつじつま合わせて笑っている理由を答えるのだそうです。

左脳には、このような解釈装置としての働きがあるそうです。そしてその機能は、脳への様々な入力を「解釈」し、一つの物語に統合するために使われていると考えることができます。つまり、私たちが「自分は統合された一つのものである」という解釈を、左脳が作っているということです。

解釈装置がなくても機能している脳に解釈装置が加わると、多くの副産物が生まれる。事柄と事柄の関連を問うことから始める装置、いや、数限りない事柄について問い、自らの疑問に対して生産的な答えを見つけられる仕組みがあれば、おのずと「自己」の概念が生まれる。その装置が問う大きな疑問の一つは間違いなく、「これだけの疑問を、誰が解決しているのだろう」だからだ。「そうだな・・・それを”自分”と呼ぼう」。

そう、「自己感覚」は副産物だと言っているのです。これは衝撃的ですよね!僕たちは「魂」や「心」と言った言葉を使います。これは、ある意味では身体とは別の「本当の自分」がどこかに存在しているという風に解釈することもできます。が、上記の話だと「本当の自分」は左脳が生み出した幻ということになります。これを始めて読んだ時は僕もちょっとショックを受けました。

しかし、最近はこう思うようになりました。例え「本当の自分」を作り出しているのが左脳だとしても、それが解釈装置による副産物だとしても、僕が統一された自己としてここにいるという「感覚」そのものは僕の脳の中で確かに存在し、自覚しているのです。ならば、それはそれでいいのではないでしょうか。それを「副産物」と呼ぼうが、「心」あるいは「魂」と呼ぼうが、いいと思います。重要なのは、それを踏まえて、どうよりよく生きるかということなのですから。最後に、結びの言葉を紹介しておきます。

私の兄は人間の(動物との)相違点のリストを次のように締めくくった。「人間はコンピューターの前に座って、生命の意味を見出そうとする。動物は与えられた命を生きる。問題は、そういう人間と動物とでは、どちらが幸せかということだ」
もう十分だろう。私は外に出て、ぶどう畑の手入れをするとしよう。ピノ種のぶどうがほどなく上質のワインになる。自分がチンパンジーでなくて、なんとありがたいことか!

さて、如何だったでしょうか。この記事でご紹介した「意識」の論点以外にも、人間のユニークな所が色々と紹介されています。500ページを超える大作ですが、脳について深く知りたい方にはお奨めの一冊です。是非読んでみてください!

脳のなかの幽霊

今日ご紹介する本は、V・S・ラマチャンドラン 著の「脳のなかの幽霊」です。ラマチャンドラン博士は視覚や幻肢でとても有名な神経科学者です。本書は、そのラマチャンドラン博士が様々な神経疾患を持つ患者に対して行った実験の内容を元に、一般の人向けに書かれた本です。

一般向けに平易に書かれているとは言え、ボリュームも多く、何も考えずに気楽に読める本ではないと思いますが、それでもページをめくるのが止まらないほどに面白いです!脳の仕組みに少しでも興味がある方には、この本は最高だと思います。ユーモアも効いており、途中何度も笑ってしまいました。

さて、人間の脳。とても複雑な仕組みを持っていることは間違いないですが、その多くはまだ解明されていません。そして、脳や心の研究がまだ初期段階であり、物理学で言うところの一般相対性理論のような統一理論を組み立てられる段階ではないと著者は言います。そうした状況では、とにかく「あれこれやってみる」のが一番いいのだそうです。その言葉の通り、本書の中には様々な実験とその考察が含まれています。

この本の中には、僕が聞いたこともないような症状を持つ患者の例が沢山登場します。

  • 腕や足が生まれつきない、または事故や病気で失ったにも関わらず、「ある」と感じる幻肢。幻肢を持つ患者の一部は、ないはずの腕や足に激しい痛みを感じることもあるそうです。存在しない手足の痛みをどう直せばいいのか?う~ん、確かに。
  • 脳の障害などで片側の視野が失われているにも関わらず、見えないはずのものを正確に掴める、盲視。この現象について、著者は脳の中にいる無意識のゾンビが動きを誘導しているようだと言っています。
  • 緑内障や白内障などが原因で視力が弱くなった人たちがおそろしくリアルな幻覚を見るという障害、シャルル・ボネ・シンドローム。この幻覚は、患者がコントロールできないのだと言います。この障害を持つ患者は、診察の際、「先生の膝の上に猿が座っています」と述べたそうです。
  • 脳の損傷等により、自分の左側に対してまったく無関心になってしまう半側無視という現象。この患者は、食事の際にも自分の左側にあるものに気付かないし、鏡に映った自分の顔の左側にも気付かないため、右側にのみ化粧をすることもあるそうです。

などなど、これ以外にも沢山の不思議な現象が登場します。その現象を読むだけでもとても興味深いのですが、それには留まらず、それらの患者への様々な実験を通して、人間の脳の一般的な仕組みを検証していく部分が最高に面白いです。

ところで、皆さんは「クオリア」という言葉をご存知でしょうか?クオリアとは、主観的感覚とも言いますが、簡単に言えば、「赤い」「暖かい」「冷たい」「痛い」などの感覚のことです。このクオリアに関しては、目や指から脳に入力された神経インパルス(電流)が、なぜ目に見えない感性や感覚に変わるのか、という問題があまりにも不可解なため、問題であることを認めない人もいるそうです。

本書の最終章では、このクオリアにも話が及びます。クオリアとは一体何なのか、そして何のために存在するのか、という点についてもきちんと言及されています。そしてさらに、クオリアと切っても切れないものがあります。それは、そのクオリアを実際に感じている私、つまり「自己」という概念についてです。この「自己」についての洞察も、とても興味深いですよ。

本書の最後には、こう記されています。

自分の人生が、希望も成功の喜びも大望も何もかもが、単に脳のニューロンの活動から生じていると言われるのは、心が乱れることでもあるらしい。しかしそれは、誇りを傷つけるどころか、人間を高めるものだと私は思う。科学は―宇宙論、進化論、そしてとりわけ脳科学は―私たちに、人間は宇宙で特権的な地位などを占めてなどいない、「世界を見つめる」非物質的な魂をもっているという観念は幻想にすぎないと告げている(これは東洋の神秘的な伝統であるヒンドゥ教や禅宗が、はるか昔から強調してきたことである)。自分は観察者などではなく、実は永遠に盛衰をくり返す宇宙の事象の一部であるといったん悟れば、大きく解放される。また、ある種の謙虚さも養われる―これは真の宗教的体験の本質である。

脳と心には様々な議論がありますが、とても科学者らしい主張ですね。その結果が、仏教に通じるものがある、というのは面白いです。

僕個人は、この本に書かれているような素晴らしい知見を、人間がよりよく生きるためにどう活かせるかにとても興味があります。僕は人間の行動とは、入力に対して処理をし、出力することだと考えているのですが、このプロセスで中心的な役割を果たすのが脳だと思います。その脳に関して次々と新しいことがわかってきています。であればそれを活用しない手はありませんよね。

さて、この本は是非皆さんにも読んでいただきたいので、あまり詳しい紹介は避けましたが、如何だったでしょうか?文庫版も出ていてお手頃価格ですので、興味があったら是非手にとって読んでみてください。「脳」に対する考え方が変わるかも知れませんよ。

1分間アントレプレナー 黄金の起業法則

今日はちょっと趣向を変えて、ビジネス書をご紹介したいと思います。ケン・ブランチャード 著の「1分間アントレプレナー 黄金の起業法則」です。ケン・ブランチャードという人は「1分間マネジャー」「1分間リーダーシップ」などの「1分間シリーズ」で有名な著者・講演者です。

本の内容は、とある青年が起業して成功するまでを描いたストーリーになっています。そのストーリーを通じて、起業するのに必要なことは何か?というアドバイスを伝えるという形式ですね。基本的にはフィクションですが、一部の登場人物は実在しています。これから起業を考えている方には是非お奨めです。ちなみに、僕は一応起業家のはしくれなので、全てのメッセージが大いに参考になりました。

しかし、本書に書かれているアドバイスの多くは、起業家を目指す人だけに当てはまるものではなく、一般化すれば誰にでも参考にできるものだと思います。色々とご紹介したいのですが、起業しようと思っている方がそれほど多いとも思えないので、ここでは誰にでも参考になるアドバイスの中から、僕が強く影響を受けたものをご紹介したいと思います。

一つ目は、主人公の青年がとある講演を聞きにいった時、スピーカーが話した内容です。

今から五年後のみなさんが、今日のみなさんと唯一違うのは、その間に誰と出会い、どんな本を読んだかです。本気で成功したいと思うのなら、自分を啓発してくれる本や有名な著者の本を本棚いっぱいに並べることです!ある著者の思想や価値観、執筆のスタイルがすばらしいと思ったら、その著者の作品を全部読みとおすべきです。

少し誇張しすぎな感はありますが、誰と出会い、どんな本を読むか、それが未来の自分を決める、ということです。これは僕にとってはとても強烈なメッセージでした。僕は基本的に技術書以外の本は読まなかったのですが、このメッセージを意識するようになってからは気になった本をジャンルを問わずどんどん読むようになりました。

最近、とある番組でビル・ゲイツが言っていましたが、新しい問題に取り組む時、Amazonで関連する書籍を片っ端から購入し、全て読むのだそうです。僕も似たようなことをしています。もちろん、彼ほどお金持ちではないので、大分控えめだとは思いますが・・・。ただ、本を読むことで確実に自分の世界は広がりました。自分への投資だと思って本代はケチるな、とよく言いますが、その通りだと僕も思います。

それに、最近は本当に色々なジャンルの本が出ていますよね。そのおかげで、人から教えてもらわなくても、高いお金を払って学校に通わなくても、とても「学びやすい」環境になっていると思います。僕は今Web関係の仕事をしているのですが、最近仕事に使っている技術はほとんど本やインターネットから得たものです。皆さんも、気になるけど手を出せていない事について、まずはAmazonで調べてみることから始めてみては如何でしょうか。

二つ目は、起業するかどうか悩んでいる主人公に対して、彼のメンター(指導者)がアドバイスをするシーンです。

問題は、どんな事業をやるつもりなのかだ。シェルダン・ボウルズというすばらしい起業家で著者でもある人が、こう言っているよ。事業を始めたいのなら、情熱に従うべきだとね。これをシェルダンは「喜びのテスト」と呼んでいる。つまり、何をいちばんやりたいのか。もしも、胸にたぎる思いを満たすためではなく、金をもうけたいから起業家になるというのなら、失敗するだろう。自分の事業を心から好きだと思えないのであれば、その世界でベストになるために必要な時間を費やすこともしないからだ。

このメッセージも僕にとってはとても大きなものでした。当時は「できること」と「やりたいこと」の狭間で僕自身も会社も大きく揺れ動いており、どうすればいいのかわからなくなっていました。

この本を読み、仕事のパートナーと議論した結果、やはり一番重要なのは「情熱」だという結論に落ち着きました。それからは、我々の情熱はどこにあるのか、どうすればその情熱を形にできるか、という方向に舵を切る事ができました。今はまだまだその最中なので何も結果が出ていませんが、情熱がないことはうまくいかない、というのは確信に変わってきています。

ここで言う「事業」という言葉を「仕事」に置き換えれば、誰にでも通用するアドバイスになると思います。やはり何をするにしても、自分をドライブするエンジンに相当するものは、情熱なのだと思います。世の中には無理やりモチベーションを持続させるような方法論も多くありますが、外部からのモチベーションでは結局続かない、僕はそう思っています。

さて、如何だったでしょうか。起業を目指していない方はなかなか読もうという気になりにくいかも知れませんが、このように一般的に参考にできるアドバイスも沢山書かれています。僕がひねくれているのか、ちょっと主人公が優等生すぎるのが気になりましたが(笑)、ストーリーなのでとても読みやすいですよ。もちろん、起業家を目指している方には是非読んで頂きたい一冊だと思います。

ラオ教授の「幸福論」

今日ご紹介する本は、スクリマー・S・ラオ 著の「幸福論」という本です。正式には、「コロンビア大学の超人気講座 ラオ教授の『幸福論』」というタイトルです。人生に喜びを取り戻すための35の法則について書かれています。

実は僕は、~の法則というタイトルの本を見るとちょっと構えてしまいます。その理由は、実は法則の数に大した意味はなく、言いたいことを並べていったらその数になった、という内容がほとんどだからです。「~の法則」ってつけると売れるっていうセオリーでもあるんでしょうかね?それぞれの項目が論理的につながっていればまだいいのですが、大抵は項目ごとにぶつ切りになっているように感じてしまいます。

この本もその類の本ではないかと思いましたが、読んでみたらなかなか面白かったです。特に、この本に書かれている「幸せ」についての考え方にはとても共感することができました。

そもそも「幸せ」とは何でしょうか。僕もそれが気になって、「幸福」「幸せ」というキーワードで出てきた本を何冊か読んでみました。この本もその中の一冊です。それでは早速、この本の言う「幸せ」について見て行きましょう。

僕たちは日ごろから、幸せという言葉をよく使いますよね。おいしいものを食べて幸せ、誰かと一緒にいて幸せ、などなど。しかし、ここで言っている幸せとはこのようなことではありません。著者は、幸せについて下記のように述べています。

私が話しているのは、そのような機会に感じる瞬間的なうれしさについてではありません。つねにあなたとともにある深い幸福感について話しているのです。自分の人生は順調であり、脇道にそれることはないという確信についてです。
といっても、あなたが幾多の難題に直面しないと言っているのではありません。私が言いたいのは、なすべきことをきちんとやりつつも、自分は根本的なところで幸せであり、これからもずっとそうだろうと意識している、ということなのです。そういう意味での幸福です。

なるほど、色々なことがありつつも根本的に自分は幸せだ、という実感のようなことを言っているのですね。では、どうすればそのような幸せだという実感を感じることができるのでしょうか?

実は、幸せになるためには何も手に入れる必要はないし、どんなものにもなる必要はないと著者は言います。何故なら、人は生まれつき幸福を持っているからです。じゃあどうして、僕たちはその幸福感を感じることができないのでしょう?

ここがこの本の面白い所だと思います。それは、「あなたがこれまでの人生のすべてを費やして不幸になる方法を学んできたから」だと言います。不幸になる方法とは、何かを「手に入れ」れば、何かを「する」ことができ、そうすれば何かに「なれる」・・・というある特定の条件を満たせば幸せになれるという思い込みのことです。このモデルを筆者は「もし・・・ならば」モデルと呼んでいます。

これは僕も実感としてあります。何かを手に入れたらどれだけ幸せだろう、と思い描いていたものを実際に手に入れた時、その瞬間はとてもうれしいのですが、その感覚は長くは続きません。時間が経つにつれ当たり前になっていってしまうんですよね。これが他のことにも当てはまるのだとすると、もし~だったら幸せ、というサイクルは際限なく続いていくことになります。このような考え方が、生まれつき持っている幸福を感じられなくさせているのですね。

そういう意味では、幸福は手に入れるような「モノ」ではなく、「感じる」「気づく」といった類のものなのだと思います。「これでなくてはならない」という執着を捨てることによって、新しい気づきがあるかも知れませんね。

ところで、人は生まれつき幸せなのなら、努力する必要はないのでしょうか?著者はそれは違う、と述べています。やはり、目的のために全身全霊で努力するべきであると。ただ重要なのは、努力した結果成功するかしないかは、幸せとは直接関係ないという点だと思います。

企業家の友人が、年収10億ドルを達成したら、それはとても立派なことですし、人生は素晴らしいと言えます。でも、それができなくても、とても立派だし、やはり人生は素晴らしいのです。

成功か失敗かというのは結果ですよね。僕たちは社会に出ると、結果が重要と言われることが多くなります。でも、本当の意味で結果をコントロールすることはできません。こう行動すれば必ず成功すると信じて、そのとおりに完璧に行うことはできても、望んだとおりの結果に到達できるかどうかは、また別の話だからです。

僕の座右の銘は「人事を尽くして天命を待つ」です。結果は自分のコントロール圏外にあるということを認めて、目標を設定し、望ましい結果を想定したら、あとは何が起ころうとも静かに受け入れること。そんな態度が重要なのかも知れません。

さて、ざっとご紹介してきましたが、如何だったでしょうか。35の法則のうち、幸せに関する部分だけをご紹介しました。他の法則にもいい事が沢山書いてあります。気軽に読めますので、もし気になった方は是非読んでみてくださいね!

媚びない人生

今日は、ジョン・キム 著の「媚びない人生」という本をご紹介したいと思います。本屋でふと見かけた本なのですが、帯に「従順な羊ではなく、野良猫になれ」と書かれていて、何だかおもしろそうなので購入し読んでみました。

著者のジョン・キムという人は、慶應大学の准教授で、メディア・コミュニケーション研究所というところでゼミを持っているらしい。このゼミは、視察に訪れたハーバードの教授をして、「ハーバードやエールよりも上じゃないか」と言わしめたほど厳しく、レベルが高いそうです。

本書は、そのゼミ生たちが卒業する際にはなむけの言葉として送っている最終講義「送る言葉」の内容が原点となっているそうです。内容はこれから社会に出ていく学生たちに「最後にこれだけは伝えたい」というメッセージのようなものになっています。従って、一つの論点について順序立てて書いた本というよりは、様々なメッセージが次々と登場する、という構成ですね。

これから社会に向けて巣立っていく学生向けということなので、社会人からしてみれば当たり前、と思う部分も多くあります。しかし、ハッとさせられる部分、頭ではわかっていても実践できていない部分が多々あることにも気づかされました。そして何より、内容がとても熱い。心からのメッセージであることがわかりますし、やはり教育者なのでしょう、厳しさの中にも愛情が感じられます。

そんなこの本、いくつかの論点をピックアップしてご紹介しましょう。まずはプロローグから。著者は「強さ」だけが人間を独立した存在に導く、と説きます。その強さとは・・・

  • お金とか名誉とか外面的な意味での強さではなく、内面的な強さだ。
  • 自分自身の尊厳に対する最大限のリスペクトを払える強さだ。
  • どんなに辛い逆境でもいつでも受けて立つ気概を持てる強さだ。
  • 自身のすべての行動に対し結果に対する全責任を自分で負う決意の持てる強さだ。
  • 何事にも縛られない何事にもとらわれない、そして物事をありのままの状態で受け入れられる大きくそして動じない強さだ。
  • 自分がこの世に存在する間に起きる全ての出会いや出来事は奇跡であると信じ、それが持つ意味を省察できる強さだ。
  • 他者の存在に対する最大限の尊敬を払うとともに他者の感性、思考、行動に対する深い理解のために努力をする。そして他者の不完全性に対し海のような包容力を持てる強さだ。
  • 愛する人のためなら世の中を敵に回せる強さだ。
  • 生きるすべての瞬間を人生の最後の瞬間になるかもしれないという緊張感を持ち、その瞬間に対する全ての審決を注ぐことのできる、そしてその緊張感や集中力を死ぬその最後の瞬間まで持続できる強さだ。

う~ん、熱い。改めて眺めてみると、このプロローグにメッセージのほとんどは集約されていると言っていいかもしれません。

「本当の自分」という言葉があります。本当の自分というのは何なのか、そんなものが本当にあるのか、と僕は思っていました。それに対して著者は、とてもわかりやすく説明してくれています。著者によれば、本当の自分とは、まだ社会性を持っていない幼児の自分だと言います。人間はそこから成長する過程で、周りに評価されたり形容されたりしながら、社会的に生きていきやすい自分を作り上げていきます。

社会に迎合して生きていくということは、不安を消し去ることでもあるそうです。確かに、誰かから評価されるように生きていけば、少なくともその人達からは支持されるわけで、安心です。しかし、そういう生き方こそが、人間を弱くしていると書かれています。むやみやたらに反骨精神を持てといっているのではなく、自分の軸を確立して、そして自分のモノサシで社会を測り、自然体で生きていくということが重要なのだと思います。

この本の中でも、社会的な「常識」は疑ってかかれ、という趣旨の事が書いてあります。そういった常識は非常に相対的なものであり、立場によって、時代によって違ってくるものです。このような常識というものは改めてその意味を考える必要がないので便利ではあるものの、ただ一つの普遍的な真実などというものは存在しない、あるのは複数の社会的な真実だけだ、と語られています。

何かに挑戦する時は、こういった「常識」に惑わされることなく、自分の信じた道を貫くことが重要ですね。本書にも、「結果に対する全責任を負う決意に基づいた選択は、常に正しい」と書かれています。その結果、自分が信じる「社会的な真実」を構築することだってできるのですから。

それと、就職活動について、とても面白い意見が書かれていました。

しかし、認識しておかなければいけないことがある。それは、学生の就職活動は、社会を知らないままに行われているということだ。社会に出たことがないのに、業界や企業を選ばなければならなかった。残念ながら、社会についてはわかっていないのだ。それは認めなければいけない。
そしてもうひとつは、自分自身について、まだわかっていないということである。就職活動で、自己分析はしたかもしれない。しかし、社会に出て、実際に働いた経験はない。ある仕事をしたときに、本当の自分がどんな反応をするのか、実はまったくわかっていないかったのだ。

なるほど。これは本当にそうですね。就職してから、思っていたのと違う、とギャップに悩まされる学生も少なくないのだと聞きます。しかし、それはある意味当り前と言えます。自分のことも相手のこともよくわからない状況で選んだんですから。本当の就職活動は、5年後にもう一度すればよい、というのが著者の主張です。大事なのは、その時までに本当にやりたいことをはっきりさせ、それをやるための実力をつけておくことなのだそうです。

この本を読んでいて、僕個人は「居心地の良さ」という言葉にハッとさせられました。居心地の良い状態というのは、ある意味警戒すべき状態である、と書かれています。これは、居心地によい状態に居座り続けるということは、新しい挑戦を怠っている可能性がある、ということを指しています。必要だとはわかっていても目をそらしていること、やろうやろうと思っているけどなかなか踏み出せていないこと。そういうものを一度棚卸ししてみようと思っています。

さて、如何だったでしょうか。学生向けとは言え、既に社会に出ている人が読んでも学ぶべきことは沢山あると思います。厳しくも優しい著者のメッセージに、背筋が伸びるような気持ちになりますよ。機会があれば是非読んでみてくださいね!

第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい

今日は、マルコム・グラッドウェル 著の「第1感 『最初の2秒』の『なんとなく』が正しい」という本をご紹介します。

僕は常々、直感とは何だろうと思っていました。ちょっと調べているうちに、「直感」と「直観」という二つの言葉があることを知りました。厳密にはこれらは意味が違っていて、直感は「感覚的に物事を瞬時に感じとること」、一方直観は、「五感的感覚も科学的推理も用いず直接に対象やその本質を捉える認識能力」だそうです。(Wikipediaより)

最初から脱線してしまいましたが、この本ではどちらかというと「直感」について書かれた本だと言えると思います。様々な心理学の実験を元に直感とは何かを考察していくのですが、著者が雑誌のライターということもあってか、とても読みやすく面白い内容になっています。

ところで、タイトルにある第1感とは何でしょうか?訳者のあとがきにはこう書かれています。

世間には「第六感」という言葉があるが、あれは身体的な(したがって理屈で理解可能な)五感の優越を前提として、理屈を超えた六つ目の感覚を想定している。そうではなく、五感に優越する第1感があるのではないか。

なるほど。確かに直感というものをこういう風にとらえることもできそうですね。では、この直感とはどういうものなのでしょうか。

まず、直感とは、限られた情報で物事の本質をつかむ能力と言うことができます。例えばパッと見ただけで何かおかしいと感じたりすることです。科学的に入念な調査をしたわけではない状態(情報が限られている状態)で物事の判断をする時、僕たちは「輪切りの力」というものを使っているのだそうです。

これに関する面白い事例があります。夫婦喧嘩の様子を撮影した15分間のビデオを分析して、その夫婦の15年後を予測するというものです。何だそんなの簡単だよ、と思うかも知れませんが、実際にやってみるととても難しいのだそうです。15分間のビデオには態度、口調、言葉、表情など膨大な情報が入っており、ちゃんと分析しようとすると情報が多すぎるのです。

そこで、注目する要素を絞ってみたところ、90%前後の確立で夫婦の未来を予測できたそうです。著者は、僕たちが直感的に何かを感じる時、同じようなことをしているのだと言います。すなわち、対象を輪切りにして、不必要な要素を捨てて重要な要素に集中する、ということです。この考え方で行けば、どの要素に着目するかを正しく設定することで、直感の精度を上げられるような気がしますね。

次に、直感は瞬時に、そして無意識に起こるということです。これは何を意味しているかというと、直感を下した本人もその理由がわからないということです。そのような状況で説明を求められると、人間はその理由を「でっちあげる」のだと言います。

何かを選ぶ時も無意識であることが多いそうです。数ある商品の中から何故これを選んだのかという理由を説明させてみても、素人にはうまく説明できないそうです。そればかりか、もっともらしい理由を思いつき、本当の好みをその理由に合わせてしまうのだとか。これは何となくわかるような気がしますね。ちなみに、このような現象を「言語による書き換え」と呼ぶそうです。直感で感じた記憶が言葉にすることによって書き換えられてしまうんですね。

一方、プロは違います。理由を語る語彙も、評価する尺度も、経験も持っています。これを著者は、以下のように語っています。

無意識の感想は閉じた部屋から出てくる。部屋の中はのぞけない。でも経験を重ねれば、瞬時の判断と第一印象の裏にあるものを解釈し、意味を読み取れるように行動し、自分を訓練できるようになる。

ここでも、直観は訓練することができる、という主張が出てきていますね。

最後の章では4人の警官による誤射事件を通して、「心を読む力」について考えます。様々な証言などが織り交ぜられていて面白いです。僕が一番面白いと思ったのは、人の感情は必ず顔に現れる、というくだりです。表情記述法(FACS)という方法を使えば、表情により送られているメッセージを驚くほど理解することができるのだとか。これは興味深いですね。

この章で取り上げられている誤射事件では、この「心を読む力」が機能しませんでした。その理由は、人は興奮すると相手の心が読めなくなるから。人は命の危険にさらされると、目が冴えたり、視野が狭くなったり、音が消えたり、時間の感覚がゆっくりになったりするそうです。それは生存するために不要な情報を遮断するからなのですが、それが進み、心拍数が175を超えると、認知プロセスが完全におかしくなるのだとか。

腹を立てたり、脅えている人と議論しようとしたことはないだろうか?無理だ。・・・犬と議論するようなものだ。

確かに、感情的になっている時に議論することも不毛さは、僕もたびたび経験があります。そういう時は、頭を冷やして仕切りなおした方が賢明ですね。

さて、如何だったでしょうか。本書の中にはもっと様々な実験データ等も取り上げられており、とても面白いです。学術的な言葉も出てはくるのですが、とても平易に書かれているためにすぐ読めてしまいました。直感の正体について興味がある方は是非読んでみることをお奨めします!

「先延ばし」にしない技術

今日は、イ・ミンギュ 著の「『先延ばし』にしない技術」という本をご紹介したいと思います。心理学者である著者が実行力を身につける方法について書いた本です。先日ご紹介した「やりきる技術―最高のパフォーマンスを生み出す仕事のきほん」という本に通じるものがありますが、こちらはもう少し硬派な印象を受けます。

さて、内容です。著者は、偉大な人達が足跡を残せたのはアイデアを実行に移したからだと言います。そしてその実行力というのは、生まれつきの資質ではなく、技術だそうです。つまり、誰でも訓練すれば実行力を身につけることができる、というわけですね。これには少し勇気づけられますね。

さてその実行力。分解すると、決心、実行、維持という三段階に分かれます。本書では、それぞれについて章が設けられており、詳細なアドバイスが書かれています。ここでは、面白いと思った話題をピックアップしてご紹介したいと思います。

まずは目標について。何かを実行する上で、一番最初に必要なのは目標を定め、「やる」と決意することです。それがないと何も始まりません。その際に、「ゴールをイメージすれば夢がかなう」といったことが多く語られてきました。著者は、これは実際には効果がなく、かえって邪魔になることすらあると言っています。

その理由は、あまりにバラ色の未来を思い描いていると、何かうまく行かなかった時に簡単に挫折してしまい、イメージの中に逃げ込んでしまう可能性が高いからだそうです。ではどうすればいいのか。それは、ゴールをイメージして何かをやる決意が生まれたら、そこからは「どうやってそこにたどりつくか=プロセス」をしっかり考えること。

プロセスをあれこれ考える時には、当然想定される障害やリスク、代替案なども考えますよね。つまり、ゴールした姿という楽観的なイメージと、失敗した時にどうするかという悲観的なイメージを両方持つことが重要なのだそうです。もっと言えば、楽観的なイメージと悲観的なイメージをどのようにバランスさせて、前に進む力に変えていくかが重要なんだと思います。具体的な方法を考えずにゴールを考えていても前には進みませんし、心配ばかりして恐れていたらなかなか行動に移すことができませんよね。

次に変わりたいと思っても変われない理由について。その理由について、「今の状況が、耐えられないほど苦痛ではないからだ。切実に望むものがないからだ。」と書かれています。う~ん、とてもストイックですが、これは僕も実感としてあります。必要性を心の底から理解している時は、実行するのはそれほど苦ではないと思います。苦であっても、必要なのでやらざるを得ない、という感じでしょうか。

さて、次は実行に関して二つほど。一つは、何かを「やろうかな、でも後にしようかな・・・」と迷ったときは、その実行のベストタイミングは「今」だということ。「後で」は永遠にやってきません。これはとても耳が痛い言葉ですが、まさにその通りだと思います。最初の一歩さえ踏み出せば物事はどんどん進んでいくもの、最初の一歩は小さくてもいいので、「今」始めてみるといいかも知れませんね。これに付随して、こんな記述がありました。

本当に残念なのは、ただ時間を浪費するだけでなく、待っている間に頭の中にあった目標が消えてしまうことだ。将来、何かになりたければ、必ずいま何かをしなければならない。

本書には、「行動に移さないアイデアはゴミだ」という強烈なタイトルのコラムがあります。しかし、せっかくのアイデアも実行に移せなければ、結果としてゴミになってしまうという意味では正しいのかも知れませんね。

実行に関するもう一つのトピックは、「できない理由」に関してです。できない理由を述べる前に、やってみたのか?著者はこれを実験精神と呼んでいるのですが、何事も実験だと思えば、実行に移すハードルはかなり下がります。僕は、厳密に言えば実際にやってみないと「できない理由」などわからないのではないかと思います。この辺りは精神論と言えなくもないですが、頭の片隅に置いておくと、いざという時に後押ししてくれるかも知れませんよ。

最後に、「目標達成率を高める観察の力」というトピックです。これは、人は誰かに見られていることを意識すると行動が変わりやすいということだそうです。そして、「誰か」というのは自分自身も当てはまります。一時期流行ったレコーディングダイエットなどは、この力を応用したものなんだと思います。僕も昨年末から今年にかけて家計簿、体重記録などをつけ始めました。これが本当に効果が実感でき、意識の力はこれほどなのか、と思っています。これについてはまた改めて書きたいと思います。

いくつかトピックをご紹介してきましたが、本書の中にはもっともっと沢山のアイデアが詰まっています。非常にストイックな印象を受けますが、どれも正論だと思います。以前にも書きましたが、この手の本は読んだ後、取捨選択やアレンジをして自分のやり方として昇華させる必要があるものです。少なくともそのための重要なヒントは散りばめられているので、実行力について真面目に考えてみたい方は是非読んでみてください!

自分の秘密 才能を自分で見つける方法

今日は、北端康良 著の「自分の秘密 才能を自分で見つける方法」という本をご紹介したいと思います。著者の肩書きは、才能心理学協会 理事長。そんな学問分野や団体があるのを始めて知りましたが、タイトルに惹かれて購入してみました。

世の中には偉人と呼ばれるすごい人が沢山います。彼らは皆、何かしらの才能に恵まれた人たちのように見えます。本書は、何故彼らはそのような才能を手に入れることができたのか、という問いかけで始まります。

才能が継続によって培われるものだとか、その継続を支えているのは切望感や感情である、というのはよく言われますね。著者は、その切望感や感情を生み出している秘密を明らかにすべく、様々な偉人の人生を検証していきます。このパートが「プロローグ」になっているのですが、分量的には全体の半分近くを占めており、検証にとても力を入れていることが読み取れます。数人の偉人の人生が著者の解釈で語られており、お話として読むにも面白いですよ。

長いプロローグが終わると、いよいよ「才能の秘密」を解き明かす段階に入っていきます。そこには、5つの秘密があると言います。ここでは、特に面白いと思った最初の3つをご紹介したいと思います。

  1. 才能の源泉
  2. 能力の源泉
  3. 才能のベクトル
  4. 時代の声
  5. 才能の闇

まず一つ目の秘密、才能の源泉。ここで語られるのは、「才能の源泉は、人生のルーツにある」ということです。この人生のルーツという言葉、なかなか答えるのが難しい質問ですよね。それに対して著者は、なかなか面白い切り口を提供してくれています。

世の中の人間には、二種類の人間しかいない。
二種類の人間とは、「ある人」と「ない人」です。

人生に「あったもの」もしくは「なかったもの」がその人に大きな影響を与え、才能の源泉になっているということのようです。何が「あった」のか、または「なかった」のかは人によって違いますが、それらの個人的な体験を通して感じた感情が、人を突き動かす原動力になる。またそれは、身近な体験であればあるほど、強烈であればあるほど、大きな原動力になります。

例えばとても身体が弱かったことが強烈な体験として焼きついている人は、将来自分と同じような境遇の人を助けたい、という志を持つかも知れませんよね。この例では、健康な身体が「なかった」と考えることができます。一方、小さい頃から父親に憧れて育った子供が、父のようになりたいと思ったとします。これは、尊敬すべき父親が「いた(あった)」と考えられます。

「ある」体験や「ない」体験、皆どちらの体験もしているはずですが、その人にとって最もインパクトを与えた体験がどちらかによって才能の源泉は異なる、というのが大きなポイントだと思います。才能の源泉が違えば、以下のような違いが出ると言うのも面白いですね。

「ある人」は維持し、広げる人で、「ない人」は変革し、創り出す人。

続いて二つ目の秘密、「能力の源泉」についてです。第一の秘密で扱った切望感を満たすためにはそれなりの「能力」が必要ですよね。著者は「能力」を「能力の源泉 × 技術」、「能力の源泉」を「無意識的に繰り返している感情・思考・行動のパターン」とそれぞれ定義しています。

これはつまり、能力とは単純な技術のことではなく、感情・思考・行動のパターン(能力の源泉)と技術が結びついたもの、ということを言っているのだと思います。さて、この定義で考えれば、少なくとも「能力の源泉」がない人など存在しません。感情・思考・行動に一切関わらずに生きてきた人などいませんからね。

では、感情・思考・行動のパターンとは何でしょうか?それは、普段から何気なく行っている感情→思考→行動という一連の流れの中にある一貫性のことです。ある出来事に対して何かしらの感情を持ち、それを自分の中でどのように考え、その結果どのような行動を起こしてきたでしょうか。そのようなパターンが度々繰り返されてこなかったでしょうか。そういったパターンは繰り返されることでどんどん強化され、自分だけの強みになっていきます。

著者はこのパターンと具体的な技術が結びついたもの、それがその人特有の能力だと言っているのだと思います。能力の定義の中に感情や思考の要素が入ってくる、というのはなかなか面白いですね。コンピテンシー(優れた業績を達成している人の基本的な特徴)理論でも、単純な技術は比較的習得が容易とされていますが、要は技術だけで優位性を保つのは難しい、ということなのでしょう。

三つ目は才能のベクトル。これは言い換えればビジョンのことです。そのヒントは、

「誰を幸せにしたいのか?」
「その人のために、どんな理想の未来を描き、目指すのか?」

という問いに答えが隠されていると語られています。そして、「才能のベクトル」の章の最後には以下のように書かれています。

あなたは、誰を幸せにしたいでしょうか?
かつての自分のような人でしょうか。両親や兄弟姉妹でしょうか。友人でしょうか。
その人を、どんな世界に連れて行きたいでしょうか?
「これが満たされれば、みんな幸せになれた」と、あなたが思っていた世界。
その場所は、かつてあなたが「愛する人を必ず連れて行く」と胸に誓った約束の地。
ビジョンとは、「約束の地」のことなのです。

僕はこのフレーズがとても気に入っています。ビジョンとは単なる未来予想図ではなく、想像しただけで心躍るような、感情に訴えかけるような、そんな絵である必要があると、僕も思うからです。

5つの秘密のうち3つをご紹介しましたが、如何だったでしょうか?既にご紹介した3つの秘密についてもっと詳しく知りたい!という方や、残りの2つも気になる、という方は是非本書を手に取ってみてくださいね。才能というテーマについてとても深く考えられている良書だと思います。

※ 本書の最後には、「最後の秘密」として、実はもう一つ秘密があることが書かれています。が、内容は明かされておらず、読者に問いかける形になっています。僕も自分なりに答えを考えて、思いついたら後日改めて書きたいと思います。

自分を超える法

今日は、ピーター・セージ 著の「自分を超える法」という本をご紹介したいと思います。このピーター・セージは、世界的に有名なコーチ、アンソニー・ロビンズの公式トレーナーに史上最年少で認められた人です。本書の中でも彼のキャリアが語られていますが、22社の会社を経営し、現在は太陽エネルギー関連の一兆円規模のビジネスに取り組んでいるみたいです。

さて、そんなすごいキャリアを持つ彼の本。肝心の内容は、いわゆる成功哲学の部類に入ると思います。「真の成功」を手に入れるために必要なことは何か、を5つの法則という形で書き記してあります。

  1. 「成功の心理学」
    成功の80%は心理で決まる
  2. 「お金のつくり方」
    資金ゼロでもビジネスはできる
  3. 「リーダーシップ」
    人間関係の達人になる方法
  4. 「世界観をつくる」
    人生に力を与える考え方
  5. 「文章の力」
    言葉ひとつで劇的な成果を上げる

僕は「成功」を目的として掲げた本というのはあまり読まないのですが、著者の言う「真の成功」の定義に共感するところがあったので読んでみました。

お金がたくさんあっても、大豪邸に住んでいても、忙しく仕事をするだけで、恋人や友人、家族と会話をする時問がないのでは、成功とはいえません。経済的豊かさを味わい尽くすライフスタイルを手に入れ、「人生が充足していると感じる心が伴ってこそ、真の成功といえる」はずです。

個人的には、必ずしも経済的豊かさがここで言う「真の成功」の絶対条件だとは思いませんが、人生が充実していると感じる心を持つことが重要、という考え方にはとても共感します。

それでは5つの法則のうち、僕が特に参考になった「成功の心理学」について少しご紹介したいと思います。

成功の心理学って何?と思うかも知れませんが、内容は人間の行動の裏にある欲求についての記述がメインです。人間の欲求と言うとアブラハム・マズローの欲求段階説が有名ですが、著者はそれとは異なる「シックス・ヒューマン・ニーズ」という考え方を示しています。人間には6つの欲求がある、というもので、内容は下記の通りです。

  1. 安定感・・・安定したいというニーズ
  2. 不安定感・・・変化が欲しいというニーズ
  3. 重要感・・・価値ある存在でありたい、自分は特別でありたいというニーズ
  4. 愛とつながり・・・愛されたい、誰かとつながりを持ちたいというニーズ
  5. 成長・・・成長したいというニーズ
  6. 貢献・・・何かに貢献したいというニーズ

安定感というニーズは、人間の基本的な欲求であるとしながらも、現代社会においては、この安定感というニーズが過剰に求められすぎている、と著者は言います。そもそも、絶対の安定が保証されている場所などどこにもないですし、逆に完璧に安定した生活があったとしても、人間はそれに耐えられないですよね。それは、安定と逆のニーズ、不安定感というニーズがあるからです。人間には、変化が必要という考え方ですね。

安定感と不安定感は相対するもので、それぞれのバランスを取りながら人は生きているのですが、ここでなるほどと思わせる名言が出てきます。人生の質は、あなたが居心地のよさを感じられる、不安定感の量に正比例する。確かに、自分のストレスにならない範囲で変化に満ちた毎日、というのはちょっと魅力的ですね。だから、不安定な状況に対処する能力を身につければ、人生の質は向上する、ということになります。

重要感というのは、自分は価値のある人間だと思いたい、というニーズです。これは上手く付き合えば自分を動かす強い原動力になり得るのですが、エゴとの関わり方によって建設的にも、破壊的にもなり得ると言います。エゴと結びついてしまうと、自分の欲を満たすため、自分の重要さを誇示するという行動に出てしまうのです。

愛とつながり、というのは誰かから愛されたい、つながりを持ちたいというニーズ。これは重要感と対極にあるニーズです。重要感というのは自分は特別でありたい、というニーズですから、これを求める時点で他人とは分離した状態となります。

さて、安定感 vs 不安定感、重要感 vs 愛とつながり、というようにこの2対のニーズはそれぞれ対立しており、人はそのバランスを取ろうとします。しかし、このバランスを突き詰めることが人生の目的ではない、と著者は言っています。では、何が人生の充足感を決めるのか?それが「成長」と「貢献」です。成長と貢献に関しても面白い論点が色々と紹介されていますが、ここでは以下の文章を引用するに留めておきます。

自分の「失敗や試練」を、世の中に役に立つものに転換させて「成長」し、自分の一生を超えた、永続的な「貫献」という名の財産を残すことこそが、真に満たされる人生なのです。

このヒューマン・シックス・ニーズという考え方。このフレームワークを使うと人間の持つ様々な側面をシンプルに説明できると思います。本書には、これ以外にも様々な考え方・フレームワークが提示されています。内容の半分はビジネス関連ですが、一応起業家のはしくれである自分にとっては、それもとても参考になりました。

全体としてとても読みやすく、面白いだけでなく、読んでいて頑張ろうと思えるような、そんな本だと思います。一度だけでなく、何回か読み直してみたいと思っています。Amazonでもなかなか高評価のようですね。気になったら是非読んでみてくださいね!